[SCOPE] 一般財団法人 港湾空港総合技術センター

  • Googleロゴ

    

コラム

第40回 「サステナブルエアポート (1)」  ~2020.11.2~

八谷 好高 客員研究員(SCOPE)

  

 空港は、高速性のメリットから今後回復から増加が期待される航空輸送の需要に対応しなければなりません。これを可能なものとするために必要となる空港のあり方、すなわちサステナブルエアポートについて考察を進めていきたいと思います。その第一回となる今回は、国連サミットで採択された持続可能な開発目標とそれに関する航空セクターの活動状況について紹介します。

 

● 空港におけるサステナビリティ

 サステナビリティ(Sustainability、 持続可能性)は、人間の生存と幸福に必要なものはすべて自然環境に依存しているという原則に基づき、人間と自然が共存できる、現在および将来の世代の社会的、経済的および環境的要件を満たす状況を創造し、維持するための取組みと捉えられる。このサステナビリティは、国連により17個の「持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals, SDGs)」として具体化されている。
 航空セクターは、近年のテロ行為、感染症パンデミックの脅威や世界的な不況の影響を受けており、結果として、空港はより少ない予算、限られたスタッフで信頼性の高い運用をすることが求められている。同時に、地球環境を改善するための新しい目標が航空セクターに対して設定され、その達成が当然のことながら空港にも求められている。このような状況下で、空港は航空輸送の今後の需要増に対応できる計画を立案する必要がある。そのため、コスト管理を徹底するとともに、将来にわたっても環境への影響を抑制するという目標を追求しながら、空港、さらには航空セクター全体の持続的な成長を可能にする戦略が必要となっている。

● 国連の持続可能な開発

 1960年代以降、地球規模での環境悪化を示す事例が増え、開発が地球の生態系と人間の福祉に影響を及ぼしていることについて国際社会に対して警鐘が鳴らされてきている。

◆国連人間環境会議
 1972年にスウェーデン・ストックホルムで開催された「国連人間環境会議」において、経済開発と環境悪化との関係が初めて国際的な議題として取り上げられ、会議終了後に「国連環境計画 (United Nations Environment Programme, UNEP)」が設立された。その後、様々な国際的組織が設立され、全世界の環境資源を保護する一方で、現在および将来の世代のために経済的福祉をもたらすような、新しいタイプの開発の必要性が認識されるようになった。

◆国連環境開発会議
 1992年にブラジル・リオデジャネイロで開催された「国連環境開発会議(地球サミット)」では、持続可能な開発、すなわち、将来の世代の欲求を満たしかつ現在の世代の欲求も満足させるような開発を、人権、人口、社会開発、人間居住の問題と結びつけ、人間と地球のために包摂的、持続可能で、強靭な(レジリエント)未来を築くことが提唱された。この目標を達成するためには、三つの核心的要素、すなわち経済成長、社会的包摂、環境保全を個人と社会の福祉のために必要な要因として、それらの調和を図ることが不可欠とされた。地球サミットでは、27の原則から成る「リオ宣言」について合意され、これを実行するための行動計画である「アジェンダ21」についても併せて合意された。アジェンダ21は、社会的・技術的側面、開発資源の保護・管理、主要グループの役割強化、実施手段の4つのセクションから成っている。

◆国連ミレニアムサミット
 2000年に米国・ニューヨークの国連本部で開催された「国連ミレニアムサミット」では「ミレニアム宣言」が承認された。この宣言において示された「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals, MDGs)」は、2015年までに達成すべきという期限を定めた、貧困を緩和し、貧しい人々の生活を改善するためのフレームワークである。MDGsは、計測可能な8項目の目標であり、具体的には、貧困と飢餓の撲滅、初等教育の完全普及、ジェンダー平等推進・女性の地位向上、乳幼児死亡率の削減、妊産婦の健康改善、エイズ等疾病の蔓延防止、環境の持続可能性確保、開発のための地球規模のパートナーシップの推進である。

◆国連持続可能な開発会議
 1992年の地球サミットから20年目となる2012年に、「国連持続可能な開発会議 (Rio+20)」がブラジル・リオデジャネイロで開催された。この会議では、持続可能な開発目標の達成やグリーンエコノミーの構築、MDGsからSDGsへの移行等についての議論がなされた。

