大本俊彦 客員研究員(京都大学経営管理大学院 特命教授)
前回は21条の21.4 Obtaining DAAB’s Decisionまで述べたので、今回は21.5 Amicable Settlementから21条の最後までについて述べる。
Sub-subclause 21.4.3によって、もしDAABのDecisionが出されてから28日以内にどちらの当事者からもNotice of Dissatisfaction (NOD)が出されなければ、このDecisionは両当事者にとって “final and binding”となる。つまりどちらの当事者ももはやArbitrationに行くことができず、法的にこのDecisionに従わなければならない。
Amicable Settlement副条項はNODが出た場合に当事者がAmicable Settlementをすることを促している。そして1999年版ではNODが出されてから56日以内にはArbitrationを始めることができず、その間Amicable Settlementの試みをする機会を与えている。ただし、Amicable Settlementの試みがなされなくとも56日が経過すればArbitrationを開始することができるとしている。
2017年版ではこの56日という期間が28日と変更されている。これはAmicable Settlementの試みがなされても解決の見通しが全くない場合や、Amicable Settlementの試みが全くなされない場合にいたずらに長期間Arbitrationに行くことができないのが不合理であるという理由から変更されたのであろう。
Arbitrationの規則、Arbitratorの数等について1999年版と2017年版に違いはない。
| (a) | DisputeはInternational Chamber of Commerce (ICC)の仲裁規則(Rules of Arbitration)に従って最終的に決着される。 | |
| (b) | Arbitratorsはこの規則に従って選ばれた3人のArbitratorによって決せられる。 | |
| (c) | ArbitrationはSub-Clause(法と言語)に定められた言語を用いて行う。ただし1999年版では “the arbitration shall be conducted in the language for communications defined in the Sub-Clause 1.4”、2017年版では “the arbitration shall be conducted in the ruling language defined in Sub-Clause 1.4”と表現に違いがある。例えば証拠に用いられている言語の翻訳の必要性などに影響があるのか、実例では重要になってくるかもしれない。 |
Arbitrationに行く前提の記述が2017年版では詳細になっている。1999年版では “final and binding”になっていないDABのDecisionが 最終的にArbitrationで決せられるとなっているが、2017年版ではもう少し詳細に記述されている。次のごとくである。
| (1) | Sub-Clause 3.7.5 [Dissatisfaction with Engineer’s determination]に従うと記述されているが、これはDAABのDecisionが “final and binding”になっていない場合だけではなく、このSub-Clauseに基づいてなされた “Agreement”及び、Engineer’s Determinationにどの当事者も異議を唱えないで “final and binding”になった後それらが実行されない場合、DAABのDecisionを経ないでArbitrationに行くことが許されていることを意味する。1999年版にはこのような記述はない。 |
そして次の3ケースの場合、Arbitrationに行くことができるとなっている。
| (2) | Sub-Clause 21.4.4 [Dissatisfaction with DAAB’s decision] | |
| (3) | Sub-Clause 21.7 [Failure to comply with DAAB’s decision] | |
| (4) | Sub-Clause 21.8 [No DAAB in Place] |
このSub-Clauseの最後のパラグラフは1999年版にはないものでDAABのDecisionの履行について重要な記述がある。つまり、Decisionが一方当事者から他方当事者への金銭の支払いを要求したものであれば、その金額は新たなCertificateやNoticeなしで即刻支払わなければならないと規定している。
1999年版の改訂が最ももとめられていたSub-Clauseである。2017年版の改訂によってDAABのDecisionが “final and binding”であっても、 “binding but not final”であっても、即刻実行されなければ、被害を受けている当事者はDecisionの実行を求めてArbitrationに行くことができる。これによってDecisionが “binding but not final”の場合に、NODを出されてArbitrationに行かないでほったらかしにされるという状況から逃れることができるようになった。この時仲裁廷は “interim or provisional award”や “award”を出すことができるが、その中にDecisionを実行しなかったことによる損害賠償を含むこともできると明記されている。
1999年版ではSub-Clause名が “Expiry of Dispute Board’s Appointment”となっていた。内容は全く同じで、DBが存在しない場合はDisputeが発生すれば直接Arbitrationに行くことができることが保証されている。
DAABに関するAPPENDIX [General Conditions of Dispute (Avoidance/)Adjudication Agreement]、およびAnnex [PROCEDURAL RULES]の考察は次回に行う。
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