当センター理事 大本俊彦(京都大学経営管理大学院 特命教授)
JICA※1)、ADB※2)、世銀※3)などの公的融資機関はFIDIC Pink Book※4)を標準入札図書に含めているので、これらの機関による融資プロジェクトではDBを用いることが義務付けられている。これらの融資機関のうちJICAはDBコストをプロジェクトコストとして融資額の中に含むことができるとJICA DB Manual※5)の中で明瞭に規定している。JICA以外の公的融資機関でもDBコストをプロジェクトコストとして認める方向にあると聞いている。
プロジェクトコストの中でDBコストを確保するためにはプロジェクトのアプレイザル時にすでに算入する必要がある。発注者(実施機関)はコンサルタントの協力を得てDBコストを見積りしなければならない。この作業は下記のフローチャートによって説明される※6)。
◆ DBメンバーの人数
プロジェクトの規模、複雑さ等を考慮し、DBメンバーの人数を決定する。特にエンジニアと法律家の組み合わせが望ましいときには、3人のメンバーを採用する。
◆ DBコストの総見積額算出
上記DBメンバーの人数、工期、Site visitの頻度、想定するメンバーの母国からの航空運賃等からDBの総コストを算出する。JICA DB Manualに詳細な試算例が載っているので参照されたい。
◆ アプレイザルにDBコストの総見積額算入
アプレイザルにおけるプロジェクトコストにはDBコストの総見積額を算入する。コントラクターの負担額も最終的にはプロジェクトコストから支払われると考えられる※7)。
◆ DBコストの1/2をProvisional Sumに計上
コントラクターへのDBコストの支払いはProvisional Sumに計上された予算から行う。そのためにProvisional SumにはDBコストの総見積額の1/2を計上する。
◆ 契約締結時にProvisional Sumの詳細確認
契約締結直後にDBを滞りなく設置するために、発注者、エンジニア、コントラクターの3者はProvisional Sumに計上されているDBコストの内容を確認し、どのようにDBを運営していくかを合意しておかなければならない。
◆ DBメンバーからフィーと実費の請求
DBメンバーはRetainer fee、Daily fee、交通費などの実費をコントラクターに請求する。Retainer feeは3ヶ月の前払い、Daily feeと実費は実施後の支払いとなるのが一般的である。
◆ DBメンバーへの支払い
DBメンバーからの請求に基づいて、契約で規定された支払いを実施する。支払額は発注者分を含めて100%とする。
◆ 発注者からコントラクターへの支払い
コントラクターはDBメンバーに支払ったDB費用の1/2を直近の出来高請求に含めて発注者に請求する。支払BQ項目はProvisional Sumである。
以上のようにプロジェクトのアプレイザル時からしっかりDBコストが予算化されていれば、プロジェクトの着工時にスムーズにDBを設置することができる。ここでコンサルタントはDBの良き理解者として発注者を助けることが非常に重要であると筆者は思慮し、日本のコンサルタントに大いに期待する。
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※1)Japan International Cooperation Agency(国際協力機構)
※2)Asian Development Bank(アジア開発銀行)
※3)IBRD(International Bank for Reconstruction and Development‐国際復興開発銀行、World Bank‐世界銀行)
※4)FIDIC Conditions of Contract for Construction, MDB Harmonised Edition for Building and Engineering Works Designed by the Employer
※5)https://www.jica.go.jp/activities/schemes/finance_co/procedure/guideline/pdf/
DisputeBoardManual_201203_e.pdf#search=%27JICA+DB+Manual%27 (英語版)
https://www.jica.go.jp/activities/schemes/finance_co/procedure/guideline/pdf/
DisputeBoardManual_201203_j.pdf#search=%27JICA+DB+Manual%E6%97%
A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E7%89%88%27 (日本語版)
※6)JICA DB Manualの英文を和訳したものを若干修正したもの
※7)DBコストを入札金額に計上するかどうかは入札者によって異なると考えられるが。