高木栄一上席研究員(SCOPE)
第3回では、港湾空港関係工事と河川・道路・営繕工事、農林水産省発注工事について、加算点付与の比較をしてみました。付与される加算点に差が付いていないことが課題であることは明確です。 第4回では、港湾空港関係工事についてもっと詳細に加算点付与の状況を確認してみたいと思います。
表は、総合評価方式を考える(第2回)で報告した「平成25年度 港湾空港工事の入札契約結果(速報)」のうち、WTO案件を抜き出したものです。ここでいうWTO案件というのは、入札参加資格要件に「一般競争参加資格の決定の際に算定した客観点数が一定の点以上のもの」とされた案件を示します。
したがって、これらの案件では、加算点の全てが技術提案(または施工計画、少数だがヒアリングを実施している案件もある)であり、企業や技術者の過去の実績は評価されません。この87件について、発注者別に加算点付与の結果を確認してみます。
図の解説をします。
・縦軸:案件ごとの最大加算点獲得率(%)=獲得最高加算点/加算点満点
・横軸:アルファベットは地方整備局名、数字は平成25年度に契約したWTO案件の件数
たとえば、横軸のラベル「A(2)」は、A地方整備局の2件の案件をグラフにしていることを示しています。
・グラフ:地方整備局ごとに、最大加算点獲得率の最大と最低を直線で結び、最大・平均・最低の値(%)をグラフ中に示しています。
たとえば、B地方整備局では、28件の案件があり、最大加算点獲得率の最大が65.5%、最低が48.2%、平均が58.2%です。
最大加算点獲得率の平均(%)が最も低い地方整備局を左に配置し、最も高い地方整備局を右に配置しています。
発注者によって、加算点付与の状況が大きく異なっています。
A・B・Cの3地方整備局では、加算点の獲得が難しく、高得点を期待するのは無理なようです(採点基準が辛い)。一方、G・Hの2地方整備局では満点の獲得が期待できますが、一方で一位同点の恐れが高くなっています(採点基準が甘い)。
「採点基準が辛い」場合、得点できる加算点の範囲が半分程度に限定され、加算点の差が付きにくくなります。また、全ての発注者で「オーバースペック」の提案は認められません。高得点を得られるのはどのような提案なのか、具体的な事例で示して頂きたいものです。
「採点基準が甘い」場合、獲得加算点満点で一位同点の確率が高くなります。差をつけない採点方法です。
地方整備局ごとに、獲得加算点一位同点者のある件数と割合を確認してみます。
A地整: 2件中2件(100%)
B地整:28件中0件( 0%)
C地整: 8件中5件(62.5%)
D地整: 8件中6件(75%) ※うち、くじ引き落札1件
E地整: 5件中1件(25%)
F地整:20件中8件(40%)
G地整:10件中5件(50%) ※うち、くじ引き落札1件
H地整: 6件中3件(50%) ※うち、くじ引き落札1件
これらを集計すると、87件中30件で一位同点の案件があります(34.5%)。8地方整備局中、5地方整備局では、一位同点案件の割合が半分以上です。
また、B地方整備局では、一位同点の案件がありませんが、加算点の差が1点以下の案件が12件(42.9%)あります。
このような加算点の付与の状況であれば、最終的に価格競争をせざるを得ず、施工体制確認型の総合評価方式では、応札率・落とも、調査基準価格率に張り付く状況になります。
獲得加算点と応札額が同じで、2者の評価値が同点となった結果、くじ引きにより落札者を決定した案件が3地方整備局で各1件あります。
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