◆国連持続可能な開発サミット
●持続可能な開発のための2030アジェンダ
 地球サミット、国連ミレニアムサミット等による成果を踏まえて、2015年に米国・ニューヨークの国連本部で開催された「国連持続可能な開発サミット」では、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択された。これは、MDGsの中で達成できなかった項目に引き続き取り組むとともに、経済、社会および環境における持続可能な開発目標の達成を目ざすものであり、一つの「宣言」、2030年までに達成すべき「17の目標」、グローバルパートナーシップの活性化も含めた「実施手段」および「レビューとフォローアップのためのフレームワーク」から構成されている。
●持続可能な開発目標
 上記の17の目標は、期限を定めた計測可能な「持続可能な開発目標 (SDGs)」として知られ、2030アジェンダの中核をなしている。この開発目標においては、貧困を解消するためには経済成長を促進し、教育、保健、社会的保護、雇用の機会等、広範にわたる社会的ニーズに取り組むとともに気候変動や環境保護の問題にも取り組む必要があると認識されている。この目標は、普遍的なものであり、先進国、開発途上国、中所得国を問わず、すべての国に適用されるが、その一方でその達成内容については国力の違いも考慮される。SDGsについては、図-1・表-1に示すとおりである。

 

 

● 航空セクターの持続可能な開発への取組み

 持続可能な開発に関する航空セクターにおける取組みについて、国際民間航空機関 (ICAO)* は次のとおり明らかにしている。

◆国連環境開発会議時点における環境問題への取組み

 ICAOは、1992年の国連環境開発会議直後に発行した機関紙「ICAO Journal」において、航空セクターが航空輸送産業や国連専門機関といった国際的組織と協同して環境問題に取り組んでいることを明らかにしている。これは、航空機騒音、空港周辺地域の大気汚染、地球規模的課題、空港・航空廃棄物、航空機アクシデント・インシデント、空港・インフラの建設、空港周辺の水・土壌汚染の7つに分類される。
 このうち、航空機騒音については、航空機の運航数が増加してはいるものの、低騒音型航空機の導入が進んでいる状況にあり、また空港周辺地域の大気汚染については、航空機エンジン排出物も含めて、他のインフラや都市ほど深刻なものではない状況であるとしている。このほか、地球温暖化やオゾン層破壊といった地球規模の環境問題については航空セクターの関与はほとんどなく、また航空機を含めた空港からの不要物・廃棄物の排出問題については他のインフラの場合と大きな違いはなく、さらに航空機のアクシデント・インシデントによる火災等の問題についても航空機へ適切な対策を講ずることによりほとんど生ずることはないとしている。ただし、既存空港の拡張も含めた空港・インフラの建設は地盤侵食や地下水、動植物への悪影響をもたらし、また空港運用時に使用される融雪剤等の化学物質や航空機の運航・メンテナンスに使用されるオイル等の有害物質は適切に処理されなければ空港周辺地域を汚染する恐れがあるとの認識を示している。
 なお、初めに挙げた航空機騒音と大気汚染は航空セクターにおける主要な環境問題ではあるが、国連環境開発会議では、後者、特に航空セクターを含めた交通輸送セクター全体におけるエンジン排出物による大気汚染について大きな関心が示された。

