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コラム

第15回 「FIDICよもやま(15)」    ~2022.12.1~

大本俊彦 客員研究員(京都大学経営管理大学院 特命教授)

 

4条 the Contractor の続き

4.The Contractor

 1999年版で様々な場所で扱っているContractorが準備したり受け取ったり保持したりするすべての書類について、まとめてこの項で扱っている。

4.4.1 Preparation and Review

 書類を大きく分けると、以下のようになる。
   (a) 仕様書に定義されているもの
   (b) 国の法に基づいて取得する許認可等
   (c) [As-Built Records]や[Operation and Maintenance Manuals]
   (d) 4.1 Contractor’s General Obligationで必要とされる書類(例えば施工法詳細など)
 Employerにはこれらの書類をいつでも閲覧する権限がある。また、仕様書、契約条件書でEngineerのReviewを必要とする場合には、ContractorはEngineerによるReviewの準備ができたことを通知するNoticeとともにこれらの書類を提出しなければならない。
 このような書類の提出があったときにはEngineerは21日以内に”no objection”の通知か、理由をつけて提出書類が要求を満たしていない旨をContractorに通知することとなっている。2017年版の特徴の一つであるが、Engineerの業務にも期限を設け、もし21日以内に返事がなければNo-objection NoticeをContractorが受領したものとみなす。

4.4.2 As-Built Records

 Contractorは施工に関する最新の記録を現場に保持しておかなければならない。記録とは工作物の正確な位置、大きさなどを示す図面、施工法等を含む。Contractorは後述するTaking Overに際して最終的なAs-Built RecordsをNoticeとともに提出しなければならない。Engineerは上記の4.4.1 Preparation and Reviewに従ってReviewをし、その結果をNotice とともにContractorに返さなければならない。

4.4.3 Operation and Maintenance Manuals

 仕様書、契約条件書で要求されている場合に、ContractorはOperation and Maintenance Manualsを提出しなければならない。特に、これらに対するEngineerのNo-objectionのNoticeはTaking Overにとって必須である。

4.5 Training

 Yellow BookやSilver Bookには設けられているが、Red Book 1999年版では想定されていない項目である。
 もし仕様書や契約条件書でEmployerのスタッフに対してトレーニングを行うことが要求されている場合、Contractorはそれらに基づいてトレーニングを行わなければならない。ここで注意が必要なことはトレーニングがTaking Overより前に実施されることが要求されていた場合は、トレーニングが完了しなければ構造物の建設が完了していても、Taking Overが行われない。つまりまだ工事が完成したとはみなされないことである。

4.6 Co-operation

 ContractorはEmployerのスタッフ、他のコントラクター、官庁の職員や(電気やガスなどの)ユーティリティーの職員等と協力したり、彼らの仕事ができるように機会や場所を与えたりしなければならない。ただし、この条項の下で出されたInstructionが仕様書に照らしてUnforeseeableである場合は、SC 20.2に基づいて、EOTやコストクレームの権利が発生する。1999年版ではUnforeseeable Costが発生した時はVariationの対象となるが、EOTについての言及はない。

4.7 Setting Out

 Setting out(測量)は図面や仕様書に示されているか、Engineerによって与えられる測量基準点(位置、高さ)をもとに行われる。Contractorはこれらの基準点を工事に用いる前にそれらの正確さを確かめる(Verify)する義務がある。
 1999年版では、もしこれらの基準点に誤りがあり、それによってDelayや追加コストが発生した場合にはSC 20.1に基づいてクレームする権利が発生する、と規定している。
 2017年版では入札前にも合理的な範囲でContractorはこれらの測量点の正確さを確かめる義務を負う。契約後はContract Dataに規定された期日以内に誤りのある基準点に関するNoticeをEngineerに提出しなければならない。EngineerはNotice受領後SC 3.7 [Agreement or Determination]に従って合意かDeterminationを出さなければならない。

4.8 Health and Safety Obligations

 1999年版ではSC 4.8はSafetyだけを扱っており、HealthはSC 6.7でHealth and Safetyとして扱っている。Safety Proceduresとして(公的)規則に従うこと、現場従事者の安全を確保すること、危険を排除するために片付けをすること、フェンスやライティングを設置することなどが規定されている。
 2017年版では上記の1999年版の規定を踏まえて、着工日から21日以内または現場作業を開始する前に「Health and Safety manual」をEngineerに“For information”として提出しなければならない。また、事故の報告はEngineerに即時に行うこと、法律や規則に基づく記録を残すことをContractorに義務付けている。


4.9 Quality Management and Compliance Verification Systems 以下のSCは次回以降

 

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