八谷好高客員研究員(SCOPE)
空港インフラ計画の重要なコンセプトは、空港の容量を十分にし、安全性に悪影響を及ぼすことなく、運用効率の最適化を図ることです。また、空港インフラ設計における重要な因子は、従来安心・安全の問題に係るものでしたが、徐々に運用効率と環境保護がそれらと同等レベルのものになってきています。計画・設計のいずれにおいても、ICAO、国、地域等による規制を遵守しなければならないのは当然ですが、土地利用計画、横風、騒音、環境、経済性といったものによる制約を考慮しなければなりません。
滑走路の安全性を向上させるための、滑走路、誘導路等の空港インフラの計画・設計に係る事項として、空港マスタープラン、インフラの新設設計、既設インフラの計画・再設計、誘導路名称に関する規則、ストップバー、視覚補助施設、滑走路端安全区域について、次のように具体的に記述しています。
空港のマスタープランにおいては以下の事項を明確にすべきである。
マスタープランでは、短期(1~5年)、中期(6~10年)、長期(10~20年)における整備目標を示し、それらの内容について毎年見直して必要に応じて修正し、5年ごとに全面的に評価、修正すべきである。
マスタープランにおいては、次のような事項を具体化すべきである。
滑走路・誘導路の新設設計における主要な目標は、航空機運用の効率性、安全性の確保である。そのためには、滑走路立入(incursion)の危険性をなくすことが不可欠であり、立入防止対策について十分に考慮しなければならない。
立入防止対策における重要な注意事項は次のとおりである。
滑走路への航空機立入の危険性を軽減するために、また空港容量を拡大するために、既設インフラの改良が必要となる場合がある。
ACIの見通しでは航空旅客数は今後20年間で2倍以上に増加するとなっており、空港もこの需要増に対応する必要がある。多くの空港では用地拡張が難しいという現状であるが、航空機の横風時における性能向上に着目して、横風用滑走路を閉鎖して誘導路やエプロンにしている事例もある。
滑走路との離隔が十分ではない平行誘導路にあっては、滑走路立入防止対策を講ずることが必要である。対策の一つとして、滑走路を横切らないように迂回して平行誘導路を配置することが挙げられる。この場合、走行する航空機が滑走路制限表面にかからないようにすることが肝要であるが、空港用地の制約上これが難しいときには、滑走路停止位置マーキング、指示サイン、ストップバーを設置して誘導路の走行を規制すべきである。
誘導路名称の付与方法については、次のような単純かつ論理的な方法が必要である。
「Never cross RED(赤色を越えない)」という原則もあり、ストップバーは、航空機・車両による滑走路立入を防止するための最も重要な対策となっている。ストップバーについては、ICAOは視界不良時の空港運用対策として設けることを勧告しているが、ACIは交通量、視界の状況を考慮の上、滑走路新設時にはすべての滑走路停止位置に設けることを勧告している。
気象条件によらず常時作動しているストップバーは、効果的な滑走路立入防止対策として、航空機パイロットと車両ドライバーに非常に大きな安全上の利益をもたらしている。
● マーキング
滑走路の立入防止を図るための最善かつ最も簡単な方法は、すべての滑走路進入地点に滑走路停止位置マーキングを設けることである。図には一連のマーキングを示している。
● サイン
すべてのサインは、それぞれのサインの機能を明確に表す色により塗装する必要がある。具体的には、指示サインには赤と白を、案内サインには黄と黒を使用しているが、これは他の交通輸送システムにおける色に関する規則を踏襲している。サインとしては次の4種類がある。
● 地上照明施設
滑走路運用に関する照明施設はICAO規準に適合するものでなければならない。
滑走路への立入防止の強化策として、ACIは先進型地上走行誘導管制システム(A-SMGCS、 Advanced Surface Movement Guidance and Control Systems)* を検討することを勧告している。A-SMGCSに基づくストップバーの設置とその24時間作動はより経済的かつ効果的な対策となろう。
滑走路端安全区域(RESA、 Runway End Safety Areas)は、航空機が滑走路をオーバーランまたはアンダーシュートした場合に、航空機の損害の危険性を最小にする目的で設置する滑走路両端部の区域である。RESAは、コード番号が3、4の滑走路(長さ1、200m以上)とコード番号1、2の計器着陸用滑走路(長さ1、200m未満)で必要である。
RESAの最小の長さ(縦断方向)は、コード3、4の滑走路、コード1、2の計器着陸用滑走路の着陸帯の末端から90mである。幅(横断方向)は、滑走路中心線の延長線の左右対称で、最小でも滑走路幅員の2倍、通常着陸帯と同一幅とすべきである。
滑走路を新設する場合には、以下のとおり、縦断方向により長いRESAを整備することをICAOは勧告している。
RESAとしての十分な長さが確保できない場合は、アレスティングシステム(航空機拘束システム)を代替策として設置することも可能である。
注)
*先進型地上走行誘導管制システム:空港面監視レーダーなどと視覚援助施設を連接して航空機の地上走行を誘導・管制するシステム。視程条件、交通密度、空港の形状の複雑さにかかわるすべての環境下で空港内の航空機と車両を安全で秩序正しく、かつ効率的な移動を支援することを目的としている。
(続きは次回)