第50回 「サステナブルエアポート (11)」 ~2022.07.01~
八谷 好高 客員研究員(SCOPE)
今後回復から増加が期待される航空需要に対応するために必要となる空港のあり方について考察を進めています。空港のサステナビリティプログラムに関して米国で実施されたアンケート調査の一環として、15空港に対して行われた個別アンケートの結果を前回に引き続き紹介します。
● 空港サステナビリティプログラムの事例
事例7:ノースウエストアーカンソー空港(アーカンソー州)
◆状況
ノースウエストアーカンソー空港 (XNA)は、ベントンビル市等、5市と2郡により設立された。XNAはアーカンソー州北西部の中心部に位置し、上記いずれの地域にも近いものとなっている。また、人口密集地区からは十分に離れているため、航空機の運航による影響を最小限のものとできている。
◆推進力
推進力としてはFAAによる資金提供が重要である。また、空港管理者がより効率的で持続可能な運営を望んでいることも推進力となっている。
◆定義・ビジョン
XNAは、経済的に健全で、周辺地域の経済成長を促進し、環境に関するサステナビリティを確保し、さらには社会的責任を果たした上で、安全でかつ効率的な運用ができることをビジョンとしている。
◆計画
XNAは、コスト、エネルギ消費量、スタッフの労働時間を削減し、利用客の満足度を向上させることを目標に、サステナビリティを備えたマスタープランを完成させる予定である。
◆支援策
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FAAからの資金提供 |
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空港各部門、航空会社、FBOおよびテナントを含む利害関係者の関与 |
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アドバイザとしての活動、地域計画策定への協力、一般向けWebサイトの作成といった、地域コミュニティに対する支援 |
◆障害
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サステナビリティイニシアチブのモニタリングや利益・コストの計測等を担当するスタッフの不足 |
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過去にサステナビリティを考慮せずに建設した建築物 |
◆重点分野
◆イニシアチブ
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滑走路更新時に舗装材料をリサイクルする。 |
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エネルギ効率の高い照明器具を導入することにより電力消費量を削減する。
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トイレの節水化、ハンズフリー化を図る。 |
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利用状況に応じた旅客ターミナルビル内の温度調整の細分化、外部換気方式の導入等、空調システムを更新する。 |
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ターミナルビル内の温度設定方法を見直す。 |
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ターミナルビルの空きスペースを公共用会議室やヨガルーム等として利用する。 |
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ターミナルビルにゲーム用スペースやテーブルを設ける。 |
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利用客用のカートサービスとバレーサービスを開始する。 |
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ターミナルビルと駐車場の間を対象にXNAロゴ付きの傘の無料貸出を開始する。 |
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長期債務を整理して年間返済額を削減する。 |
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プロジェクトの優先順位・資金調達方法を決定するために財務分析を実施する。 |
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空港外へ排出する雨水を集水して検査することにより、絶滅危惧種の魚類を保護する。 |
◆得られた知見・教訓
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イニシアチブの経済的見返りについて検討する必要がある。
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施設の大規模改修・新設時はサステナビリティプログラムを導入する好機である。 |
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製品の耐用期間や経済性は宣伝どおりのものではない。 |
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イニシアチブの効果の計測には長時間を要する。 |
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資金調達時にはサステナビリティの必要性を明確にする。 |
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施設・設備が耐用期間に到達する前に改修・更新等の対策を検討する。 |
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サステナビリティプロジェクトについて十分に検討し、適切な実施方法を検討する。 |
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外部にあるリソースや過去の知見を調査する。 |
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スタッフの経験や試行結果に関する知見を活用して、サステナビリティを確保した空港運用を実現する。 |
◆特記事項:資金の確保
XNAは、ビジョンを実現するために、次の目標を掲げている。
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安全性と利用客の満足度の高い基準を確立する。
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効率の高い運用基準を確立する。 |
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環境に対する責任を果たす。 |
