[SCOPE] 一般財団法人 港湾空港総合技術センター

コラム

第68回 「空港緊急時対応計画 (8)」  ~2025.07.01~

八谷 好高 客員研究員(SCOPE)

 

 空港の緊急時対応計画について米国のものを事例として考察しています。前回までの空港として確保しなければならない機能別対応計画に引き続いて、今回からはハザード別のものについて取り上げます。最初は、航空機のインシデント・アクシデントに対する緊急時対応計画です。

● ハザード別緊急時対応計画

 米国連邦航空規則に記載されている空港緊急時対応計画では、空港管理者に対して次に示す緊急事態への対応計画と手順の作成を義務づけている。

 - 航空機のインシデント・アクシデント
 - 爆発物事件
 - 建物火災
 - 燃料供給施設や燃料貯蔵区域における火災
 - 自然災害
 - 危険物・有害物質事件
 - 妨害行為、ハイジャック事件等業務妨害
 - 航空機移動区域における照明の電源障害
 - 水難救助(必要時)

● 航空機のインシデント・アクシデントへの対応計画

◆概要

 空港管理者は、空港内と周辺地域での航空機のインシデント・アクシデント(以下、航空機事故)に対する緊急時対応計画 (AEP)を策定する必要がある。

◆目的

 このセクションでは、空港の運用に影響を及ぼすような航空機事故が発生した場合の措置について記述する。

◆状況と想定

 このセクションでは、空港の状況を表す上で必要となる事項について記述する。具体的には次のようなものである。

 - ARFF指数*
 - 空港の運用時間
 - 航空交通管制部門・管制塔 (ATCT)の運用時間
 - 滑走路の数・方向
 - 航空機のグループ(旅客機、貨物機、コミュータ機、GA機)別の㏠当たり運航回数
 - 就航航空機別の最大搭乗者(乗客と乗員)数
 - 空港の部門別のスタッフの人数と雇用形態
 - 視界不良時のARFFの対応方針と手順
 - 航空機事故発生時の緊急事態対応センタ (EOC)の発足に関する方針

◆運用

 このセクションでは、空港またはその周辺で航空機事故が発生した場合の対応活動について記述する。

  航空機事故の分類
 航空機事故への対応方法による航空機事故の分類システムを確立する。たとえば、次のようなものが考えられる。
 - アラート I(待機警報)
航空機に安全な着陸をする上では問題とならない程度の欠陥があるか、またはその疑いがあることが判明した場合。これは通報・通知のみであり、関係する事故対応チームは詰所にて待機する。
 - アラート II(緊急警報)
航空機に事故発生の危険性があるとみなされる程度の欠陥があるか、その疑いがあることが判明した場合。すべての事故対応チームは指定された場所で待機する。
 - アラート III(事故発生警報)
空港またはその周辺で航空機事故が発生した場合。指定されたすべての事故対応チームは、事前に定められた計画と手順に従って現場に向かう。
  対応活動の内容
 緊急事態への対応活動は、航空機事故への即時対応とその被害・損害の軽減、救難・救助、空港の構造物や設備の損傷の防止、負傷者の医療処置の4つに分類できる。具体的な活動は、対象に応じて異なったものとなる。
 - 航行中の航空機
航行中の航空機に関する緊急事態への対応。これはFAAとICAOにより規定されている。
 - 地上走行・駐機時の航空機
地上走行時や駐機時の航空機に関する緊急事態への対応。これには、地上サービス、整備作業、出発前点検、GSEの操作等が含まれる。
 - 空港インフラ
空港の各種構造物・施設、ユーティリティシステム・サービス等に関する緊急事態への対応
 - 医療処置
医療処置が直ちに必要となるような緊急事態への対応
  対応活動のカテゴリ
 緊急事態発生時の負傷者への対応活動については、限られたリソースを適切に管理するために、航空機の搭乗者数に応じたカテゴリ分けが必要となろう。そのためには、就航している最大の航空機を対象にして必要となるリソースを決定するとよい。具体的には、航空機事故の死傷者数を最大で搭乗者の約75%と想定し、そのうちの20%、30%、50%が、それぞれ、優先度 I(緊急処置が必要)、優先度 II(通常処置が必要)、優先度 III(軽微処置が必要)に分類できるとすればよい。
 航空機事故が発生したときの緊急車両の対応については、ARFF車両はあらゆる航空機事故に対して出動する必要があるが、空港外の緊急車両はインシデントコマンダ (IC)の判断によっては出動しないこともあり得よう。
  緊急事態のフェーズ
 航空機事故に対する緊急時対応計画は、次の3つのフェーズに分けて策定する。
 - 対応フェーズ
緊急事態対応スタッフの派遣、初期消火、救助、危険物への対応に重点を置く。
 - 調査フェーズ
他の緊急事態とは異なり、情報の収集と分析、原因の特定および結論の導出が必要となる場合がある。調査活動は、対応フェーズにおいて開始され、状況に応じて復旧フェーズ中も継続される。
 - 復旧フェーズ
空港をできるだけ早く通常の運用状態に戻すことが極めて重要であり、そのための計画、標準作業手順書 (SOP)、チェックリストを個別に用意する。復旧活動は対応フェーズにおいて開始され、状況に応じて調査フェーズ中も継続される。
  航空機事故対応・復旧活動
 航空機事故への対応・復旧活動の内容と空港スタッフの動員方法について記述する。この場合、AEPと周辺地域の緊急時対応計画 (EOP)といった他の緊急時対応計画との関係についても記述する必要がある。
  空港周辺地域の組織による空港内緊急事態への対応
 空港周辺地域の公共部門、民間部門、ボランティア団体等の緊急事態対応組織が空港内で発生した緊急事態に対して実施する対応・復旧活動について記述する。
  相互支援協定
 データやリソースを共有するために、相互支援協定等の各種協定をリストアップする。
  証拠の保全
 ARFFのスタッフは、FAAの規定に従った航空機事故調査の手順と方法を十分に理解している必要がある。国家運輸安全委員会 (NTSB)が到着するまでは、可能な限り現場をそのままにしておく必要がある。また、航空機の残骸、郵便物や貨物については、NTSBが確認するまでは、次の場合を除き、動かしたり、移動したりしてはならない。
 - 負傷者または閉じ込められた人の救出
 - 残骸のさらなる損傷の防止
 - 人的被害の防止
   航空機の残骸、郵便物や貨物を移動する場合は、可能であれば、それらの元の位置と状態ならびに衝撃の痕跡について、スケッチやメモを作成するとともに写真を撮影する。

