湾内湾奥部には多くの河川が流入し、この河口部分は親水水辺、船舶の係留、養殖など多目的に活用されており、陸域からの影響による水質に係る事故も多発している。この湾奥部は地形が複雑で、複雑な海水の挙動により水質が複雑に変化し、広域的な水質の把握と共に局所的な水質変化の把握が重要な場所である。この水質変化を面的にモニタリングすることは港湾の維持管理の上で重要である。
この研究では、当財団の研究助成で開発した高分解能NOAA画像、係留気球で撮影したデジタルカメラのDNの処理による水質モニタリングシステムをベースとして、湾奥河口部分での複合的な水質項目のモニタリングを係留気球を用いて随時の時間と場所で実施するモニタリンクシステムを構築することを目的としている。
衛星画像の定時、広域性と係留気球の局所性を組み合わせた研究である。
近年、高分解の衛星画像が販売されており、色々な計画、設計などに応用されている。しかし、高価で有ると共に1画像のカバーする範囲が狭く、水域でのモニタリングには適さない。他方比較的購入が容易なLandsat画像を用いた解析が多くなされている。
Landsat衛星画像の30mの解像度と約2週間の定時性を用いて水質モニタリングへの応用を研究してきたが、この衛星からの画像の配信が2005年初頭から中止された。他方、NOAA画像は周期が1日と短く、1Kmの低解像度ではあるが広域での水質モニタリングには応用できる。Landsat画像を参考にNOAA画像を高分解能化する手法、Landsat画像の差画像で精度良く水質変化をモニタリングするシステムの開発を行ってきた。しかし、実際の湾奥部では水質変化が局所的に生じ、風の向き、降雨などの影響で発生場所が移動することが分かった。この変化する水塊はせいぜい100m四方で、この様な幾つかの水塊が移動して色々な場所に影響を及ぼしている。湾奥部での水質をモニタリングするためには、1日数回の局所的な変化のモニタリングが必要であることを現地調査で痛感した。船で多地点の採水を行い、分析を行なうことは労力と経費がかかるし、分析に時間を要する。他方、上空からデジタルカメラで水面の様子を撮影し、このRGBのデジタルナンバー(DN)から水質を把握できれば、画像処理の時間だけで広域の水質を随時にモニタリングできる。
本研究では係留気球を用いて上空150mの高さから150m×150m四方の写真を船を移動させながら撮影し、このデジタルカメラのDNの処理からクロロフィルを中心とした濁度などの複数の水質を同時に推定するモデルを完成させる。この際にDNだけではNOAAなどの衛星画像との対応が出来ないので、デジタルカメラのDNからスペクトルの形を逆推定する。このスペクトルを用いて通常の画像処理を用い、逆推定したスペクトルからLandsat画像のバンド1,2,3のDNを算定し、衛星画像の解析に用いた推定式を用いて水質を推定する。
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