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コラム

第5回 「FIDICよもやま(5)」    ~2020.12.10~

大本俊彦 客員研究員(京都大学経営管理大学院 特命教授)

 

 2020年12月の第2週にこの原稿を書いているが、新型コロナウィルスの感染拡大は終息の兆しも見えない。筆者は現在インドネシア、ミャンマー、マダガスカル、スリランカのプロジェクトでDBメンバーを務めている。今年の2月にマダガスカルのプロジェクトのSite Visit(現場訪問)を最後に今日まで全くSite Visitを実行していない。これはひとえに新型コロナウィルスの感染拡大により通常の国際線航空機が飛んでいないことによる。全部のプロジェクトが全く止まってしまったかというとそうでもなく、工事の状況はプロジェクトごとによってまちまちである。スリランカのプロジェクトはローカルコントラクターが施工しているが、州と州をまたぐ人の行き来、物資の輸送が大幅に制限されており、人手不足、材料不足で出来高がなかなか上がらない。このプロジェクト以外はすべて日本のコントラクターが施工しているが、日本人スタッフ、外国人スタッフが全員国外退去し、プロジェクトが完全に止まってしまったプロジェクト、特殊な工事船舶によって施工される海上工事では平常時に近い出来高を挙げているプロジェクト、コントラクター、エンジニアともに現地にとどまり、コロナ感染の影響を受けながらも工事を続行しているプロジェクト等、その影響の度合いはさまざまである。

 参考のために以下に12月7日現在の新型コロナウィルス感染の状況を米国ジョンズ・ホプキンス大学のデータを用いて表してみた。欧・米に比して日本を含めたアジアでの感染拡大の程度がいかに低いかが見て取れる。

 しかし、ここでこれらのデータの分析をするのは筆者の仕事ではない。今年の3月以降、現場訪問を一度もしていないが、その間ZoomやTeamsといったビデオ会議プラットフォーム上でのバーチャル会議を何度も実施している。また、DBに紛争解決付託があり、Decisionを出すために、バーチャル・ヒアリングも行った。読者の中にはいわゆるテレワークによりバーチャル会議を実行している方も多数おられると考えられるが、ストレスなく効果的に実行できているかお尋ねしたい。以下に筆者がDBバーチャル会議を通じて学んだポイントを皆さんの参考になればよいと考え示した。(ホストと参加者のそれぞれの立場の違いは考慮していない。)

●インターネット環境が良好であることが重要である。途上国のプロジェクトのサイトオフィスが発注者、エンジニア、コントラクターにより使用される場合には、これが確保されることが前提である。
●広い部屋に大勢が集まって参加するのは極力避けるようにすること。相当性能の良いマイロフォンを使用しないといろんな方向からくる声をうまく拾えないし、エコーが入って聞きづらくなる、また、話し手以外の声や雑音を拾うのを避けるためである。
●バーチャル会議は旅行の煩わしさをなくし、時間の節約ができるが、様々なタイムソーンから参加するため、時間の合意が大事である。ヨーロッパやアフリカ、アメリカ、アジアを含んだ会議ではなかなかむつかしい問題である。大幅な時間の延長は誰かに大きな負担をかけることになる。
●DB会議では少なくとも4者(発注者、コントラクター、エンジニア、DBメンバー)が参加する。事前に全パーティーの出席者を明確にすることと、各パーティーを代表してだれが話すか(メインスピーカー)を決めておく。これにより、説明や議論が錯綜することを防ぐことができる。
●議事内容(アジェンダ)をきっちり決めておく。これにより会議が散漫になるのを防ぐことができる。また休憩を適当に入れる計画にしておくことが重要である。バーチャル会議は意外と疲れるものである。
●プレゼンテーション材料を前もって配布しておく。これにより予習が可能になり、プレゼンテーションがよく理解でき、質問が的確になる。
●オフショアー、プラント、橋梁などドローン撮影によるビデオを利用する。これも事前に配布しておく。
●容量の大きいファイルはDrop Boxなどを利用して送付する。
●公開してもよいWebinar以外は録画することを禁止するべきである。記録された映像は他に漏れることを覚悟したほうがよい。特に仲裁やDB付託のヒアリングにおいて録画は厳禁にすべきである。

 上記以外にホストの役割や控室の準備など重要な問題もあるが、どなたかに総合的なプロトコルを作成してもらいたいものである。

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