◆組織と責任の割当て

 このセクションでは、空港または空港周辺で航空機事故が発生した場合の対応活動について空港の部門別に記述する。

  ATCT
 - 適切な通報・通知システムを起動する。
 - 空港管理者の要請に応じて、または協定に従って、適切なNOTAMを発行する。
 - 空港が継続して運用されている場合には、空港内の航空機と車両の交通を管理する。
 - 他の航空機が緊急事態対応活動を妨げることのないように、航空機事故現場周辺の空域を管理する。
 - FAAに適切な通報・通知を行う。
 - 航行中に緊急事態が発生したときに航空機とARFFとの間で正確な通信が行えるように、可能な限り緊急周波数を使用する。
  消防・救助部門
 - 定められた方針と手順に従って航空機事故現場に向かう。
 - 定められた方針と手順に従って、初期消火・救助活動のためのインシデントコマンドシステム (ICS)を主導する。
 - 相互支援組織と連絡をとり、適切に活動していることを確認する。
  警察
 - 必要な交通・アクセス管理を開始・継続する。
 - 現場でのサポートと警備を行う。
 - 航空機運用領域 (AOA)のアクセス管理・誘導を支援する。
 - 相互支援組織と連絡をとり、適切に活動していることを確認する。
 - 事故調査に対して必要な支援を行う。
  救急医療サービス部門
 - 負傷者に対して必要なトリアージと現場での初期治療を行う。
 - 相互支援組織に連絡をとり、適切に活動していることを確認する。
 - 負傷者を適切な医療施設まで迅速に移動させる。
 - 負傷者とその搬送先となる医療施設のリストを作成する。
 - 航空会社と連携して、負傷していない搭乗者の待機場所までの移送方法について調整する。
 - 医療用品の補充を手配する(必要に応じて)。
  空港管理者
  ・一般事項
 - 負傷していない人、負傷者と死者を収容するために、空港の格納庫や周辺地域の倉庫といった施設・建物を指定する。
 - EOCを立ち上げる(必要に応じて)。
 - NTSB、FAA、連邦緊急事態管理庁 (FEMA)、空港スタッフ等、対象となる組織と個人に対して、すべての通報・通知が適切になされていることを確認する。
 - EOCを通じて緊急支援サービスを提供する(要請に応じて)。
 - 緊急事態対応スタッフが適切な装備を有し、トレーニングを受けていることを確認する。
  ・空港の運用
 - 消防、医療サービス、警察等、緊急事態対応組織が適切に活動していることを確認する。
 - ATCTと協力して、緊急事態対応活動を調整する。
 - 全面的または部分的によらず、空港閉鎖の必要性を判断して、それに応じて適切なNOTAMを発行する。
  ・空港の閉鎖・再開
 空港全体またはその一部の閉鎖・再開については空港管理者が責任を有するが、航空機事故の発生直後は空港管理者がその状況を適切に判断できないこともあろう。そのような場合には、空港管理者はATCTに空港を閉鎖する権限を移管する必要がある。そのためには、ATCTとの協定を事前に締結しておかなければならない。
 空港の再開は、人や財産に影響がなく、ARFFが適切なレベルまで機能を回復していると判断される場合にのみ可能となる。
 その具体的な条件は次のとおり。
 - 救助・避難活動
救助・避難活動が適切に行える。
 - 航空機事故への対応
航空機事故への対応活動が適切に行える。そのために、空港管理者は次の事項を実施する必要がある。
・航空機の所有者・運航者への通報・通知
