[SCOPE] 一般財団法人 港湾空港総合技術センター

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コラム

第5回 「個別案件の入札契約状況」  ~2014.12.1~

高木栄一上席研究員(SCOPE)


 前回まで、直轄の港湾空港関係工事を中心に、(もう10年近く、しかもほぼ100%の工事で実施されている総合評価方式ですが・・・)「試行中」の総合評価方式の現状と課題を包括的に纏めてきました。
 今回は、どのような入札契約が行われているのか、個別案件で明らかにしてみたいと思います。

加算点の付与に起因して発生する状況

 本コラム第4回「加算点の付与は適切か?」で、「87件中30件,34.5%の案件で一位同点」であることを示しました。このような加算点付与の状況であれば、たとえ自社の提案が高い評価を得るに違いないと思っていても、他社との「同点」の可能性を否定できず、価格競争せざるを得ないことは、容易に理解できると思います。
 特に、「施工体制確認型」の総合評価方式では、一般的に、応札率・落札率とも調査基準価格に張り付く状況(調査基準価格の直上価格で応札する)になり、逆転割合も極めて小さくなります。
 その結果、以下のような状況が生じます。
・調査基準価格をほんの少額下回り、施工体制確認型総合評価方式では、加算点が高くても「無効」となる。
・獲得加算点と応札価格が同じで、くじ引き落札となる。
・調査基準価格と同額の応札価格となる(複数者の場合もある)。
・億円規模の予定価格の案件で、「1円」単位、「10円」単位で応札する。
・10数億円の予定価格の案件で、加算点が同点で「数千円」の差で落札する。
・段階選抜方式が機能しない。

 

 港湾関連入札・契約情報(PAS)および入札情報サービス(PPI)から、個別の入札調書を参照してみます。

 

調査基準価格をほんの少額下回り、施工体制確認型総合評価方式では、加算点が高くても「無効」となる。

①予定価格15億6451万5千円、調査基準価格13億7716万9千円の「土砂処分場工事」(D地整、平成25年度)です。調査基準価格を6万9千円下回り、無効となっています。

 

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②予定価格7億7493万円、調査基準価格6億8658万7980円の「防波堤築造工事」(H地整、平成26年度)の案件です。調査基準価格を8万7980円下回り、無効となっています。

 

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③予定価格4億4734万8千円、調査基準価格3億9813万9千円の「航路浚渫工事」(C地整、平成26年度)です。全社、低入札ですが、うち2社は有効です(施工体制評価点5点)。

 

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④予定価格4億0903万2千円、調査基準価格3億5276万円の「岸壁整備工事」(D地整、平成24年度)です。調査基準価格を1万円下回り無効となっています。

 

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獲得加算点と応札価格が同じで、くじ引き落札となる。

 

⑤予定価格11億8756万9千円、調査基準価格10億6406万2千円の「航路浚渫工事」(G地整、平成25年度)です。WTO対象工事ですが、2者でくじ引き落札となっています。

 

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⑥予定価格9億4826万円、調査基準価格8億4602万8千円の「付帯施設本体工事」(A地整、平成26年度)です。3者が同額で応札、うち2者が獲得加算点同点(評価値が同じ)でくじ引き落札となっています。

 

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⑦予定価格5億8703万円、調査基準価格5億2233万6千円の「泊地浚渫工事」(H地整、平成25年度)です。2者でくじ引き落札となっています。

 

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⑧予定価格4億7884万3千円、4億2533万8千円の「ケーソン製作工事」(D地整、平成25年度)です。4億2535万円の応札者が5者いますが、うち2者の評価値が同点でくじ引き落札となっています。

 

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⑨予定価格1億1797万円、調査基準価格1億0403万7線円の「離岸堤消波工事」(A地整、平成26年度)です。評価値が同じで、くじ引き落札となっています。

 

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調査基準価格と同額の応札価格となる(複数者の場合もある)。

 

⑩予定価格14億8843万円、調査基準価格12億9194万円の「トンネル工事」(河川道路関係、平成23年度)です。調査基準価格と同額の応札者が2者、獲得加算点も両者とも満点(評価値が同じ)で、くじ引き落札となっています。

 

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⑪予定価格17億5919万円、調査基準価格15億4281万円の「防波堤本体工事」(F地整、平成24年度)です。調査基準価格と同額で落札しています。

 

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⑫予定価格7億4044万円、調査基準価格6億4493万円の「防波堤本体工事」(F地整、平成24年度)です。調査基準価格と同額の応札者が3者、評価値も同じ(加算点が同点のため)でくじ引きで落札者が決定しています。

 

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⑬予定価格1億5365万円、調査基準価格1億3593万円の「消波ブロック製作工事」(D地整、平成26年度)です。調査基準価格と同額で落札しています。

 

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億円規模の予定価格の案件で、「1円」単位、「10円」単位で応札する。

 

⑭予定価格1億5773万円、調査基準価格1億3940万3千円の「離岸堤基礎工事」(A地整、平成26年度)です。10円単位の応札者が調査基準価格+750円で落札しています。

 

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⑮予定価格1億4792万5千円、調査基準価格1億3092万9千円の「岸壁工事」(D地整、平成26年度)です。1円単位の応札者がいますが、落札できませんでした。

 

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⑯予定価格4595万5461円、調査基準価格4044万804円の「消波ブロック工事」(平成25年度)です。1円単位の応札が2者、10円単位の応札が2者います。うち1円単位の応札者が評価値の同じ(小数点以下4桁まで)10円単位の他の応札者と4円の差で落札しています。

 

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⑰予定価格4704万2856円、調査基準価格4135万669円の「消波ブロック工事」(平成25年度)です。1円単位の応札が3者、10円単位の応札が1者あります。うち1者が調査基準価格と同額で、他社と1円の差で落札しています。

 

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10数億円の予定価格の案件で、加算点が同点で「数千円」の差で落札する。

 

⑱予定価格15億1317万円、調査基準価格13億5632万4千円の「航路浚渫工事」(D地整、平成26年度)です。10億円超の工事で千円単位で応札し、2千円差で落札しています(主数点以下4桁までの評価値は同点です)。

 

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段階選抜方式が機能しない。

 

⑲予定価格26億1509万円、調査基準価格23億3137万円の「トンネル工事」(河川道路関係、平成25年度)です。
 この工事は、一次提案(20点)で上位5者を選定する段階選抜方式でした。23社が参加し、全社16点の同点で全て指名されています。総合評価では、[一次提案(20点)+二次提案(10点)]×ヒアリング(1.0、0.5、0)]で行われましたが、二次提案も全社7点、ヒアリングは全社×1.0で、結局23社の加算点は同点となり、価格競争となりました。結果は、2社が無効、有効21社中、最低価格の社が落札しました。

 

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