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地域コミュニティに経済的・社会的に有益なリソースを提供する。 |
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利害関係者と良好なパートナーシップを構築する。 |
主な重点分野は次の通り。
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第一義的分野:資金管理、エネルギ、温室効果ガス、空港施設の運営・維持管理、廃棄物管理・リサイクルおよび建設工事のマネジメント |
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第二義的分野:水質、大気質、コミュニティとの関係性と教育、野生生物生息地 |
事例8:アウタガミ空港(ウィスコンシン州)
◆状況
アウタガミ空港 (ATW)は、2本の滑走路ならびに多数の誘導路とエプロンを有する。また、ターミナルビル等の建築物は29棟を数える。空港用地は、約7百万m2の広さがあり、将来の拡張に十分対応可能である。ATWにおける航空機の年間運航回数は25万回以上であり、FedExの貨物取扱いのほか、種々のGAの運用にも対応している。空港関連のスタッフは2、400人以上に上る。
◆推進力
電力、水道等のユーティリティに関するコストの増加と航空業界の不安定化を背景にして、ATWはイニシアチブを開始することとし、2008年には建築物のエネルギ消費量を調査し、太陽光発電・太陽熱利用システムの採用、エネルギ消費量の多い機器の更新、エネルギ効率の高い照明や感知センサの設置等、種々の取組みを行っている。
◆定義・ビジョン
サステナビリティを実現することにより、現在の世代は、将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現在の世代のニーズを満たしつつ、環境の保全、天然資源の保護、社会の進歩、安定した経済成長と雇用の促進を図ることが可能となる。
◆計画
ATWはサステナビリティを備えた空港マスタープランを2012年に作成している。マスタープランにおけるイニシアチブは、ターミナルビル等建築物の更新、エネルギ効率の向上、再生可能エネルギの使用という3種類の手法を組み合わせることにより、建築物のエネルギ消費量を2030年までに70%削減するという方策の実現に注力したものとなっている。これにより、エネルギ需要の50%が再生可能エネルギによってまかなわれ、温室効果ガスの年間排出量が85%削減される。
◆支援策
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空港管理者のサポート |
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FAAからの資金提供 |
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コンサルタントの活用 |
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テナントや地域コミュニティの強力なサポート |
◆障害
◆重点分野
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エネルギ消費量の削減 |
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スタッフ向けプログラムの充実 |
◆イニシアチブ
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2030年までにカーボンニュートラルを達成する。 |
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駐機時に航空機エンジンを停止できるように、地上電源設備等を整備する。 |
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ボーディングブリッジにタイマ付きヒーターを設置する。 |
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ターミナルビルの屋上にソーラーパネルを設置する。 |
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施設・設備の効率化によりエネルギ消費量を削減する。 |
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FBOビルのネットゼロエネルギ化に取り組む。 |
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空港のエネルギ消費量とCO2排出量のモニタリングを実施する。 |
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スタッフ向けの各種プログラムに取り組む。 |
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リサイクルおよび廃棄物の状況をモニタする。 |
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廃水の管理システムを開発する。 |
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雨水の有効利用、設備の節水化に取り組む。 |
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物資の調達方法を見直す。 |
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冷暖房システムの運用コストを削減する。 |
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空港用地内に在来種の植栽を導入する。 |
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電気自動車の使用等、地上交通システムを見直す。 |
◆得られた知見・教訓
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サステナビリティを実現するという目標を決定し、その方向性を定めるためには、包括的なサステナビリティプログラムが必要である。 |
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モニタリングの実施やサステナビリティプログラムの策定には、コンサルタントを活用することにより時間とコストの両方を節約する。 |
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FAAと地元の両方から資金を調達する。 |
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予算に制約がある場合には、難易度を考慮してイニシアチブの優先順位を検討する。 |
