高木栄一上席研究員(SCOPE)
前回まで、現状の総合評価方式の抱える課題(大規模工事ほど、応札率・落札率が調査基準価格率に近くなっている等)を加算点付与の状況や、応札価格の実態から分析してきました。
今回は、加算点と価格から算出され、最終的に落札者を決定する指標である「評価値」について考察します。
国の直轄工事で実施されている総合評価方式は、除算方式で評価値を算出します。
評価値=(標準点+施工体制点+加算点)/応札価格
上の式で、標準点は100点、施工体制点は30点と固定値として考えてよいので、次の式のようになります。
評価値=(130+加算点)/応札価格
現状では、応札価格は億円単位で計算されますので、求まる評価値は次のようになります。
工事規模 評価値(小数点以下4桁の場合)
100億円程度 1.0000
10億円程度 10.0000
1億円程度 100.0000
1千万円程度 1000.0000
算出された評価値の有効桁数が5~8桁の間にあることがわかります。
上記は、小数点以下4桁まで採用する場合ですが、小数点以下3桁を採用している発注者もありますので(関東地方整備局(河川道路)、農林水産省、防衛省など)、評価値の有効桁数は、4~8桁の間にあることが分かります。
このように、工事規模に応じて桁数が異なる「評価値」の算出方法は合理的でしょうか?有効桁数をあわせる方が一般的ではないでしょうか?
また、評価値の算出に用いる加算点と応札価格の有効桁数も全く異なります。加算点満点を60点として、加算点の付与の方法を3通り(30点きざみ、10点きざみ、1点きざみ)の場合について、工事規模(10億円、3億円)による評価値を計算した表を以下に示します。
表のうち、黄色く塗りつぶした部分が、実際に獲得できる加算点と、それに伴う評価値の計算結果を示します。塗りつぶしのない部分(黄色く塗りつぶしたものの間)は、獲得できる加算点同士の中間値を示します。
たとえば、「10点きざみ」の例をみると、実際に獲得できる加算点50点の場合でも。その上下の中間点45点~55点の範囲にある可能性があるわけですから、計算される評価値は58.3333~61.6666の間にあり、有効桁数は1桁しかありません。
「1点きざみ」の場合でも、有効桁数は2桁までです。
このように、加算点の有効桁数は1~2桁となりそうですから、応札価格が4~5桁(場合によっては9桁の例もあります)を使って算出した評価値の有効桁数を4~8桁まで採用することには、無理がありそうです。
この課題を解決し、算出される評価値が適正となるためには、以下の3点の改善が必要です。
① 加算点の付与を小数点以下1位の単位まで細かくする。
② 評価値を計算する際、分母の応札価格を応札率(%、小数点以下2桁まで)とする。
③ 算定された評価値が同点の場合は、獲得加算点の高い方を落札者とする。
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