大本俊彦 客員研究員(京都大学経営管理大学院 特命教授)
4条 the Contractor の続き(その2)
このSub-Clauseは1999年版においては単に “Quality Assurance”と名付けていたものを、2017年版ではもっと広範囲にManagementを規定し、その実行と検証を具体的に規定している。
まず重要なことはQM Systemはどのプロジェクトにも通用できる一般的なものではなく、そのプロジェクトに特化したものであること、また、Commencement Dateから28日以内にEngineerに提出しなければならないということである。また、仕様書に規定された詳細を満たしているだけではなく、NoticeやContractorが準備すべきContractor’s Documentsなどのすべてのドキュメント・コントロールの手順についても詳細に記述す津ことが求められている。
EngineerはContractorのQM Systemの内容とそれが実行されているかをレビューする権限があり、それらが契約上の要件を満たしていない場合にはNoticeを発行し、Contractorは即刻または規定された期日以内に改善しなければならない。
ContractorはQM Systemを定期的、少なくとも6ヶ月以内のインターバルでレビューし、その結果と必要な改善策をEngineerに提出しなければならない。
2017年版の全く新しい記述は、Contractorが外部の品質保証審査を受ける必要がある場合は、その結果が不合格の時には即刻EngineerにNoticeを提出しなければならないことである。
ContractorはCompliance Verification System(契約順守確認システム?)を作成し、実行することによってContractorが行ったり使ったりするすべての設計、材料、機械、施工法、施工などがすべて契約に従ったものであることを確認しなければならない。
QM System、Compliance Verification Systemを実行しているからといって、Contractorは契約上の義務や責任を免れるものではない。
この4.9 Quality Management and Compliance Verification Systemsをきちんと実行するためにはContractorもEngineerも相当な人的資源と時間をかける必要がありそうである。
Sub-Clause 2.5 Site Data and Items of Referenceで述べたが、1999年版のSC 2.5はEmployer’s Claimであったが、これはClause 20でContractor’s Claimと一括して扱われることになった。
2017年版ではSC 2.5を引用して、与えられたデータや情報の解釈はContractorの責任であること、契約履行に必要なデータや情報はすべて入手し、満足したと考えることが規定されている。
1999年版と2017年版に差異はない。要は上記SC 4.10で必要なデータや情報はすべて入手できたうえで、それらの正確さや十分さに満足し、落札額が要求された契約の実行をすべてをまかなえることをContractorが受け入れることを約束する条項である。
1999年版と2017年版との間に基本的な相違はない。Physical Conditionsの定義、Unforeseeableの説明、Notice Requirement、EOTとCostの支払い、また、Physical ConditionsがContractorにとって有利な場合の減額の考え方も同じである。2017年版ではこれらを整理し、順序だてて規定している。
4.12.1 Contractor’s Notice
4.12.2 Engineer’s inspection and investigation
4.12.3 Engineer’s instruction
4.12.4 Delay and/or Cost
4.12.5 Agreement or Determination of Delay and/or Cost
これによって見やすくなったかもしれない。
1999年版と2017年版に差異はない。Contractorは通行権や工事施工に必要な現場外の施設(宿舎など)を自らの費用と責任で獲得しなければならない。
1999年版と2017年版に差異はない。Contractorは近隣に迷惑をかけてはいけません。迷惑をかけた場合でも発注者に責任が及ぶようなことにならないようにすること。
1999年版も2017年版もContractorがAccessの確保と維持に全責任を持つことを規定し、文言も変更がない。ただし、2017年版ではBase Date以降に発注者または第3者によって変更されたためにAccessが適切でなくなったり、獲得できなくなったりした場合にContractorにEOTやCostのクレーム権が発生することを明記している。
2017年版でContractorが輸入、通関、輸送等に全面的責任があることを明記した。
2017年版では主要な建機が現場に到着したら、Contractorは7日以内にEngineerにNoticeを提出することを義務付けた。
2017年版では当該工事の(もしあればではあるが)Environmental impact statementに準拠した施工をすることが明記された。
1999年版ではElectricity, Water and Gasというタイトルであったが、2017年版でTemporary Utilitiesと改められた。どちらの版でもこれらはContractorの責任で調達、供給しなければならない。もし発注者がこれら全部、または一部を提供する場合には料金につき合意し、軽量に必要な計器の設置などはContractorの責任で行うこと。