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コラム

第7回 「Dispute Board (DB)(7)」    ~2018.6.10~

当センター理事 大本俊彦(京都大学経営管理大学院 特命教授)

 

 今回はDBへの紛争の付託(Referral)から裁定(Decision)までを説明する。

紛争(Disputes)

 付託(Referral)とは紛争に対する決定(Decision)をDBに求めることである。
 FIDIC MDB版※1)において多くの条項でコントラクターにクレームの権利を与えている。勿論、発注者にもコントラクターに対するクレームの権利もあるが、通常、コントラクターのクレームが大部分を占める。コントラクターは工事の変更や追加、予期せぬ状況による工事コストの増加、工事の遅延を被るとき、あるいは被ると予測されるときにクレーム・ノーティスを提出し、その後クレーム作業を実施する。この一連の作業の中でDBはクレームが大きな紛争に発展する前に当事者とエンジニアを支援して、友好裏に解決させたり、要請によって非公式見解を提供することによって当事者・エンジニアが合意に達する助けをしたりする。
 DBと当事者、エンジニアの努力にもかかわらず円満な合意に至らない場合は、エンジニアが結論(Determination)を出す。このDeterminationに当事者の一方又は双方が不服な時に紛争(Dispute)としてDBに裁定(Decision)を求めることができる。

DBへの付託(Referral)

 DBにDecisionを求めることを付託(Referral)という。DBはReferralを受けたら84日以内に、あるいは両当事者に合意された延長期間の間にDecisionを出さなければならない。この期間は短いようではあるが案外十分な長さでもある。というのは、DBは仲裁などとは違って、プロジェクトの初期段階から設置され、DBメンバーは現場を熟知しており、紛争そのものも十分に理解しているといってよい。したがって、付託のための提出書類もごく簡単なものでも十分である。仲裁のような申立書という大分なものではなく、自分の主張の骨格を記述するポジション・ペーパー(Position Paper)を提出すれば十分である。

ヒアリング(Hearing)

 DBにおけるHearingにはいくつかの特徴がある。
• Disputeを未解決のまま放置すると時間とともに複雑化し、問題も大きくなって来るので、合意に至らないDisputeが出てきたらできるだけはやくReferralを実行することが推奨される。そのためには定期的なDB Site visitを利用することが最も経済的であるだけでなく、敵対的関係に陥らないで良いビジネス関係を保持することの助けにもなる。
• FIDIC条件書やICCのDBルールにも誰がヒアリングに出席してよい、あるいは悪いという記述はない。複雑な技術的紛争の場合には外部専門家が起用される場合が多いが、これらの専門家の出席は普通認められている。しかし契約問題であっても弁護士の出席を認めないというDB実務家が多い。もし出席を認める場合でも、傍聴者として出席できるが、発言は一切認めないというのが常識になっている。
• DBが問題を十分理解していることから、ReferralはDocuments Only(書類だけの付託)を実践しているDBも少なくない。ヒアリングに伴うコストのセーブにもなる。

裁定(Decision)

 DBメンバーが3人の時は、全員の意見が一致しない場合は多数決による。しかし、FIDICはDBが全員一致の裁定が出るよう努力すべしとしている。
Decisionが出たら不服な当事者は”Notice of Dissatisfaction and intention to commence arbitration”をDecisionが出た日から28日以内に相手当事者に提出しなければならない。
(1) 期日内にNotice of Dissatisfaction and … が提出されない場合:
Decisionは”final and binding”、つまり最終的で拘束力のあるものになる。
(2) 期日内にNotice of Dissatisfaction and … が提出された場合:
Decisionは”binding but not final”、つまりDecisionはのちの仲裁判断によって覆るかもしれないが、それまでは拘束力を持ち、当事者はすぐにDecisionに従わなければならない。
 コントラクターにある金額の金を支払うように発注者に命ずるDecisionが出された場合、Notice of Dissatisfaction and … を相手に出し、1)支払いを起こさない、2)仲裁にもいかないという発注者がいるという例が少なからず報告されている。この場合コントラクターに残された手段は仲裁に申し立てて、DBのDecisionにすぐ従えという判断を求めることだけである。この手段の合法性については異論があったが、インドネシアのガスパイプライン・プロジェクトの事件※2)を通じて、”binding but not final”なDecisionもすぐに実行しなければならないことが、認められた。
 このような疑義を排除するため、FIDIC Red Book 2017, Yellow Book 2017, Silver Book 2017ではDecisionにはすぐに従わなければならないこと、これに違反した場合はDecisionをすぐに実行するように命令する判断を仲裁に求めることができることが、より明瞭な文言で記述されるようになった。世銀やアジア開発銀行、JICAなどの融資プロジェクトで用いられるFIDIC MDB 2010版の改定はまだではあるが、このインドネシア・プロジェクトの判例とあたらしいFIDIC 2017で確認されたことを当たり前のこことして、実行されることを望む。

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※1)FIDIC Conditions of Contract for Construction, MDB Harmonised Edition
※2)PT Perusahaan Gas Negara (Persero) TBK (PGN) vs CRW Joint Operation (CRW)

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