・ICへの技術的支援
・同時に行われている他の対応活動のモニタリング・調整(必要に応じて)
 - メンテナンス
空港インフラのメンテナンスが適切に行える。そのために、空港管理者は次の事項を実施する必要がある。
・ライフラインを含む重要なサービスの支援・提供(必要に応じて)
・空港の運用を延長する場合の公衆衛生サービスの提供
・必要なリソースの提供。具体的には、ポータブルトイレ、飲料水、ポータブルライト、通信機器、拡声器、ポータブルテント、ロープ、バリケード、バリアテープ、標識、資機材、重機、油類除去装置といったもの
 - 空港の運営・管理
予算編成、支払い、調達ならびに支出状況のモニタリング等、空港の運営・管理業務が適切に行える。
 - 広報・周辺地域への対応
広報や周辺地域への対応が適切に行える。そのために、空港管理者は、空港の活動に関するプレスリリースの作成・提供をするとともに、メディア、航空会社および現場の広報担当者との連絡調整を行う必要がある。
  航空機所有者・運航者
 - ICに対して、搭乗者数と危険物の所在に関する情報を提供する。
 - EOCへ参加する。
 - FAA、NTSB等へ必要な通報・通知を行う。
 - 航空機の搭乗者に対して次のようなサービスを提供する。
・負傷していない搭乗者の移送
・負傷していない搭乗者用の避難施設の確保
・日用品、衣類、通信機器、医療サービス等の提供(必要に応じて)
・犠牲者や搭乗者の友人・家族用の宿泊施設の確保
・搭乗者の状況の追跡
・乗客用の宿泊施設の確保または代替航空機等の手配
 - 法令に従って乗客とその家族への支援計画を実行する。
 - 広報担当者とニュースの配信について調整する。
 - 損傷したり、故障したりした航空機を速やかに撤去する(許可が得られ次第)。
  その他の空港テナント
状況に応じて、それぞれのサービスの提供を継続する。

◆管理とロジスティクス

 このセクションでは、航空機事故に関するサポート要件について記述する。航空機事故の特殊性を考慮した、専門的なリソース、方針、手順といったものについて記述する必要がある。

◆計画の策定と維持

 このセクションでは、航空機事故への対応計画の改訂について記述する。この場合、添付ファイルならびにSOPとチェックリストの策定・更新について記述する。

◆権限と参照先

 このセクションでは、航空機事故に関する法令、規制等について記述する。

● ハザード特有の検討事項

 ハザードが航空機事故である場合のAEPを作成する上で特に検討が必要となる事項は次のとおり。

◆概要

 空港管理者は、航空機事故に対するAEPの策定において周辺地域の緊急事態対応組織と連携して、その計画、対応と復旧の取組みについて調整する。

◆指揮統制

 航空機事故は複雑かつ特殊な性質を有するため、その対応活動を指揮統制するために統合インシデントコマンドシステム(統合ICS)を導入する。これについては空港管理者や航空機所有者・運航者等、航空機の運航に関係するすべての組織が合意して決定することが必要であり、これによりすべての組織の参画と組織間の調整が可能になる。
 AEPでは、指揮統制に関してICSに参画する全ての組織とその機能・権限について具体的に規定する。この場合、対応、調査と復旧という3つのフェーズに分けることが肝要である。なお、空港外の組織がICSに参画する場合には、現場のインシデント指揮所 (ICP)と中央のEOCの機能についても明確にする必要がある。