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サステナビリティプログラムとプロジェクトについては、ライフサイクルを確認して、長期的なデータを収集することにより、その実効性を確認する。 |
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イニシアチブの実施結果を記録として残し、将来のプロジェクト計画の策定に資する。 |
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資本改善計画とサステナビリティプログラムをリンクさせる。 |
◆特記事項:大規模ハブ空港のリソースの活用
マスタープランに従い、ATWは、旅客ターミナルビルの南側にGA用ターミナルビルを整備した。この設計には、LEED* 認定を取得し、ネットゼロエネルギを実現できるように、以下のエネルギ効率化方策を取り込んでいる。
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地熱利用による暖房・冷房 |
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床暖房・床冷房 |
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屋上ソーラーパネル |
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高性能遮熱ガラス |
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断熱資材 |
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センサ付き照明・設備システム |
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自然換気システム |
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再生水用の雨水集水システム |
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省エネ型電気・機械設備システム |
事例9:ポートランド国際空港(メイン州)
◆状況
ポートランド国際空港 (PWM)は、ポートランド市により管理・運営されており、45人のスタッフを雇用している。ポートランド市は、PWMの物資調達プロセスを管理し、運営方針と手順を制定し、最終的な意思決定者としての機能を有している。
◆推進力
空港周辺地域のコミュニティは空港が環境へ及ぼす影響への関心が高く、FAAや国・州の環境部局も空港とその周辺の環境に注視している。PWMはFAAからの資金提供を受け、サステナビリティを備えたマスタープランを実現するためのプログラムに取り組んでいる。
◆定義・ビジョン
サステナビリティについては、必要なものだけを使用し、その分を補充・交換するとの考えに基づき、経済的実行可能性、環境へのインパクト、社会・組織に対する影響に関して定義する必要がある。
◆計画
PWMは、空港全体の目標の設定と課題解決策の策定を容易にするために、マスタープランの開発を積極的に進めている。2014年にはその開発に着手し、最初に短期的な目標を有するプロジェクトに取り組んでいる。
◆支援策
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FAAからの資金提供 |
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空港管理者の積極的な協力 |
◆障害
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地方自治体のサステナビリティに関する認識不足 |
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煩雑な調達プロセス |
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スタッフのリソース不足 |
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低額の旅客施設使用料 |
◆重点分野
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環境に関するコンプライアンス |
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大気質と温室効果ガス |
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経済的インパクト |
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エネルギ |
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組織構築とガバナンス |
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地上交通システム |
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スタッフ・利用客の管理 |
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廃棄物管理とリサイクル |
◆イニシアチブ
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スタッフから意見や提案を募集する。 |
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環境に関する研修を実施する。 |
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施設・設備の省エネ化を図る。 |
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照明のLED化を図る。 |
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ターミナルビルの拡張プロジェクトにおいてLEED認証を受ける。 |
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地熱システムを導入する。 |
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空港デッキからの市街地に対する光害の防止対策を実施する。 |
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騒音計測を目的として航空機の運航状況をモニタする。 |
◆得られた知見・教訓
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環境に影響を及ぼすことのないイニシアチブを採用し、それに関して資金を調達する。 |
