助成期間 平成20年3月~平成21年3月
港湾構造物(鋼,コンクリート)の塩害劣化が顕在化しており,高耐久,低コストな工法の開発が望まれている.本研究では,緻密で引張力も負担できる超高強度ひずみ硬化型セメント系材料を港湾構造物の表面保護に適用し,かつ水の閉め切りなどを不要とした水中施工法を開発する.鋼構造物,コンクリート構造物のいずれの形式にも適用できる表面保護工である点,および水中施工法とすることで,工期短縮,コスト削減をも実現できる可能性がある。
本研究は、欧州各国の公共工事受入れ検査に関する制度やシステムの詳細を調査研究することで、近年著しい困難に直面している日本の公共工事契約システムのあるべき姿を明らかにしようとするものである。
現在の日本の公共工事の入札・契約システム、工事代金の支払い制度は「建設業界の調和」を最重要事項として体系化されたものと言える。このような管理された競争が行われている日本の公共工事に対し、近年その透明性や競争性を疑問視する声が一段と高まっている。公共工事における透明性、競争性の向上や談合などの不正行為の撤廃を目指すことは日本国内において失墜した建設業界への信頼回復のみならず、国際社会での日本の建設産業の競争力の強化を促すことにも繋がる。
このような経緯から、現在では公共工事の透明性や競争性、市場の健全性を求めた変革が行われつつある。しかし、現状では入札制度に関する改革のみが進み、入札制度と車の両輪を成すべきである契約制度に関する改革はあまり進展が見られない。官と民の寄りかかる不健全な体制からの脱却を目指す以上、契約制度の改革は避けて通れないものであると思われる。このような状況が、公共工事に関する一連の改革が必ずしも顕著な実効性を持たない理由と考えられる。
契約制度の根幹が、工事代金の支払方法、及び品質保証であることは論を待たない。工事請負契約における品質保証は、受注者が担うべき品質管理、及び公共発注者が担うべき受入れ検査によって構成される。受入れ検査は、検査(品質、位置・寸法・出来形)、検収、査定(設計変更)、精算・支払いという一連の標準的過程で実施される。検査から支払いまでの一連の過程を、毎月毎月「必ず」実施(国際標準型)するか、原則として工事竣工時点で一回実施(日本型)するかは、契約制度の基本構造にかかわる大問題といえる。近年のわが国の公共工事に関する社会経済情勢を見据えれば、公共発注者がやるべきでない監督業務からやるべき受入れ検査業務への移行を徹底する時期に来ている。
本研究は欧州の公共工事の受入れ検査システムの詳細を調査することで、今後の日本の公共工事の契約システムのあり方に対する具体的な方策の提言を行うことを目的とする。
現在建設中の羽田空港D 滑走路のような桟橋式大規模構造物を安全に運用するためには、厳しい腐食環境にある床下・水中支持部の定期点検が不可欠である。しかしながらこのような大規模構造物の支持部は閉鎖空間に存在するとともに膨大な数に上るため、人間による点検は非効率かつ危険な作業となってしまう。
本研究では自律型水中ロボットを用いて桟橋式大規模構造物の水中支持部の点検を全自動化することにより、このような危険な作業から人間を解放するとともに、点検作業の効率化・低コスト化を目指す。
盛土等の土構造物は堤体内への水の侵入に伴い安定性が低下する。近年の研究成果では降雨後の盛土の耐震安定性は常時に比べ低下していることが明らかとなっており、地震等による被災確率を考慮したアセットマネジメントを実施するためには、降雨および地震の考慮が重要である。
空港の高盛土は、堤体内の水を速やかに排出するための排水施設が設けられている。しかし、風化や地震動により発生する細粒分等による目詰まりなどの経年劣化に伴って十分な排水機能が確保できない場合も報告されている。
本研究開発では、盛土の排水機能を非破壊で検査し、空港高盛土の降雨および地震に対する健全度を診断する技術を開発する。そして、健全度診断に基づいて、個々の盛土の地震等による被災確率を考慮し、降雨および地震の作用を考慮したアセットマネジメント手法を展開する。
この結果、個々の盛土について、降雨や地震による被災確率も考慮して、排水施設の機能更新などのアセットマネジメントが合理化できる。
鉄筋コンクリート構造物の塩害劣化機構は多くの研究により解明が進められ,新設構造物の設計・施工段階から配慮すべき性能照査方法や,既設構造物の維持管理に対する考え方が整備されてきた。その一方で,少子化の影響により維持管理費の減少が見込まれ,LCC評価に基づく効率的な維持管理戦略を立案することが重要視されている。しかし,実際の構造物では,同じ構造・設計思想であっても,環境,コンクリートの品質,施工などに含まれる不確定性によって,部位・部材ごとに多様な変状を呈するため,LCC分析に必要な将来の劣化数量を定量的に推定することは難しいとされてきた。
そこで,本研究では,桟橋上部工の塩害劣化を対象に,構造形式や波浪条件などが異なる実桟橋での調査データを収集し,桟橋上部工内の空間的な腐食環境の違いを整理・分析するとともに,桟橋上部工の将来的な劣化状況を,工学的根拠を持って定量予測できる手法の開発を目的とする。
なお,本手法の開発により将来の劣化数量の定量予測が可能となり,さらに維持管理計画の立案(LCC分析など)において有効なツールとして活用できると言う点で,本テーマ開発の重要性は高いものと考えられる。
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