[SCOPE] 一般財団法人 港湾空港総合技術センター

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コラム

第1回 「総合評価方式の現状と課題」  ~2014.4.1~

高木栄一上席研究員(SCOPE)


 平成22年4月、公共調達支援総室設立以来、入札契約制度、特に工事を中心とする総合評価方式について、リアルタイムにモニタリングして参りました。得られた成果は、各種講演会、土木学会の建設マネジメント委員会などで発表してきましたが、さらに広く関係者の皆さまに知って頂くため、「コラム」として連載することといたしました。
 このコラムは、総合評価方式に係る直近の諸情報に関連して、掲載することといたします。総合評価方式の課題が少しでも改善に向かうようお役に立てれば幸いです。
 第1回は、3月11日に開催された「総合評価方式の活用・改善等による品質確保に関する懇談会」(国土交通省)の配布資料に沿って、我が国の総合評価方式の現状と、主立った課題を列挙してみます。

総合評価落札方式の二極化の状況と今後の方向性

資料1:総合評価落札方式の改善(二極化)の状況と今後の方向性(国土交通省)

http://www.nilim.go.jp/lab/peg/siryou/sougou_hinkakukon/08_20140311_siryou1.pdf 参照

 二極化当初の予想よりも、施工能力評価型の適用件数比率がかなり高いと報告されています (全体95.0%、北海道開発局99.4%、北陸地方整備局98.9%、中部地方整備局95.0%、近畿地方整備局96.0%、九州地方整備局98.8%、沖縄総合事務局95.3%)(P.5)。
 施工能力評価型Ⅰ型では施工計画書を可・不可で審査しますが、「作成する必要があるのか、疑問」(受注者)、「審査の必要性が薄い」(発注者)との意見が上がっています(P.7)。可・不可で評価するのであれば、総合評価方式の評価項目ではなく、競争参加資格要件と同じです。ちなみに、四国地方整備局では、施工能力評価型Ⅰ型は試行されていません。また、北陸地方整備局と近畿地方整備局では、施工能力評価型Ⅰ型で施工計画を加算点評価しています。
 なお、この資料では報告されていませんが、ヒアリングの必要性についても同様の意見があるものと思われます(ヒアリング係数は、ほぼ100%が「1.0」となっています)。 施工能力評価型は、発注者の2割が「特定の企業への受注偏りの懸念が増加」と回答しており(P.9)、その対策として、「技術提案のみを加点評価する総合評価方式を試行」する方針が示されています(P.12)。二極化の主旨から外れるのではないかと思われます。

国土交通省は、本予算や補正予算が成立するつど、いわゆる「事業執行通達」を発出しています。「平成25年度補正予算等に係る国土交通省所管事業の執行における入札・契約業務等の円滑な実施について」(平成26年2月6日付け)では、入札・契約手続きの効率化等の一施策として「総合評価落札方式における提出資料の簡素化」を掲げ、「1件につき予定価格が3億円位未満の工事」については、施工能力評価型Ⅱ型により入札手続きを実施することができるとしています。

 併せて、一定の条件を満たす2件以上の工事について、「一括審査方式」の活用を打ち出しています。

http://www.mlit.go.jp/common/001030722.pdf 参照

総合評価落札方式の改善(二極化)に関する調査・分析

資料2:総合評価落札方式の改善(二極化)に関する調査・分析(国土交通省)

http://www.nilim.go.jp/lab/peg/siryou/sougou_hinkakukon/08_20140311_siryou2.pdf 参照

 二極化に当たって推奨された「段階選抜方式」の試行結果については、報告されていませんが、受発注者に対するアンケート調査が実施されています(P.18)。

今後の総合評価落札方式のあり方

資料3:今後の総合評価落札方式のあり方(国土交通省)

http://www.nilim.go.jp/lab/peg/siryou/sougou_hinkakukon/08_20140311_siryou3.pdf 参照

 地方公共団体で総合評価方式の導入が進んでいない現状(件数ベース、都道府県18%、政令市7%、市区町村1%)が報告されています(P.5)。

直轄工事における総合評価落札方式の実施状況

資料4:直轄工事における総合評価落札方式の実施状況【平成24年度(概要版)】(国土技術政策総合研究所)

http://www.nilim.go.jp/lab/peg/siryou/sougou_hinkakukon/08_20140311_siryou4.pdf 参照

参考資料1:総合評価落札方式(二極化)フォローアップ調査 アンケート調査票等(国土交通省)

http://www.nilim.go.jp/lab/peg/siryou/sougou_hinkakukon/08_20140311_sankousiryou1.pdf 参照

 「若手技術者の配置を促す入札契約方式」が検討されています(P.22~24)。品質を確保する手段として、企業と配置予定技術者の能力(過去の実績)を評価してきた総合評価方式ですから、今までの考え方と矛盾しないか、注視が必要です。

参考資料2:直轄工事における総合評価落札方式の実施状況(平成24年度)(国土技術政策総合研究所)

http://www.nilim.go.jp/lab/peg/siryou/sougou_hinkakukon/08_20140311_sankousiryou2.pdf 参照

 総合評価方式が抱える大きな課題が何点か報告されています。総合評価方式を適用していても、最終的には価格競争に陥らざるを得ない現状を顕著に示しています。 ・落札率と調査基準価格率との差が縮小傾向にある(特にWTO対象工事では、1.2~1.4%)(P.7)。

・WTO対象工事の技術評価点一位同点者数は、平成22年度まででほぼ倍増している(P.9)。

・入札率と調査基準価格率の差が0%に集中する傾向である(P.20)。

・WTO対象工事で技術評価点一位同点者が多く発生している(40%)(P.25)

・二極化に移行する以前の平成24年度に実施された高度技術提案型では、技術評価点最高得点者の落札者に占める割合が7件中1件のみである一方、最低価格者の占める割合は7件中6件である(P.10)。

 これらの資料は、「港湾空港関係を除く直轄工事」について調査・分析・報告されているものですが、我が国で実施されている総合評価方式が陥っている現状を的確に表していると思われます。港湾空港関係工事についても、同じような課題を抱えています。このコラムでは、総合評価方式の現状と課題について、様々な角度から考えていきます。

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