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社会・地域コミュニティを注視しつつ、経済的利益をもたらすイニシアチブを採用する。 |
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行政機関、スタッフ、テナント等からの関与を常に求める。 |
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データを把握して、意思決定を適切に行う。 |
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国、州、地方自治体等からの資金を調達する。 |
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イニシアチブによっては、施設の運用・メンテナンスコストの削減が可能とする反面、温室効果ガス排出量が増加する場合もある。 |
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小規模空港では、教育・トレーニングによりプログラムの実施に関して大きな成果を上げることができる。 |
◆特記事項:特定イニシアチブに基づく包括的プログラムの構築
除氷液の河川への流入規制措置への対応策として、国・FAAからの資金提供を受けて除氷液と融雪水の混合処理システムと貯水タンクを整備している。これにより除氷液の約70%が空港内に貯留できるので、空港から排出される除氷液は許容量の半分以下にできる。当初、除氷液と融雪水の混合液の分離・蒸留は空港外で実施したが、現在は空港内で実施している。リサイクルした除氷液は、別用途向けに販売しているが、航空機向けの再利用についても検討中である。
事例10:レントン空港(ワシントン州)
◆状況
レントン空港 (RNT)は、1922年に建設され、第二次世界大戦中の1943年にB-29生産のために拡張された。1950年代にはボーイング社製の航空機の出荷拠点空港として活用された。
◆推進力
空港管理者は、空港周辺コミュニティの住民の生活とのバランスを取りながら、長期的なビジョンをもって空港を運用するためには、サステナビリティプログラムを開始することが重要であると考えている。
◆定義・ビジョン
サステナビリティは、経済、社会、環境だけにかかわるものでなく、運用とメンテナンスにも関わっているので、その検討にあたってはあらゆる側面を対象にすることが重要である。特に、空港の場合は、航空機の運航をサポートするという使命を果たし、経済的実行可能性を確保し、長期間インフラストラクチャを維持し、さらにはコミュニティの資産となるように運用する必要があることに留意しなければならない。
◆計画
RNTは包括的サステナビリティマスタープラン (SMP)を2012年に策定し、その目標達成に向けて空港マスタープラン (AMP) を2014年に開始している。
SMPは、日常業務に対応し、競合するニーズのバランスを取ることにより、有効に機能する包括的なプログラムである。その目標は、EONS** に関するサステナビリティ戦略を実施することにより空港の長寿命化を実現することである。
AMPは施設計画であり、施設の建設プロジェクトにSMPを活用することがコスト削減につながることから、SMPのコンポーネントの1つとして位置づけられている。短期的なプロジェクトは、文書化等が不十分なこともあって、サステナビリティを考慮していないととられる恐れもあるが、包括的なプログラムではサステナビリティについて十分に考慮していることが明瞭になっている。
◆支援策
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コンサルタントを活用するためのFAAからの資金提供 |
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知識豊富なFAAのスタッフ |
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利害関係者により構成される空港アドバイザ委員会 |
◆障害
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サステナビリティが環境にのみ関係するという誤った認識 |
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データを収集するためのプロセスの欠如 |
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標準化されたデータセットの欠如 |
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データ収集に関わるスタッフの不足 |
◆重点分野
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空港の財務状況 |
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空港と周辺地域の経済的価値 |
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地域コミュニティへの働きかけと教育 |
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省エネ・温室効果ガス |
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騒音 |
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施設の運用とメンテナンス |
◆イニシアチブ
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滑走路舗装の評価値を30から100に改善する。 |
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排水施設を整備し、タイヤゴムと重金属の流入を防止して空港周辺の河川環境を保全する。 |
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除氷剤の使用量削減と冬季の雪氷対策のために、除雪車両を導入する。 |
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スタッフの労働時間と燃料消費量の削減のために、芝刈り機を交換する。 |
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航空機の安全運航を確保するために、水上航空機用施設の整備と海岸線の復元について計画する。 |
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空港と地域コミュニティの関係を維持・改善するために、学生対象の空港ツアーを実施し、空港アドバイザ委員会を開催する。 |
