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コラム

第3回 「NECはどこの国の国内工事にも、国際工事にも対応できる」  ~2013.7.16~

客員研究員 大本俊彦(京都大学経営管理大学院 客員教授)


これから観ていく2次的選択条項の中に、たとえば複数貨幣(Multiple Currencies)に関する条項が含まれているが、この契約条件書は英国内だけではなく、他国内あるいは国際工事でも使用できるよう準備されている。これが英国ビジネスの国際的展開のよい例であろう。現に南アフリカや香港でこの契約条件書の計画的試行が報告されている。

ŸSecondary Optional Clauses

2次的選択条項には18の条項があり(※1)、必要なものだけを採用することになるが、まったく採用しなくてもよい。

▢ Option X1: Price adjustment for inflation (used only with Options A, B, C and D)

労務・材料・機械の物価リスクを発注者がとり、インフレーションによる支払い調整を行うための条項。もしこのオプションが採用されないときにインフレーションのリスクをだれが取るかは以下のようになる。

:Main Optional ClausesのOption A及びOption Bの契約金額は追加支払・工期延長要件にあたる事象(変更補償要件:Compensation events)が起らない限り調整されない。つまりコントラクターは労務・材料・機械の物価変動のリスクを負う。

:Main Optional ClausesのOption C及びOption Dはまず建設コストは発注者がコントラクターに支払うことになっているから、物価増のリスクは発注者が負っていると言える。そのうえで契約上合意しているリスク分担の率に基づいて増額分が当事者に割り振られる。

▢ Option X2: Changes in the law

工事がおこなわれる国における法律の変更により、コストに変更が生じる場合(増・減)の支払いの調整に関する条項。労働者の所得税や法人税の変動は変更補償要件ではない。コントラクターが負担する雇用税や輸入税・関税に関わる法の改変は変更補償要件である。

▢ Option X3: Multiple currencies (used only with Options A and B)

契約通貨以外の通貨による支払いが必要となった場合の交換レート等に関する規定。これにより、為替レートリスクを発注者が負うことになる。

▢ Option X4: Parent company guarantee

親会社がコントラクターを保持している場合、親会社が履行保証を出さなければならないとする条項。たとえば共同企業体(JV)が契約当事者となる場合、発注者がその各構成員から保証を要求する場合もこの条項が該当する。

▢ Option X5: Sectional Completion

部分竣工と引き渡し(支払い・工期・瑕疵担保期間等が伴う)を規定することができる。よくある例はプロセス・プラントにおいて付属建物や外構工事に先立ってプラント本体部分の竣工・引き渡しを行い、コミッショニングを始めるような場合である。

▢ Option X6: Bonus for early Completion

竣工と引き渡しが契約工期以前に行われる場合に、契約で定める1日当たりのレートで計算されるボーナスの支払いを規定することができる。コントラクターに対する早期完成のインセンティブの代表例である。

▢ Option X7: Delay damages

コントラクターの責による竣工遅れによる発注者への損害賠償規定。Liquidated damages(日本語で言う予定損害賠償)のことである。通常、1日の遅れに対して幾らの賠償金を支払うかというレートで表す。

▢ Option X12: Partnering

発注者とコントラクターがパートナリング契約を結ぶことができる。契約の中で協働の方法とそのためのインセンティブの設定が規定出来る。パートナリングについては詳しく後述する。

▢ Option X13: Performance bond

コントラクターから履行保証を入れる必要がある場合の規定。

▢ Option X14: Advance payment to the Contractor

前払い金とその返還保証(ボンド)に関する規定

▢ Option X15: Limitation of the Contractor’s liability for his design to reasonable skill and care

コントラクターが一部または全部の設計を行う場合の設計瑕疵に関して、”reasonable skill and care”を払う義務を満たしていたことが証明できる場合に、コントラクターがその瑕疵の責任を免れることができるという条項。この条項が無ければ英国では注意義務を果たすだけではなく、設計が目的にかなっていること(”Fitness for purpose”)が要求される。日本の法律では設計施工一括受注の場合、コントラクターは設計瑕疵に基づく構造物の瑕疵に対しては全面的に責任を負う。

▢ Option X16: Retention (not used with Option F)

支払い保留金に関する規定。

▢ Option X17: Low performance damages

契約で求められている性能を満たすことが出来ない場合、発注者には3つのオプションがある。1)コントラクターに欠陥の補修をさせる。2)自ら(他の業者を用いて)補修し、コストをコントラクターから回収する。3)欠陥を受け入れ支払いを減ずる。発注者が3)を選択した場合、コントラクターはこの条項に従って損害賠償(Liquidated damages)をしなければならない。たとえば発電プラントにおいて求められた発電能力の98%以上の出力が発揮されれば引き取るが、能力不足0.5%につき幾らいくらの予定損害賠償をコントラクターに課すというような場合である。

▢ Option X18: Limitation of liability

発注者の各種の損害(間接的・従属的・不動産への等々)に関して設けた賠償責任の上限を規定する。特に他の国の法律下においてどのような損害賠償があり、どこまで負う責任があるか完璧に知り得ない状況において、様々な発注者に対する損害賠償の合計に限界を設けるための条項である。これによってコントラクターに一定の安心感を与えることができる。

▢ Option 20: Key Performance Indicators (not used with Option X12)

基本的には発注者・コントラクターがともに利益を享受するような目標を設定し、それが成就されたときにはコントラクターがボーナスを受け取る規定。これはインセンティブを生むことが目的であり、出来なかったからといって罰則を設けるものではない。インセンティブを生むものなら何でもいいが、たとえば、無事故記録など。

▢ Option Y(UK)2: The Housing Grants, Construction and Regeneration Act 1996

この条項と次の条項は英国内の建設に関連する法律。詳しい説明はここでは省く。

▢ Option Y(UK)3: The Contract (Rights of Third Parties) Act 1999

▢ Option Z: Additional conditions of contract

ここで特記条項を定めることができる。

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※1 条項番号がX7からX12にとんでいるのは、最初の版にはあったがその後不要とされたためである。

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