八谷好高客員研究員(SCOPE)
今回からは空港舗装インフラの評価を取り上げます。舗装インフラに関する情報は通常インベントリ(一覧表・諸元)の形で整理されます。空港舗装の性能が経時的に低下することから、空港舗装インフラの諸元に含まれるべき情報には舗装の過去および現在の状態に関するものはもちろんのこと、将来予測に役立つものも必要になります。 これらの情報を使用して舗装の状態の評価を行うことになります。
空港舗装の諸元に記載されるデータは、使用可能な予算の下で適切な順序で適切な方法の保全工事を行うというAPMSの根幹をなすものである。舗装諸元に記載されたデータに基づき、ネットワークレベルにおいては舗装状態の評価、保全方策の決定が行われ、プロジェクトレベルにおいては具体的な保全工事の計画・設計が行われる。
舗装アセットは、前回も記したように、ネットワーク、ブランチならびにセクションに細分化される。セクションは、さらに実際の調査・評価の対象となるサンプルユニットに分割される。
セクションは、舗装諸元の基本的構成要素であり、保全方策決定時の基本単位となる。すなわち、保全工事は、他のセクションとは独立して、対象となるセクション単独で行われることになる。そのため、舗装諸元はセクション単位で整理され、それを統括する形でブランチ単位にまとめられる。
舗装諸元のセクション単位のデータには、少なくとも次の項目が含まれる必要がある。
舗装諸元のデータについては、APMSソフトウェアを使用してデータベース化を図ることにより、保存、検索等が容易になる。代表的なAPMSソフトウェアにはPAVERがある(MicroPAVERは元々メインフレーム用システムであるPAVERのPC版)。(Micro)PAVERは、米国陸海空軍、連邦航空局 (FAA)、連邦道路庁 (FHWA)の予算により、米国陸軍工兵隊によって1970年代から開発が進められている、舗装状態指数 (PCI、 Pavement Condition Index)に基づくPMSソフトウェアである。順次種々の機能追加・改善が行われてきており、最新のVer.7では、内部GISに基づく諸元の選定、PCI以外の評価指標の取込み、保全工事実施規準の多様化、データベース項目の追加に加え、ユーザーインターフェースの改善、レポート機能の強化等が図られている。
舗装諸元の具体的な事例として、Gold Beach空港のものを表-1に示す。Gold Beach空港は、米国オレゴン州の沿海部に位置し、小型機の運航が週100便程度の空港である(出典:2011 Pavement Evaluation / Maintenance Management Program)。
注)
・識別子 (Identifier):空港の識別子(2字)
・ネットワークID (Network ID):オレゴン州の空港データベースにおける名称
・ゾーン (Zone):FAA空港コード (FAA Airport Designator)
・セクション分類 (Section Category):気候区分、地域区分、メンテナンス区分に基づく分類。A~Pに分けられる
・機能分類 (Functional Category):オレゴン州のシステム計画に基づく分類。1~5に分けられる
・予算 (Funding Group):空港整備予算の提供元。国家空港総合整備計画 (NPIAS、 National Plan of Integrated Airport Systems)に組み込まれて、FAAの空港改善計画 (AIP、 Airport Improvement Program)により予算が担保されている空港 (NPIAS)とそれ以外の空港 (non-NPIAS)に分けられる
・所有者 (Ownership):空港の所有者。公共 (Public)、州 (State)、民間 (Private)に分けられる
・気候区分 (Climatic Region):空港所在地の気候区分。東部 (Eastern)、中央部 (Central)、沿海部 (Coastal)に分けられる
APMSの一部をなす舗装評価では、舗装特性の現状が的確に評価され、将来使用することを見据えてその結果が保存される必要がある。対象となる事項は、舗装表面の損傷、舗装ラフネス、舗装表面の摩擦、舗装荷重支持力、異物破片の存在である。空港舗装の評価における原則は以下のとおり。
●客観性および一貫性
客観性と一貫性をもった評価により、舗装状態の劣化傾向が正しく把握でき、また、保全方策決定に際して信頼性のあるデータが提供できる。評価を繰返すことによって、舗装状態の経時変化が容易に認識できる。また、検討対象外となっている空港の舗装との比較もできる。
●タイムライン
舗装評価により、保全方策の計画・実行サイクルの決定ならびに工事、特に予防保全工事の実施時期の適正化が図られる。
