高木栄一上席研究員(SCOPE)
※お詫び 農林水産省発注工事の母集団に誤りがありましたので、表・図1を修正しました。
第2回では、「平成25年度 港湾空港工事の入札契約結果(速報)」を報告しました。
では、他の発注者ではどうでしょうか?
国土交通省の河川・道路・営繕関係工事については、国土技術政策総合研究所が毎年「直轄工事における総合評価落札方式の実施状況」を公表されています。
最新のものは「平成24年度」版です(3月11日に開催された「総合評価方式の活用・改善等による品質確保に関する懇談会」で報告されました)。
http://www.nilim.go.jp/lab/peg/siryou/sougou_hinkakukon/08_20140311_sankousiryou2.pdf 参照
港湾空港関係工事と同様の状況です。
入札情報サービス(PPI)には、農林水産省発注工事も公表されています。発注標準Aランク以上の工事について、港湾空港関係工事と比較してみます。
平成25年度契約工事です(農林水産省発注工事は予定価格2.3億円以上、港湾空港関係工事は同2.5億円以上)。
このように、調査基準価格を基準に比較すると、応札行動に大きな差が見られます。この差を説明できる指標として、同一工事における「獲得加算点1位と2位の差」に注目してみました。
図1で明らかなとおり、農林水産省発注工事では、港湾空港関係工事に比べて、付与する加算点の差が大きいということです。加算点の差が大きければ、総合評価方式では、その分だけ高く応札しても落札できる可能性があるのは明らかです。
なお、港湾空港関係工事では、「無効」「辞退」者の加算点が公表されていませんので、獲得加算点の差は、さらに小さいと考えて良さそうです(農林水産省発注工事では、公表されています)。
農林水産省は、平成23年度に総合評価方式を改定し、いち早く「二極化」を実施しています。加算点の付与は、素点計上方式ではなく、一位満点方式です。
・標準A-Ⅰ型(技術提案+ヒアリング)
・標準A-Ⅱ型(技術提案)
・標準B型(施工計画重視型)
・簡易Ⅰ型(簡易な施工計画等)
・簡易Ⅱ型(企業評価+技術者評価)
ヒアリングは、標準A-1型に限定して行われますが、国土交通省の採用している係数方式ではなく、0~10点の加算点(小数点以下1桁まで)が与えられます。以前のデータですが、平成24年度は13件の工事で115者にヒアリングが行われています(図2参照)。
加算点に差がついている農林水産省工事でも、1位同点の案件が19.1%あります(図1参照)。これは、加算点の付与の方式に課題があることを示しています(たとえば、1点きざみ等)。加算点の差が0点~1点の間の傾きと、1点以上の折れ線が不連続になっていることで分かると思います。
一方、応札額の方は、限りなく小さな単位まで可能ですから(たとえば、10億円以上の工事で千円単位の応札)、獲得加算点等と応札額によって算出される評価値は、応札額に鋭敏に反応します。
現在、評価値は、国土交通省発注工事で小数点以下4桁、農林水産省工事で小数点以下3桁まで計算され、評価値の最大者が落札する仕組みですから、いろいろな弊害が発生することになります。
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