八谷好高客員研究員(SCOPE)
滑走路運用に係る事項として、滑走路の点検方法、航空情報サービス(AIS)の伝達方法およびFOD・障害物の除去・管理方法について記述しています。具体的には、滑走路点検、野生生物対策、FOD管理、障害物管理、通信/監視、車両および運転訓練、インシデント報告/調査/統計、悪天候、無線施設のメンテナンス、AIS/AIPについて詳細に記述していますが、本コラムでは空港土木施設に係る事項を中心に紹介します。
滑走路の点検は定期的にできるだけ頻度を上げて実施する。その方法は、車両を使用し、低速走行しながら路面を目視により点検し、その結果を記録して、エアサイド日常報告管理システム (Airside Daily Report Management System) に保管するというものである。
●滑走路点検における注意事項
–早朝点検:滑走路全面における詳細な路面点検。これには滑走路一本につき15分程度の時間がかかる(中心線の両側で、3m離れた位置)
–午前点検:部分的な緊急点検(滑走路灯の間)
–午後点検:午前点検と同じ
–夕方点検:滑走路全面における点検。灯火点検が開始されるまでの時間帯に実施
●舗装区域の点検において注目すべき事物
●非舗装区域の点検において注目すべき事物
●点検結果の報告
滑走路の点検時に何らかの危険を発見した場合には、無線により直ちにATCへ報告する。これによりATCは適切かつ迅速な措置をとることができる。点検の結果として滑走路が閉鎖される状況となった場合、メンテナンスサポートチームの到着を待ちながらも、他所の点検は継続して行う。
表は日常点検結果の報告様式の例である。
●滑走路上に水がある場合の報告
滑走路中間部(全長の1/2)の路面状況について次の用語を使用して報告する。
●滑走路上に雪、スラッシュ、氷または霜がある場合の報告
滑走路面の状況について次の用語を使用して報告する。可能であれば、それらの深さも報告する。
●滑走路面摩擦の測定
ICAO第14付属書「飛行場」では、滑走路は路面摩擦特性の最低レベル(最小値)以上を保持していることと規定している。乾燥状態にある滑走路については、摩擦測定を定期的に実施しなければならない。
ICAO Circular 329「滑走路の路面状況の評価・測定・報告」では、摩擦測定装置を次の2種類の目的で使用することとしている。
気象その他の理由により滑走路が乾燥状態にない場合、滑走路面の摩擦特性を評価し、その情報をATCに提供する。滑走路が「すべりやすい (Slippery) 」と考えられる場合には摩擦測定を行う。滑走路運用上からは、次の状態のときに路面摩擦の評価を行う。
路面摩擦は次の方法により測定する。
雪や氷に覆われた滑走路面の摩擦は、ICAO 第14付属書に記載されているカテゴリーに従って報告する(表)。
野生生物の危険性は、安全管理システム (Safety Management System、 SMS)において管理する。空港およびその周辺、特に滑走路の離着陸領域における野生生物危険性管理計画を整備する必要がある。これには、空港およびその周辺における野生生物個体数、対策ならびに管理活動に対する野生生物の反応についてのデータの収集・記録を含む。
野生生物管理計画と対策の詳細は、ACIの野生生物管理ハンドブック(Wildlife Hazards Management Handbook)* を参照のこと。
異物 (Foreign Object Debris、 FOD)には、航空機タイヤを傷つけたり、エンジン内に吸い込まれたりするといった直接的接触、またはジェットブラストによって吹き飛ばされた結果として航空機に損傷を与えるといった間接的接触の危険性がある。このほか、他の物件に損傷を与えたり人を傷つけたりする危険性もある。
FODは、そのほとんどが組織としてのマニュアル類の未整備、個人の怠慢または手順の無視に起因する。
これらは、次の原因によって引き起こされる別のFODの元ともなる。
FOD防止プログラムに関する研修、設備の点検・メンテナンスおよび当事者の協調は、FODとその影響を最小限のものとできる。FODには、工具、舗装破片、ケータリング用品、建材、土砂、荷物、野生生物といった雑多なものがある。有効なFOD防止プログラムには次の項目を含む必要がある。
FODの防止対策には次の項目を含む必要がある。
清掃はエアサイドからFODを除去するための最も効果的な方法である。吸引式清掃車両は舗装のひび割れおよび目地から破片を除去できるので、手作業によらなければならない箇所を除いて、全ての区域において使用する。エアサイド(特に航空機走行区域、エプロンとそれらに隣接する区域を含む)は、日常的に清掃する。
金属部品、破片等を拾うために、GSE車両等の車体の下にマグネットバーを取り付ける。収集した破片等が落ちないように、マグネットバーは定期的に清掃する。エアサイドで使用する車両は、部品等が落ちることがないように、定期的に点検する。
車両がランブルストリップを乗り越えるときに部品等が落ちる可能性がある。ランブルストリップ(長さ30~45 cm)は、ランドサイドとエアサイドの境界またはエアサイドの工事箇所との境界に設けられる。
FOD自動検出システムが商品化され、一部の空港では採用されている。ただし、現時点では価格の問題からほとんどの空港では使用されていない。
すべての工具を元の保管場所に戻すことによりFODのリスクが軽減できるので、メンテナンス部門ではこのようなシステムを導入する必要がある。このシステムでは、バーコード等により工具と作業員ならびにその位置を自動識別できる。
航空機の安全な離着陸のために空港管理者はICAOの規定に従って空港制限表面 (Obstacle Limitation Surfaces、 OLS)を確立する必要がある。
適切な通信手法と無線電話の標準化によって、車両やスタッフが滑走路等制限区域に不正に立入ることを防止できる。
航空機走行区域で車両を運転するドライバー等は、実効性のあるカリキュラムに従って研修を受ける必要がある。
ICAOの規定に従って SMS を導入する必要がある。これには、運用に関する障害についての記録、対応、フィードバックの記録を含む。
悪天候下における航空機の安全運航を確保するために、低視程下での方法 (Low Visibility Procedures、 LVPs)を航空機運航区域に適用する必要がある。
構造物や空港の運用が空港内外における航行援助施設の運用に影響を及ぼさないようにする必要がある。
航行援助施設や滑走路・誘導路に関する情報の変更は、航空情報サービス(AIS)に記載しなければならない。これは統合航空パッケージ (Integrated Aeronautical Package) の形で提供される。
注)
* ACIにより2013年に発行されたハンドブック(第二版)。野生生物の定義、野生生物ハザードマネジメント計画 (WHMP) 実施体制、野生生物リスクマネジメントならびにWHMP、実施方法、訓練、評価の章により構成されている。
** 注意喚起用に舗装面に設ける凹凸。現在FAAで滑走路立入防止対策の有効性を評価する研究が行われている。図は道路等で用いられているランブルストリップの例。
(続きは次回)