大本俊彦 客員研究員(京都大学経営管理大学院 特命教授)
前回からの続き(1999年版ではSub-Clause番号が2017年版のそれより0.1少ない。例えば、2017年版の8.5 Extension of Time for Completionは1999年版では8.4 Extension of Time for Completionとなる。これは2017年版でSub-Clause 8.4 [Advance Warning]が追加されたためである。)
ContractorのEOT entitlementが生じる場面を(a)~(e)で規定している。ただしクレーム条項Sub-Clause 20.2 [Claims for Payment and/or EOT]の要件を満たさなければならない。クレームに関して1999年版のSub-Clause 20.1 [Contractor’s Claims]が2017年版では20.1と20.2に分けて記述されるようになったので、Sub-Clause 20.2をreferしている。20.1と20.2に関してはClause 20で述べる。
ContractorにEOTの権利が発生する理由である(a)~(e)の項目に変わりはないが、記述が変更されたり詳しくなったりしている。
(a) Variation: Variationが出されるときにEOTが合意されているものを除くという1999年版の表現を逆にSub-Clause 20.2に従う必要のないものと表している。
(b) 契約条件書の中でEOT延長権を生じさせる原因を規定している条項がある場合それに従うということに1999年版、2017年版に変わりはない。
(c) 1999年版では単に “exceptionally adverse climatic conditions”と記述されていた。これはどのような天候ならこの条項に当てはまるかという議論が絶えない。そこで少しはこの状態を緩和するために、Sub-Clause 2.5 [Site Data and Items of Reference]あるいはその国で発行されている現場付近の天候データに照らしてみてUnforeseeableだと言える例外的好ましからざる天候と少し幅を狭めたようである。
(d) 伝染病や政府の行為により人材・物資の調達が予期できない程度に不足する場合はEOTの対象となることは1999年版、2017年版ともに同じであるが、「物資」の中に発注者が提供する材料を含む内容となっている。
(e) Employer自身、Employerの雇用者あるいは同じ現場でEmployerが契約している他のContractorに帰する遅延、工事の妨げ等はEOTの権利発生の理由である。
1999年版ではContractorがEOTを要求するときにはSib-Clause 20.1に基づいてNoticeを出すこと、EngineerはEOTを査定する際、それまでに認めたEOTに追加する場合は良いが、それまでのEOTを減いてはならない、とだけ規定している。
2017年版では、以下の2項目が追加されている。
| 1) | BQ Itemの数量が10%を超えた場合は、ContractorにEOTの権利が生じる。反対にBQ Itemの数量が顕著に、例えば10%以上減った場合にはEngineerはこの効果も考慮すべきである、ただしそれらの相殺の結果はネガティブであってはならない。 |
| 2) | 所謂Concurrent Delayが生じた場合は、Engineerは特別条項(Special Provisions)が規定しているとおりにContractorのEOTを査定しなければならない。特別条項がない場合、すべての状況を鑑みて、査定しなければならない。 上記の追加記述について、2017年版の “Guidance for the Preparation of Particular Conditions: Sub-Clause 8.5 Extension of Time for Completion”で以下のような説明を加えている。 Concurrent Delayがある場合のContractorのEOT査定については契約条件書の中に特別条項(Special Provisions)を設けて規定しておくべきである。現在国際的に認められたり通用したりしている標準的ルールや手続きはないのでFIDICとしてこのような条項表現しか出来なかった(ただし、英国のSociety of Construction Law: SCLのDelay and Disruption Protocolによるアプローチが普及し始めてはいるが、)。したがってEmployerは建設プロジェクトの遅延解析、EOT査定等に非常に詳しい経験のある専門家を雇ってこの “Special Provisions”をドラフトしてもらうことを強く推奨する。 |
1999年版と2017年版に相違はない。Contractorがまじめに工事を進めているときに、政府、その他の公共がContractorの工事の妨げになったり、工事に遅延を生じさせたりした場合、その妨げや遅延が予測できなかったものである場合、ContractorにはSub-Clause 8.5 [Extension of Time for Completion]の(b)に該当するEOTの権利が発生する。
1999年版と2017年版に大きな相違はない。例えば1999年版ではTime for Completionとなっているが、2017年版では to complete the Works, or a Section (if any)と正確に表現している。Sub-Clause 8.5 Extension of Time for Completionに規定されているContractorのEOTの理由によらないContractorの責による遅延、または予想される遅延に対して、Engineerはそれらを回復し、竣工に遅延を生じさせない施工法とそれに基づく工程表の提出を指示することができる。Contractorはこれに基づいて行われる残業、人員増強、追加的材料(建機)調達にかかる追加コストはContractorが負担しなければならない。またこの追加的施工法を適用することによってEmployer(Engineer)に追加的費用が発生する場合、Delay Damagesとは別にEmployerに支払う義務が生じる。
もしEngineerがSub-Clause 8.5 [Extension of Time for Completion]に該当する項目に基づいて突貫工事や追加的施工を指示した場合は、もちろん、Sub-Clause 13.3.1 [Variation by Instruction]が適用される。
1999年版と2017年版に大きな相違はない。Contractorは工期に遅延した場合(部分竣工に対しても)契約に定められた1日当たりの損害賠償を遅延した日数分だけEmployerに支払わなければならない。ただし契約で定められた上限までである。
ただし、2017年版ではContractorの詐欺行為、重大な過失、故意等による場合はこのSub-Clauseの上限は適用されないとしている。つまり、契約に定められた上限以上の損害賠償を支払わなければならない場合がある。
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