  対応フェーズ
 航空機事故の現場は危険物の所在地点となることから、すべての対応活動ではARFFおよび危険物処理部門がICSを主導する。事故現場が一般のスタッフにとって安全になったと判断される場合には、ICは対応フェーズから調査フェーズへの移行についての検討を開始する。ただし、負傷者・死者がすべて現場から搬出され、航空機燃料等、危険物が除去・撤去されるまでは、ARFFおよび危険物処理部門が引き続きICSを主導する。
  調査フェーズ
 調査フェーズにおいては、NTSB、FAA等の調査機関がICSを主導する。空港の復旧活動が開始可能と判断した時点で、ICは調査フェーズから復旧フェーズへの移行を決定する。
  復旧フェーズ
 復旧フェーズにおいては、空港管理者がICSを主導する。

◆情報伝達

 航空機事故現場における情報伝達・通信は非常に複雑なものとなることから、AEPには航空機事故への対応に特化した情報伝達・通信機能に関する規定を盛り込む必要がある。その理由としては、消防、救急医療サービス、警察等、対応組織が複数であること、それらの管轄区域も複数にまたがること、地理的条件や気象条件が厳しいこと、騒音レベルが高いことが挙げられる。情報伝達機能に関する検討事項は次のとおり。

  通信ネットワーク
 ICP、EOCを含むすべての組織が通信ネットワークに参加する必要がある。この通信ネットワークは十分な数の無線機、電話(固定および携帯)といった通信機器に、航空会社の通信システム、アマチュア無線、電話会社に用意されている災害現場用の携帯電話を加えたものとすればよい。
  通信の制限
 無線通信や電話通信は必要不可欠なものに限定する。このような措置を取ったとしても、通信量が多くなることは避けられないので、緊急時の通信手順・プロトコルを確立した上で、通信制限に関するトレーニングプログラムを準備・実行することが肝要である。
  航空機とARFF間の通信
 AEPには航空機とARFF間の通信に関する規定を盛り込む。また、ATCTのスタッフは離散緊急周波数を使用できるようにしておく必要がある。
  専用通信車両
 信頼性と機動性に優れた通信システムを構築する上では、発電機等の電源を備えた専用通信車両や移動指揮所を準備しておかなければならない。

◆警報と警告

 AEPには、警報・警告機能に関して次の事項を記述する必要がある。

  空港内外の緊急事態対応組織に対する通報・通知プロセスの実行責任者
 航空機事故については、通常ATCTが最初に認識し、通報・通知プロセスを開始するが、周辺地域の警察署や消防署等、他の組織が通報・通知プロセスを開始しなければならない場合もある。AEPにはこのようなあらゆる可能性を考慮した通報・通知プロセスを記述して、関係者全員がそれについて理解できるようにしておく必要がある。
  通報・通知方法
 通報・通知システムにおいて使用する機器について記述する。具体的には次のようなもの。
 - 緊急電話および直通電話
 - 固定電話
 - 携帯電話
 - ポケベル
 - 無線システム
 - 拡声装置
  バックアップシステム
 メインシステムが機能しない場合を想定したバックアップシステムについて記述する。
  緊急事態の第一報時の情報
 航空機事故発生時の第一報として通報・通知しなければならない項目は次のとおり。
 - 事故の発生場所
 - 航空機の種類
 - 搭乗者数
 - 燃料の残量
 - 緊急事態の種類・状況
 - 危険物の種類、量と場所(ある場合)

◆緊急情報

 緊急情報(EPI)はAEPにおいて非常に重要な部分である。航空機事故に関する情報については、全国メディアを含む報道機関や独自のEPIプログラムを有する数多くの組織から求められることから、EPIに関しては次の事項について規定しておくことが必要である。

 - ニュース配信についての関係組織間の調整
 - 報道関係者の現場へのアクセス
 - 公表する情報の種類・形式

◆スタッフ保護

 AEPには、航空機事故により空港スタッフが危険にさらされる場合に備えて、避難また屋内退避といった保護活動に関する規定を盛り込む必要がある。最も重要な点は、この保護活動の実施を発動する権限について規定することである。

◆警察・セキュリティ

 AEPには、航空機事故への対応に関する警察・セキュリティ部門の活動について記述する。この場合、次の事項を含む必要がある。

 - 現場のセキュリティの確保
 - 相互支援組織からの援助の可能性の確認
 - 緊急車両の事故現場の出入を円滑にするために必要となる交通・アクセス規制ポイントの設置
 - 現場の対応スタッフの識別(IDベスト、腕章等)

◆消防と救急・救命

 AEPには、航空機事故への対応に関する消防・救助活動について記述する。この場合、次の項目を含む必要がある。

 - 滑走路待機場所 (staging area)までのアクセス経路
 - 相互支援協定を締結している緊急事態対応組織への通報・通知内容。具体的には次のようなもの
・事故現場の位置
・アクセス経路
・待機場所と集合場所
・追加の装備とスタッフ
・給水ポイント
 - ICPの特定方法
 - 証拠の保全方法

