盛土等の土構造物は堤体内への水の侵入に伴い安定性が低下する。近年の研究成果では降雨後の盛土の耐震安定性は常時に比べ低下していることが明らかとなっており、地震等による被災確率を考慮したアセットマネジメントを実施するためには、降雨および地震の考慮が重要である。
空港の高盛土は、堤体内の水を速やかに排出するための排水施設が設けられている。しかし、風化や地震動により発生する細粒分等による目詰まりなどの経年劣化に伴って十分な排水機能が確保できない場合も報告されている。
本研究開発では、盛土の排水機能を非破壊で検査し、空港高盛土の降雨および地震に対する健全度を診断する技術を開発する。そして、健全度診断に基づいて、個々の盛土の地震等による被災確率を考慮し、降雨および地震の作用を考慮したアセットマネジメント手法を展開する。
この結果、個々の盛土について、降雨や地震による被災確率も考慮して、排水施設の機能更新などのアセットマネジメントが合理化できる。
本研究で開発されるアセットマネジメント手法は、次の図に示すとおりである。従来の耐震設計においては、当該施設のおかれた地震環境(地震危険度)に応じた耐震設計を行い、初期の耐震安定性を確保するのみであった。しかし、実際には、排水機能の劣化に伴い、当該地域の降雨量に応じて耐震安定性が変動する。これは、地震リスクが時間的に変動していることを示しており、一定以上に劣化が生じている場合には耐震補強あるいは排水機能の機能回復(機能更新)が必要となる。すなわち、下図の右半分が今回提案するアセットマネジメントの概要であり、振動計測による排水機能の劣化のモニタリングと、そのデータに基づく地震リスク評価をアセットマネジメントへの応用手法として取りまとめる。

本研究で提案する盛土のアセットマネジメントのイメージ
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