[SCOPE] 一般財団法人 港湾空港総合技術センター

  • Googleロゴ

     

コラム

第13回 「FIDICよもやま(13)」    ~2022.8.1~

大本俊彦 客員研究員(京都大学経営管理大学院 特命教授)

 

 FIDICよもやま(12)のThe Engineerの続きとして、2017年版FIDICが1999年版FIDICからどのように変わったかを見ることにする。

3.The Engineer

3.1 Engineer’s Duties and Authorities

 “The Engineer shall be deemed to act for the Employer”については前回触れたが、Engineerの義務と権限で重要な記述が1999年版と2017年版にあるので、ここで触れておく。もしEngineerの義務や権限を行使する場合にEmployerの事前の承認が必要な事項はParticular Conditionsに規定しておかなければならない。ところが2017年版ではこの記述に続いて、
 “There shall be no requirement for the Engineer to obtain the Employer’s consent before the Engineer exercises his/her authority under Sub-Clause 3.7 [Agreement or Determination].
と規定している。これは例えばEOT/Costsを含むVariationを出すときはEmployerの事前同意が必要であるが、DeterminationにはEmployerの事前同意なくEOTや追加コストの支払いを含むことができるということになるのか。具体的な事例ではよく検討する必要がある。いずれにしてもEmployerの事前同意が必要とされる内容を含む行為を実際に行った場合には、以下のように1999年版も2017年版も契約上、Employerの事前同意が得られたものをみなされる。
 “However, whenever the Engineer exercises a specified authority for which the Employer’s consent is required, then (for the purpose of the Contract) such consent shall be deemed to have been given.” (2017年版)
 “However, whenever the Engineer exercises a specified authority for which the Employer’s approval is required, then (for the purpose of the Contract) the Employer shall be deemed to have given approval.” (1999年版)

3.2 Agreement or Determination

 Employer/EngineerとContractorの間に意見の相違がある場合、Engineerは両当事者と合同あるいは別々に会って、合意を促すように努力しなければならない。これをConsultationと呼んでいるが、Engineerはこの記録を両当事者に提供することになっている。
 Consultationの結果合意が成立すれば、Notice of the Parties’ Agreementとして両当事者の合意内容を添付する。
 もし合意が得られない場合には、Engineerは直ちにEngineer’s Determinationの段取りにかからなければならない。
 ここで1999年版と2017年版の違いは、2017年版のConsultationに期限があることである。例えばSub-Clause 20.1 (a) Employerの遅延損害賠償要求や (b) ContractorのEOTや追加コストの要求の場合は、Engineerが[Fully Detailed Claim] を受領した日から、また、クレーム状況が続いている場合には[final fully detailed Claim]を受領した日から42日以内に、または両当事者同意の期間以内に合意が成立して初めてEngineerが”Notice of Determination]を出すことができ、その期間以内に合意が整わない場合、EngineerはConsultationの期限が過ぎた日から42日以内、または両当事者の同意した期間以内に、Determinationを発行しなければならない。
 1999年版はEngineerのDetermination発行までの手続きしか規定していないが、2017年版はDeterminationの効力について詳細に規定している。
 EngineerのDeterminationに不服な当事者は理由をつけて”Notice of Dissatisfaction with the Engineer’s Determination (NOD)”を提出することによって、このDisputeをDABに付託することができる。もしEngineerがDeterminationを発行してから28日以内にNODがどちらの当事者からも提出されない場合、このEngineer’s Determinationは契約上、"final and binding"となる。ちなみにEngineer’s Determinationの一部だけにNODが出された場合には、NODの対象となっていないDeterminationはやはり”final and binding”となる。

ページの先頭へ戻る

ページTOPへ