大本俊彦 客員研究員(京都大学経営管理大学院 特命教授)
4条 the Contractor の続き(その3)
1999年版では4.21がProgress Reportであり、4.20はEmployer’s Equipment and Free-Issue Materialについての記述である。これは2017年版では2.6 Employer-Supplied Materials and Employer’s Equipmentとして同様の記述がある。
Progress Reportに記述される項目については大きな変更はない。2017年版ではphotographsにvideo recordingsが追加されている。1999年版にはなかった以下の記述は重要である。
“However, nothing stated in any progress report shall constitute a Notice under a Sub-Clause of these Conditions.”
これは、「Progress Reportにこのような記述をしているから十分にNoticeとして機能し、解釈されるべきである」というような主張を効力のないものだと前もって釘を刺していると受け取られる。
1999年版では4.22である。
現場に入ることができる人間の定義であり、ほぼ同様の記述内容である。
1999年版では4.23である。
Contractorの作業場所に関する記述である。大きな変更はないが、Contractorが追加的に獲得したエリアに関し、1999年版の “agreed by the Engineer”という表記が2017年版では “acknowledged by the Engineer”と変更されている。契約上、Engineerのagreementを必要としなくなった。
1999年版では4.24 Fossilsである。
Sib-Clauseの名称がFossilsからArchaeological and Geological Findingsに変わった以外は大きな変更はない。これらを発見した時の現場の保存、Noticeの提出、対処法についてのEngineer’s InstructionによるEOTやCostのクレーム手順について記述されてる。
1999年版ではSubcontractorsを4.4で扱い、5条ではNominated Subcontractorsだけを扱っていたが、2017年版ではこれらを一括して、5条で記述している。
どちらの版でもすべての工事(2017年版では合意された%以上の工事)をSubcontractに出すことは禁じられている。また、Contractですでに合意されているSubcontractor以外のSubcontractorについてはEngineerのconsentを要する。
1999年版では4.5 Assignment of Benefit of Subcontractという規定があり、DNP終了以降にまでSubcontractorの義務事項が残っている場合、その義務事項に関する権利をEmployerが引き継ぐことができる仕組みがあるが、2017年版ではなくなってしまったようである。
1999年版では5条全体がこの規定である。
1999年版と2017年版とに大きな相違はない。Nominated Subcontractorの定義、正当な理由があればContractorが雇うことを拒否することができること、コントラクターにNominated Subcontractorに支払わない正当な理由があるときは、EmployerがじかにNominated Subcontractorに支払わなければならないことなど、同じ内容の記述である。
ところでこのままのペースで連載を続けていくといつ終わるかわかりません。そこで次回からは重要でかつ読者が興味を示しそうな条項を扱うことにします。