◆国連持続可能な開発会議時点における航空セクターの持続可能な開発への取組み
 2012年に開催された国連持続可能な開発会議で、ICAOは、持続可能な開発に関する課題解決における航空セクターの役割と取組み状況について報告している。
●重要な課題解決における航空セクターの役割
 航空セクターは、持続可能な都市、災害への備え、雇用、貧困緩和、エネルギー、財源等、多くの課題への取組みにおいて重要な役割を果たしており、これらすべての分野でグリーンエコノミーの発展を支援するという国際的ガバナンスの確立に向けて次のとおり大きく貢献している。
• 持続可能な都市
 持続可能かつ効率的で統合された交通輸送システムは持続可能な都市の実現に不可欠であり、インターモーダル(複合一貫)輸送は雇用創出、事業開発、レクリエーション、文化活動等を活発化するとともに、都市・地方間の航空によるコネクティビティを確保することにより既存の交通輸送システムの能力・施設をより効率化できる。
• 災害への備え
 国、地方自治体や様々な人道支援組織が緊急事態へ対応したり、救命任務を遂行したりする場合には、航空セクターのタイムリーな支援が不可欠である。緊急事態下においては、航空輸送の高速性と信頼性の確保が食料、医薬品やスタッフ等をタイムリーに輸送する上で重要である。
• 雇用と貧困緩和
 航空セクターは、産業、旅行、観光といった分野にとって不可欠であり、直接的・間接的に多くの人々に雇用の場を提供している。また、若者等に対して教育や専門的なトレーニングの機会を数多く提供しており、高いレベルの仕事へ就くための支援をしている。
• エネルギー
 航空セクターは、さまざまな代替エネルギーを利用できる地上交通セクターとは対照的に、液体燃料に大きく依存している。再生可能な風力・太陽光発電あるいは水素の使用は、安全性と技術的側面から将来の選択肢として予見できないところではあったが、会議の時点では持続可能な代替燃料としてバイオ燃料をジェット燃料とブレンドした燃料が現実のものとなっている。
• 財源
 一連の規制緩和により航空運賃は徐々に低下し、賃金と生活水準が全体的に上昇したこともあって、より多くの人々にとって航空機の利用が身近なものとなっている。その反面、航空会社の利益率は課税強化等により低下してきている。そのため、CO2排出目標を達成し、気候変動に関する課題に対応するために必要な資金が航空セクター内部に留まらないことが懸念されている。
• グリーンエコノミー
 グリーンエコノミーへの移行は、航空セクターにおける最大の課題の克服を可能とする。これには、消費者からの環境問題解決に向けての圧力と環境に関する規制や施策の強化がその原動力になっている。
• 施策支援ツール
 ICAOの活動成果は施策支援ツールとしてまとめられている。具体的には、航空機の環境認証、航空輸送の規制、市場原理に基づく方策、各国のアクションプラン、新技術、持続可能な代替燃料といった事項に関するものである。

●重要な課題解決に向けた航空セクターの取組み
 持続可能な開発における3つの目標、すなわち社会的、経済的、環境的目標は、いずれも安全で効率的な大量輸送手段を提供するという、世界経済の発展と社会の進歩にとって不可欠な要素である航空セクターに関係している。
• 社会的および経済的目標・課題
 航空セクターでは低炭素技術、環境に配慮した材料、新しい航空機システム、持続可能なエネルギーの使用が増えており、航空セクターはさまざまな持続可能性に関する課題の解決に向けて大きな進歩を遂げている。全世界の空港を接続する航空ネットワークは、大都市と地方都市を結びつけ、人間、物資、サービスの移動を促進している。また、島しょ部や遠隔地への航空輸送サービス、医療・郵便・教育等のサービス、緊急・人道援助、科学研究用のデータ収集等でも重要な役割を果たしている。
• 環境的目標・課題
 航空セクターは、1970年代以降、空港とその周辺地域の騒音と大気質に対する航空機運航の影響や世界的な気候変動等、広範な課題に取り組んでいる。

 具体的には、次に示すような一連の活動を通じて、これらの課題に取り組んでいる。
• 航空機のテクノロジーと運航
 ICAOの騒音・大気質に関する基準が世界基準として採用されている。現在の航空機は、40年ほど前よりも70%燃料効率が高く、また75%静かになっており、さらに航空機の運航に関する新しい手順と技術の採用により燃料消費量が大幅に節約できている。
• 国際的施策の調整
 航空セクターは、全世界におけるCO2排出量を2020年のレベルに安定させながら、年間2%の燃費改善を達成することに合意している。この目標を達成すべく、技術面および運航面の取組みに加えて、国別アクションプラン、持続可能な航空用代替燃料、市場原理に基づく施策と世界的目標 (global aspirational goals)といった4つの主要分野に取り組んでいる。
• 国別アクションプラン
 各国は、航空セクターからのエンジン排出物を削減するためのアクションプランを策定し、自国の状況に合わせた一連の取組みを決定している。ICAOは、世界的目標達成に向けた進捗状況を評価し、各国の支援ニーズに応じて対応している。
• 持続可能な航空用代替燃料
 航空セクターの気候変動に関する戦略は持続可能な航空用代替燃料の使用を基本としている。これにより温室効果ガスの排出量の削減、空港周辺地域の大気質の改善、新たな雇用の創出が可能となり、また新たな燃料生産地の経済的発展と燃料価格の変動抑制にも貢献している。
 多くの航空会社が代替燃料を使用した定期航空便を運航しているが、資源作物の代替燃料と食料供給との競合や代替燃料そのものについての航空セクターと他の交通輸送セクターとの競争が生じている。これは、代替燃料をより広範に使用する上での大きな障害となりかねず、航空セクターの持続可能な成長が阻害されかねない。
• 市場原理に基づく施策
 市場原理に基づく施策は、航空セクターのCO2排出量に関して対費用効果の高いアプローチであると合意されている。しかし、その実施に関しては国により見解が異なるため、国ごとに調整がなされた上で具体的な施策が検討されている。
• 世界的目標
 各国は、航空セクターにおける、2020年からの温室効果ガスの排出量を増加させないカーボンニュートラル成長という中期的な目標に続いて、長期的な目標について模索している。燃料燃焼データの収集や炭素排出量の計算ツールといったものを整備することにより、信頼性の高いデータベースの構築を目ざしている。