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空港のキャッシュフローを毎週確認して、経済的健全性を確保する。 |
◆得られた知見・教訓
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サステナビリティプログラムを成功させるには、長期的な目標が必要であり、空港管理者からの理解とコミットメントが欠かせない。 |
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データを収集・追跡するためのプロセスとツールを整備する。 |
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長期間にわたるデータについて、スタッフが正確に整理・記録する。 |
◆特記事項:他空港の成功事例の活用
RNTでは、1950年代以降メンテナンスが十分には行われておらず、2001年当時は最悪とも言える状況にあった。そのような中、新たな空港マネジメントプログラムの整備に取り組み、サステナビリティを実現することを目標として、現状を把握するためにデータ収集を開始している。2012年にはFAAから資金提供を受けてSMPを完成させ、2013年には主要な建設プロジェクトでサステナビリティ戦略を取り入れている。SMPと連携したシステムにより、正確なデータを記録し、イニシアチブのパフォーマンスを追跡できるようになっている。
事例11:レドモンド空港(オレゴン州)
◆状況
レドモンド空港 (RDM)は、オレゴン州中部および東部地域における唯一のハブ空港である。
◆推進力
RDMはレドモンド市により管理・運営されており、2010年に実施されたターミナルビルの拡張では市から資金提供を受けている。このときに、いくつかの短期的なサステナビリティプロジェクトを実施する機会を得ている。
◆定義・ビジョン
サステナビリティは環境のみに関わるものではない。また、多くの環境に関するイニシアチブ、すなわちグリーンイニシアチブはコスト削減につながるとはいうものの、一般的にはメンテナンス等の経済的なイニシアチブが優先される。
◆計画
RDMではマスタープランは整備できているものの、包括的なサステナビリティプログラムは未完成な状態にある。そのため、現在は短期的なサステナビリティプロジェクトを自己資金により実施している。
◆支援策
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地域コミュニティのサポート |
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スタッフと利害関係者の賛同 |
◆障害
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限られたスタッフと予算 |
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プロジェクトの負の費用対効果 |
◆重点分野
◆イニシアチブ
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ターミナルビル拡張部に太陽光を最大限に利用するためにガラスを多用する。 |
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ターミナルビルの屋上にソーラーパネルを設置する。 |
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ターミナルビルのエネルギ消費量をモニタする。 |
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ターミナルビルと駐車場にLED照明を導入する。 |
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トイレにハンドドライヤを設置する。 |
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センサ付き洗面台を導入する。 |
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リサイクルプログラムを実施する。 |
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レストランと協力して、環境負荷を低減する。 |
◆得られた知見・教訓
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地域コミュニティや地方自治体と良好な関係を保つことが不可欠である。 |
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必要な情報をオンラインにて入手する。 |
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社会的側面と同様に、環境的側面がますます重要になっているため、イニシアチブの優先順位は時とともに変化していく。 |
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小規模空港では、経済的側面が重要であるため、イニシアチブはその点においても妥当なものである必要がある。 |
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国・州の環境関連機関等、従来とは異なる資金調達先を検討する。 |
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空港をテーマとする会議は、ネットワーク作りを促進し、アイデア交換を行うための絶好の機会である。 |
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長期的な資本改善計画にはサステナビリティの考えを取り込む。 |
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組織内のセクショナリズムを排除する。 |
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ソーラーパネルの導入といったグリーンイニシアチブでは、設置・メンテナンスのコストとライフサイクルについて十分に検討する。 |
◆特記事項:効果的な騒音管理
RDMの目標の1つは、利用客の空港での滞在をより快適なものにし、航空機利用客以外の来訪者を増加させることである。そのためには、今後も周辺地域との関係を良好に保って、十分な支持を受けることが不可欠であり、電子ネットワーク等いろいろな手段により地域コミュニティとのさらなる交流を図る必要がある。
事例12:テターボロ空港(ニュージャージー州)およびスチュワート国際空港(ニューヨーク州)
◆状況
テターボロ空港 (TEB)とスチュワート国際空港 (SWF)は、ニューヨーク・ニュージャージー港湾公社 (PANYNJ)によって管理・運営されており、PANYNJの5つの空港から成る空港ネットワークの重要な部分を形成している。TEBはこの地域の予備空港としての、またSWFは後背地であるミッドハドソンバレーへの玄関口としての機能を有している。なお、TEBは2010年にFAAのサステナビリティパイロットプログラムの対象空港として選定されている。