●長期間のモニタリング
反復評価による舗装状態のデータは、保全工事の必要時期の推定に使用される舗装性能モデルの開発にとって不可欠なものである。また、長期モニタリングデータにより過去に行われた保全工事の評価も可能となる。
●対費用効果
舗装状態のデータの収集には多大なコストがかかる。そのため、データの種類、量および収集頻度は、対費用効果を考慮して決定される必要がある。
●ネットワークレベルとプロジェクトレベルでの評価
ネットワークレベルとプロジェクトレベルでのマネジメントにおける舗装評価の方法には違いがある。すなわち、ネットワークレベルではサンプルユニットについて舗装表面の損傷と表面摩擦の定期的調査が行われるのに対して、プロジェクトレベルではセクション全体における表面状態の詳細評価と荷重支持力評価が行われる。
供用中の空港舗装の状態としては、次の項目が評価対象となる。
●舗装表面の損傷
PCIによる方法が一般的。舗装の状態を7つにランク分けして、保全方法が規定されている
●舗装ラフネス
Boeing Bump Index、国際ラフネス指数 (IRI、 International Roughness Index)といったラフネス指数による方法が一般的
●舗装表面の摩擦
SFT (Surface Friction Tester)等、車両型測定装置による方法が一般的
●舗装荷重支持力
PCN (Pavement Classification Index) – ACN (Aircraft Classification Index)、FWD (Falling Weight Deflectometer)による方法が一般的
●異物破片の存在 (FOD、 Foreign Object Debris)
FOD Potential Ratingによる方法が一般的
舗装状態の評価の対象となる項目に関する米国50空港に対するアンケートの結果を図-1に示した。
舗装表面の損傷はPCIによって評価されている。空港全体の78%では滑走路について定期的に評価が行われており、その間隔は平均で3.4年となっている。その反面、定期的な評価が行われていない空港も10%に上っている。滑走路以外については54%で行われており、その間隔は平均で3.3年となっている。プロジェクトレベルにおいても、ネットワークレベルと同一の評価方法が用いられているが、この場合は、上記のように、サンプルユニットだけではなくセクション全体が対象となっている。
舗装ラフネスについては、空港全体の12%で滑走路の評価が行われており、4%では誘導路の評価も行われている。
舗装表面の摩擦は通常滑走路を対象に評価され、空港全体の22%で行われている。また、8%では誘導路の評価も行われている。
FWDによる舗装荷重支持力評価は主として大規模空港で行われている。空港全体の18%では滑走路を対象にして平均3.7年間隔で評価が行われているほか、誘導路等でも12%で行われている。
FODに関する評価は主要空港では行われていない。
舗装表面に現れている損傷については、一般に、その種類 (Type)、ひどさ (Severity)および範囲 (Quantity)を考慮して評価され、最終的にはサンプルユニットならびにセクションのPCIとして定量化される。
サンプルユニットのサイズならびに評価対象となるサンプルユニットの個数は次のとおり(ASTM D5340)。
PCI算定に用いられる、損傷の種類、ひどさおよび範囲は次のとおり。
●損傷の種類
舗装表面の損傷の種類は、表-2に示すように、アスファルト舗装、コンクリート舗装のそれぞれで、17種類、16種類である。保全工事の必要性を考慮すると、アスファルト舗装での顕著な損傷としては、縦・横ひび割れ、わだち掘れ、ウェザリング(老化・劣化)、ラベリング、面状ひび割れに加え、ジェットブラスト起因の損傷(ブラスト焼け)、油漏れといったものが挙げられる。また、コンクリート舗装では、目地材の損傷、スポーリング(目地部の破損)、目地部の段差、隅角部の破壊(ひび割れ)、線状ひび割れ等が挙げられる。
●損傷のひどさ
損傷のひどさは、ほとんどの種類の損傷において、4つのレベル、すなわち、損傷なし (None)、軽度 (Low)、中度 (Medium)、重度 (High)に分けられる。このレベル分けについては、詳細な説明と写真が用意されており、これらを使用することにより容易に行うことができる。
●損傷の範囲
損傷の範囲は、延長 (ft)または面積 (ft2)により表される。
舗装表面の損傷のデータは、通常、訓練を受けた技術者の徒歩による目視調査によって収集されているが、最近では、車両型測定装置により舗装表面の高精度画像を撮影し、それを定量化することによっても得られるようになってきている。