◆ICAOの戦略目標と国連の持続可能な開発目標への貢献
●ICAOの戦略目標
 ICAOは、全世界を対象とした民間航空輸送ネットワークを実現するためのグローバルフォーラムとして機能するという任務において、2030年までに倍増が予測されている航空輸送ニーズに対応して、社会的・経済的発展とより広いコネクティビティについてのニーズを満たすために、現在次のような5つの戦略目標を定めている。
• セーフティ
 民間航空のセーフティ(安全)を強化する。主として規制監督機能に重点を置いている。「世界航空安全計画 (Global Aviation Safety Plan, GASP)」を整備して、航空の安全性を高めることを目的として、安全に関する効果的な監督方法と安全管理に関する能力に重点を置いて、航空の安全について、その優先度を決定して、継続的な改善に向けた活動を支援している。
• 航空航法能力・効率性
 航空航法能力を高めて、民間航空輸送システムの効率性を向上する。主に航空航法ならびに空港施設のアップグレードと航空輸送システムの性能の最適化を図ることに重点を置いている。「世界航空航法計画 (Global Air Navigation Plan, GANP)」を整備し、航空航法システムを発展させることを目的として、航空航法について、その優先度を決定して、航空航法計画の高度化に向けた活動を支援している。
• セキュリティ・円滑化
 民間航空のセキュリティ(保安)と円滑化を強化する。航空のセキュリティ・円滑化と国境のセキュリティ・円滑化の確保対策の開発において主体的役割を果たす。「世界航空セキュリティ計画 (Global Aviation Security Plan, GASeP)」を整備し、航空セクターにおける脅威とリスクが増加していることを考慮して、航空セキュリティの向上に向けた活動を支援している。
• 経済発展
 健全で経済的に実施可能な民間航空輸送システムの開発を推進する。経済的施策と支援活動を調和させた航空輸送のフレームワークの構築において主体的役割を果たす。健全で経済的に実施可能な航空輸送システムを発展させることを目的とした「世界航空輸送計画 (Global Aviation Transport Plan, GATP)」を整備するために、すべての国における航空輸送のフレームワークを調和させる長期的なビジョンと目標を提供している。
• 環境保全
 民間航空輸送が環境へ及ぼす影響を最小限に抑える。航空セクターが関係する環境に関する課題解決に向けた活動において主体的役割を果たす。騒音・大気質、気候変動、カーボンオフセット・削減スキームといった、環境保護に向けた継続的な対応方針を示している。
●ICAOの国連の持続可能な開発目標解決に向けた貢献
 上記のICAOの戦略目標は、表-2に示すとおり、国連の持続可能な開発目標 (SDGs)である17個の項目のうちの15個に関係している。

 

 

