[SCOPE] 財団法人 港湾空港建設技術サービスセンター

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研究開発助成

平成18年度 研究開発助成研究一覧

港湾環境のアメニティー評価と創生に関する研究

研究者 小河 久郎
北里大学水産学部 教授
共同研究者 林崎 健一
北里大学水産学部 講師

研究開発の目的・意義

港湾域は、物流の場・水産増殖場・憩いの場として重要な役割を果たしているため、多様な方面から環境評価が求められる。さらにその評価に基づき効果的な環境改善による新たなアメニティーを創生することが望まれている。
現在の環境評価は、港湾域を一体的・平均的に捉えた評価方法でしかなく、港湾の小領域を価値観の違う港湾域利用者が描くそれぞれのアメニティーに配慮し、利用の形態と場の区分に基づいた的確な評価方法が必要となっている。
本研究では、港湾の特定小領域を評価する手法として研究が進められている底泥中の有機元素安定同位体の研究に着目し、大船渡湾で港湾小域ごとの環境評価の手法を提案する。さらに、その結果をもとに、工学的手法で水生物の有機物取り込み能力を活性化させることで環境改善と漁場生産性向上を同時に可能とする、持続性のある環境改善手法を提案することをめざす。
この研究で提案する環境評価法は、ピンポイントでの評価が可能であり、東京湾をはじめあらゆる港の環境評価に利用可能となるため、港湾工事で問題となる環境影響評価にも利用できるものである。さらに、水産生物を用いた環境改善手法は生産物の漁獲増加による経済効果も期待できる。

研究開発の概要

岩手県の大船渡湾は外内航船用の港湾施設があり、湾周辺域の住宅・工場から生活・産業排水を湾内放出している。また、湾内の湾口部に近い水域ではカキ・ホタテ・ワカメなどの水産増養殖が行われており、日本の港湾域が持つ自然・社会的特徴をコンパクトに備えた場所である。
大船渡湾は、湾口部に防波堤が建設され閉鎖性が強い。そのため、湾内は静穏で良港ではあるものの、富栄養化による有機汚染が深刻であり、場所によっては夏季に底で貧酸素層が出現する。現在でも湾内で養殖業は盛んであるが、富栄養化の進行に伴い養殖海面の利用は変遷を重ねてきた。また、湾内で海水浴が可能であった過去と比較して、現状を嘆く住民が少なくない。
このような背景を基にして、H17年度には従来から行われてきた湾内の水質と底質の一般環境調査に加えて、有機負荷の量的調査と採取した水と底泥について生物検定試験を行い、環境の実態把握と生物生産力の解析を行い以下の知見を得た。湾内の生物生産ポテンシャルは十分にあるものの、表層で生産された有機物が底に沈みこんだままとなる。底では微生物が有機物を分解する際の酸素消費により無酸素水を形成する。これは、底層の生物を消滅させ、食物連鎖を断ち切る。そのため、水産増養殖による有機物の回収が困難となり、一層富栄養化が進む。
この富栄養化の負の連鎖を断ち切るために、湾内で従来の養殖可能水産生物以外の生物を検索し、水産生物による天然下の有機物除去能力とマリンリフターによる除去能力および生産量の増加を測定する。さらに、その漁獲がもたらす経済効果を推算し、環境改善能力の把握と漁場価値の向上を検討する。

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