定量化された舗装表面の損傷の程度に基づいて、PCIは次の方法により算出される。
まず、サンプルユニットのPCI、すなわちPCIsampleが、次式により計算される。なお、式中のCDVは、補正減点値 (Corrected Deduct Value)であり、損傷の種類・ひどさごとの損傷の範囲に基づいて計算された減点値 (Deduct Value)が損傷の種類・ひどさの組合せの個数に応じて補正された値である。
PCIsamle=100-CDV
次に、セクション全体のPCI、すなわちPCIsectionが、セクション内のPCIsampleをユニット面積に応じて重みづけして平均をとることにより得られる。
PCIは、表-3に示すように、0~100の範囲の値として算出され、その値に応じて損傷の程度が評価される。さらに、PCIの値に応じて保全方策が設定されている。
PCIに基づく舗装表面の損傷の評価結果はセクションごと、ブランチごとに整理される。Gold Beach空港を例にとって、PCIの値が含まれた空港舗装アセットについてのレポートとして、表-4にはセクション単位、表-5にはブランチ単位のものを示す。また、PCIによる評価結果をセクション単位で図化したものが図-2である(出典:2013 Pavement Evaluation / Maintenance Management Program)。
注)
・表面 (Surface):舗装構造。アスファルト舗装上のアスファルトオーバーレイ (AAC、 Asphalt Overlay over Asphalt Concrete)、アスファル舗装 (AC、 Asphalt Concrete)、コンクリート舗装上のアスファルトオーバーレイ (APC、 Asphalt Overlay over Portland Cement Concrete)等がある
・ランク (Rank):ブランチ内の相対的重要度。第一 (P、 Primary)、第二 (S、 Secondary)、第三 (T、 Tertiary)に分けられる
以上に示したPCIを用いた舗装表面の損傷の評価方法は、汎用性、客観性および信頼性の点で優れていると認識されている。また、舗装の機能が適切に把握できるとともに、構造健全性についても基本的な情報が得られるとも認識されている。
その一方で、評価の対象となるサンプルユニット数に関する問題点が指摘されている。具体的には、米国空軍での調査事例においてPCIの標準偏差が上記の初期値として示されている値よりも大きい点、セクション全体の損傷状況を詳細に調べた事例においてPCIが同一であっても保全工事の必要箇所数に違いがある点等である。
(続きは次回)
参考資料
・Common Airport Pavement Maintenance Practices, Airport Cooperative Research Program Synthesis 22, TRB, 2011.
・Airport Pavement Management Program (PMP), Advisory Circular 150/5380-7B, FAA, 2014.
・PAVER Version 7.0 User Manual, 2014.
・2011 Pavement Evaluation / Maintenance Management Program, Oregon Continuous Aviation System Plan, Final Report, Oregon Airport System, 2011.
・2013 Pavement Evaluation / Maintenance Management Program, Final Report – Individual Airports, Functional Category 4, Coastal Climatic Zone, 2013.
・ASTM D5340 – 12, Standard Test Method for Airport Pavement Condition Index Surveys, 2012.
・Comparison of United States Air Force PCI Standard Deviation Values to Default Values in ASTM D5340.
・The Use of GPS-Based Distress Mapping to Improve Pavement Management.
以上2件は9th International Conference on Managing Pavement Assets (ICMPA9), 2015.