 上記15個の項目ごとの主たる内容について次に示す。
• 1.貧困
 貧困の解消や緊急事態への対応ができるような、空のコネクティビティとインフラの改善のための資金の拠出を各国に要請している。
• 2.飢餓
 遠隔地へのアクセシビリティの改善とすべての人々への十分な食料供給ができるように、航空輸送サービスの利用促進を図っている。また、無人航空機システム (UAS)の農作物の品質・生産量の向上に資する手段としての活用を推進している。
 航空用代替燃料の原料については、食糧供給との競合回避を図るとともに、生産性・生産量の向上、生態系の維持、気候変動への適応能力の強化を促進することにより、飢餓・栄養失調の解消に取り組んでいる。
• 3.保健
 航空セクターにおける公衆衛生問題の発生防止と管理のための協力体制を構築して、パンデミックといった公衆衛生上のリスクへの対応を図っている。具体的には、伝染病の拡大防止措置としてICAO標準・勧告を策定し、公衆衛生上の国際的緊急事態において民間航空の果たすべき役割、航空機の消毒、公衆衛生対策や伝染病発生に備えた各国の航空計画の確立方法について明らかにしている。
 航空機の騒音やNOx、粒子状物質を含む排出物を規制するICAO標準・勧告を確立して、航空機の運航が空港周辺地域の大気質や公衆衛生へ及ぼす影響を抑制している。また、航空機の運航と健康の関連性やその経済的影響について研究を進めている。
• 4.教育
 ICAO標準・勧告等に関する多くのトレーニングやイベントを計画・実施している。トレーニングとしては様々なテーマに関するものを用意しており、また様々なトレーニングイベントを実施して人材育成策や効果的なトレーニング方法についての検討の場を提供している。このほか、次世代航空専門家 (Next Generation of Aviation Professionals, NGAP)プログラムを主導して、将来の航空輸送システムを運用・管理するためのスキルを有する専門家を育成している。
• 5.ジェンダー
 ジェンダー平等プログラムを整備し、航空セクターにおけるすべての専門職への女性の就業と幹部への登用を促進している。特に、若年層の女性の就業や女性のキャリアアップの機会を提供している。また、ジェンダーに関する意識を高めるためのネットワークイベントを開催している。
• 7.エネルギー
 効率的な航空交通管理を推進することにより、航空燃料の消費効率の向上を図っている。CO2排出量については、航空機交通量や航空管制計画に基づいて燃料消費量から算出して公表している。
 また、「持続可能な航空燃料に関するICAOの2050年ビジョン」を策定して、2050年までに航空燃料をかなりの割合で代替燃料に置き換えることを目ざしている。さらに、航空機用クリーンエネルギー技術の開発を推進しており、電気航空機の開発においても重要な役割を果たしている。このほか、空港におけるエネルギーイノベーションも推進している。
• 8.経済成長と雇用
 航空関連技術のアップグレード・イノベーション、効率的な航空管制サービスの提供による空域容量の増加、航空輸送システムのサイバーセキュリティ方策の基準化、航空セキュリティと国境管理・セキュリティ方策の監督等、より高いレベルの経済生産性の実現を可能とする活動を推進している。
 また、航空輸送規則に関する透明性向上ツール、開発途上国における政策変更による経済的影響の計測ツール等についても開発を進めている。
 このほか、航空セクター向けの新しいグリーンテクノロジーの開発とクリーンエネルギーの改善を通じたグリーンジョブの創出やNGAPプログラムによる航空専門家の確保、航空セクター就業者の職場環境の整備等を推進している。
• 9.インフラ、産業化、イノベーション
 信頼性・持続可能性を有する航空インフラの整備・効率化、航空輸送システムや空港とその周辺地域における安全性の向上、セキュリティ強化や旅客の出入国・貨物の輸出入の円滑化に取り組んでいる。
 また、旅客数・貨物量の管理を通じて、各国の航空輸送インフラを監視し、関連する投資を促進するための指針とツールを提供している。
 さらに、気候変動が航空輸送サービスとインフラに及ぼす影響を明らかにするとともに、気候変動に対するインフラのレジリエンス向上方策を開発している。
• 10.不平等
 航空安全関連のICAO標準・勧告の整備、航空管制の容量・効率の向上、航空セキュリティシステムの強化や出入国・輸出入の円滑化により、すべての国が発展するための平等な機会を持つことを促進している。
 また、消費者保護の原則と課税に関する方針を定めて、機会の均等化と不平等の解消、法律の遵守の促進を図っている。
 このほか、開発途上国に対する資金援助プロジェクトを主導するとともに、民間航空からのCO2排出への対応についての支援とトレーニングを実施している。
• 11.持続可能な都市
 危機対応方針と災害リスク軽減戦略の策定、空域の安全で継続的な可用性の確保、さまざまな気象条件や空域・空港の使用状況下における航空機の出発・到着率の最適化の実現等、安全で持続可能な航空輸送システムの構築を推進している。
 また、空のコネクティビィティの確保を推進し、社会的弱者を含むすべての人々や企業のモビリティを強化できる交通輸送インフラの開発を促進している。
 このほか、環境に配慮した空港に関するガイドラインや航空機のリサイクルに関する方策の作成、先進国と開発途上国が共同で温室効果ガス削減に取り組むクリーン開発メカニズム手法の確立等を実施している。
• 12.持続可能な消費と生産
 様々な種類のデータの管理方法の合理化やビジネスプロセスの最新化を図るとともに、環境に配慮した廃棄物の管理方法を開発して、大気、水、土壌の汚染を防止し、健康と環境への悪影響を最小限に抑える活動を推進している。
• 13.気候変動
 航空機のCO2排出基準を確立して、航空機運航の効率化を図るとともに、CO2排出による環境への影響を抑制するために、様々な方策やツールを整備している。また、持続可能な航空燃料に関するグローバルフレームワークを立ち上げて、情報共有・普及を図っている。
 災害リスク軽減戦略や危機対応方針に従って、緊急事態への迅速な対応を図るとともに、被災した住民に対する緊急支援に重点を置いた危機対応および緊急計画の策定に関して支援を行っている。
• 15.陸上資源
 森林等陸域生態系を持続可能な形で利用できるように、持続可能な航空燃料の開発を推進している。
• 16.平和
 航空セキュリティの評価、リスク分析ツールの作成、新しい脅威とリスクへの対応方針の策定を行うとともに、セキュリティ強化や旅客の出入国・貨物の輸出入の円滑化に取り組んでいる。
 また、航空機追跡システム、紛争地域におけるリスク評価やUASの使用に関するICAO標準や方針の制定を推進している。
 さらに、航空セキュリティ連絡拠点ネットワークや緊急対応計画等を通じて、各国、特に開発途上国における暴力の防止体制やテロリズム・犯罪への対応体制の構築に関しても支援している。
• 17.実施手段
 経済成長に資する航空安全の強化や航空輸送システムの持続可能な開発を推進するとともに、災害リスクの軽減・対応策に関する戦略といった、航空セクターの新たな課題に対応するための活動を主導している。
 空域容量の調整と柔軟性のある運用を通じて空域・空港使用の最適化を推進し、各国が産業界と連携して関連する方策を計画・実施できるように支援している。また、多数のパートナーシップの構築やリソースの活用戦略を主導して、各国の航空機運航能力・効率の改善への取組みを支援している。
 航空セキュリティに関するフレームワークを継続的に改良して、航空輸送システムのサイバーセキュリティ方策の基準化、航空セキュリティと国境管理・セキュリティ方策の監督を行い、各国の航空セキュリティ向上に向けた取組みを支援している。
 各国の観光と貿易を促進するために、健全で経済的にも実行可能な民間航空輸送システムを育成している。また、様々な国際協調を主導することにより、航空輸送による輸出量の大幅な増加を図ることで、開発途上国の発展を促進している。
 環境については、環境レポートを発行するとともに、関係者と協同して航空セクターが及ぼす影響への対応策についてその確立を図っている。また、国際的組織との連携を図って、各国、特に開発途上国の行動計画を支援している。
 様々な課題に取り組む国を支援するために、数多くのパートナーシップを主導するとともに、技術協力・支援プロジェクトのための資金源を継続的に模索している。このほか、技術や資金を共有して、すべての国、特に開発途上国におけるSDGsの達成を支援するためのプログラムである、IPAV (ICAO Programme for Aviation Volunteers)を運営している。