◆推進力
PANYNJは、空港に対する長期的なリスクを評価し、空港と地域コミュニティとの結束を強めるためにはサステナビリティプログラムの実施が不可欠であると考えている。
◆定義・ビジョン
サステナビリティプログラムは、空港の全体的なビジネス目標を達成し、経済的ニーズと環境的および社会的目標のバランスをとるのに役立つ。PANYNJは、空港における一般的なサステナビリティの定義 (EONS)を採用し、空港の運用と施設に関して次の目標を設定している。
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空港施設からの温室効果ガス排出量の削減(2006年のレベルから2050年までに80%削減) |
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空港・港湾事業からの温室効果ガス排出量ゼロ(ネットゼロ) |
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スタッフ、テナントの積極的な関与による温室効果ガス排出量の削減 |
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気候変動への適応戦略の開発 |
◆計画
SWFでは2010年から環境に関するサステナビリティプログラムを実施し、継続的に更新している。TEBでは、2012年からサステナビリティを考慮したマネジメントプログラムを実施している。これを包括的なものとすることにより、あらゆるレベルにおいてスタッフがプログラムの意思決定に参加できて、リソースを最適な状態で使用できるようになる。
◆支援策
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すべてのイニシアチブの選定理由の明確化 |
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サステナビリティに関する空港全体の意欲 |
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サステナビリティプログラムの実施に成功している他空港の事例 |
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サステナビリティ実現に対する高レベルの組織的および施策的支援 |
◆障害
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サステナビリティプログラム策定時の現場スタッフの関与 |
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サステナビリティプログラムは環境分野に限定されているとの誤った認識 |
◆重点分野
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気候リスクの軽減 |
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大気質の改善 |
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コストの削減 |
◆イニシアチブ
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TEB
✓重要なインフラに対する気候変動の影響を検討する。
✓地域コミュニティのイベントや就労説明会を開催する。
✓空港の運用効率を改善する。 |
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SWF
✓リサイクルプログラムを整備する。
✓イニシアチブに関して地元企業と協力する。
✓施設全体のエネルギのモニタリングと施設の改修を実施する。
✓代替燃料自動車を利用する。
✓高反射率塗装を施した屋根材と透水性舗装を採用する。
✓除氷液の回収と処理を実施する。
✓地域コミュニティの空港へのさらなる関与を働きかける。 |
◆得られた知見・教訓
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サステナビリティプログラムは、次の事項を実現するための方策である。
✓サステナビリティ実現に向けた取組みについてのスタッフの認識の向上
✓種々の取組みのイニシアチブとしてのグループ化
✓すべてのレベルでサステナビリティを取り込んだ意思決定フレームワークの開発 |
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サステナビリティは、最終的によりよい結果を得るためのツールとして、また利益をもたらす原動力として捉えることができる。 |
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利用客に対して効果的にサービスを提供するために、サステナビリティプログラムを整備して、空港のビジネス戦略とサステナビリティを融合させる。 |
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地元の利害関係者との間でワークショップを開催する。 |
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プロジェクトについては可能性のあるものをすべて検討し、実用性とコストに基づいて取捨選択する。 |
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リサイクルについては、廃棄物の現状把握から開始する。 |
◆特記事項:カーボンニュートラルへの取組み
小規模予備空港におけるイニシアチブは、規模の大きい空港におけるイニシアチブのテストケースとなる。たとえば、航空機の運航管理、空港施設の運用管理といったものに関して新しいイニシアチブを実施することで、そのリスクを判断することが可能となり、他の空港においてイニシアチブを大規模に実施するための最良の方法を決定できる。
(注)
* Leadership in Energy & Environmental Designの頭字語。空港インフラのマネジメントを考える 第45回 「サステナブルエアポート (6)」参照
** Economic viability, Operational efficiency, Natural resource conservation and Social responsibilityの頭字語。空港インフラのマネジメントを考える 第45回 「サステナブルエアポート (6)」参照
参考資料
Lessons Learned from Airport Sustainability Plans, ACRP Synthesis 66, Transportation Research Board, 2015.
(続きは次回)
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