◆保健・医療

 保健・医療活動については、航空機事故現場と病院に分けてAEPに記述する。

  航空機事故現場
 事故現場における医療サービスの目的は、トリアージ、初期治療、医療施設への負傷者の搬送である。その計画と手順に関して記述する事項は次のとおり。
 - 周辺地域のEOCとの調整・統合方法
 - 指定された医療施設とスタッフへの事故の通報・通知方法
 - 航空機の種類と施設の収容能力
医療サービスは就航している最大航空機の最大搭乗者数を対象とする。
 - 医療サービス支援組織・スタッフのリスト
空港および周辺地域内の救助隊、救急サービス、軍事施設、政府機関のスタッフと装備をリストアップする。
 - 医療コーディネータの指名
医療コーディネータは事故現場で緊急医療活動を指揮し、負傷者搬送責任者と連携して次の事項を担当する。
・相互支援医療サービスと救急サービスへの通報・通知ならびにスタッフが待機場所に到着したことの確認
・負傷者のトリアージ、治療と医療施設への搬送のために必要な措置の段取り
・医療用品の補充の手配(必要に応じて)
・歩行可能な負傷者の判定の支援
 - 負傷者搬送責任者の指名
負傷者搬送責任者は次の事項を担当する。
・病院および医療関係者への通報・通知の確認
・負傷者の適切な医療施設への搬送の指示
・被害者の氏名、搬送先医療施設と搬送機関の記録
・搬送中の負傷者の状況に関する病院への通報・通知
  病院
 AEPには病院における医療サービスに関して次の事項を記述する。
 - 空港および周辺地域において医療サービスが提供可能な病院や医療施設の名称、所在地、連絡先と緊急時の収容能力
 - 空港から病院までの距離とヘリコプターの受入れ能力
 - 病院とICPとの間の通信手段の確保方法(必要に応じて)

◆リソース管理

 AEPには、リソース管理に関して、航空機や危険物の撤去・除去に関係する組織や外部業者を特定するための規定について記述する。

● SOPとチェックリスト。

 航空機事故への対応計画において、SOPとチェックリストに記載する事項は次のとおり。

◆緊急事態の発生前

 空港管理者が自己点検を実施するときに使用するチェックリストに緊急電話回線を含む通信機器の定期テストを含める。

◆緊急事態への対応中

 ARFF、警察、救急医療サービス部門、テナント等の対応活動に関するSOPとチェックリストを作成する。以下にチェックリストの例を示すが、これは一般的なものにすぎず、空港ごとに組織や状況に適したものを作成する必要がある。

  空港運用部門
 - 航空機事故現場へ臨場
 - ICへの報告とICSへの参画
 - 適切なNOTAMの発行
 - FAA、NTSB等への適切な通報・通知
 - 緊急事態対応チームへの通報・通知と活動の確認
 - 負傷していない搭乗者の退避場所への移送状況の確認
 - 現場のセキュリティ・エスコート活動のモニタリング
 - EOCへの定期的な情報提供
 - リソース追加の必要性の査定
 ★  警察・セキュリティ部門
 - ICSへの参画
 - 現場のセキュリティの確保
 - 交通・アクセス規制計画の実施
 - 相互支援リソースの活用
 - 現場のセキュリティ・エスコート活動のモニタリング
 - 緊急車両の配置の支援
 - あらゆる調査への協力(必要に応じて)
 - 証拠保全への協力

◆緊急事態発生後

 復旧活動は、航空機事故の重大性、被害の規模、被害を受けた施設・機器およびリソースの可用性によって異なったものとなる。

  状況分析チームの編成
 適切な空港の部門、テナント等から構成される状況分析チームを編成する。チームは次の事項について分析する。
 - 被害状況の定期的な査定
 - 航空機事故対応計画の策定
長期および短期的な分析事項は次のとおり。
・被害状況の最終的な査定
・情報の公表
・インフラの補修
・リソースのリスト化と補充状況
・費用
・実施した措置
・スタッフの勤務状況ならびにストレスの状況(必要に応じて)
・機器の使用状況
・がれき等除去活動・清掃活動
・AOAの検査
  適切なNOTAMの発行
  対応活動全体の評価
 対応活動全体を評価して、得られた教訓を計画およびトレーニングプログラムに盛り込む。

 

注)

* ARFF(航空機救難消防)指数。航空機の機体の長さと1日当たりの出発便数に基づいて算定される。当コラム第25回 「空港の安全性に関する自己点検」参照

 

参考資料
Airport Emergency Plan, AC 150/5200-31C, FAA,2009.

(続きは次回)

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