 

注)
* 国際民間航空機関:International Civil Aviation Organization (ICAO)。国際民間航空が安全かつ秩序ある発達をするように、また国際航空運送業務が機会均等主義に基づいて健全かつ経済的に運営されるように各国の協力を図ることを目的として、1944年に採択された国際民間航空条約(通称シカゴ条約)に基づいて、1947年に設立された国連専門機関。2020年7月現在加盟国は193か国に上る。

 

参考資料
・Global Aviation and Our Sustainable Future, International Civil Aviation Organization Briefing for RIO+20, 2012
・Guidebook for Incorporating Sustainability into Traditional Airport Projects, ACRP Report 80, Transportation Research Board, 2012
・ICAO Group Identifies Environmental Problems Associated with Civil Aviation (John Crayston), ICAO Journal, Vol.47, No.8, 1992

 

https://www.icao.int/about-icao/aviation-development/Pages/SDG.aspx https://www.icao.int/about-icao/Council/Pages/Strategic-Objectives.aspx https://www.icao.int/airnavigation/pages/ganp-resources.aspx https://www.icao.int/safety/GASP/Pages/Home.aspx https://www.icao.int/Security/Pages/Global-Aviation-Security-Plan.aspx https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs.html https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/index.html https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/page22_000755.html https://www.un.org/en/conferences/environment https://www.un.org/sustainabledevelopment/ https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/

(続きは次回)

ページの先頭へ戻る

ページTOPへ