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広瀬 アメリカの連邦航空局では、多数の空港を持っているため、予算を割り振らなければなりません。そのため、投資の効率化という視点で、メンテテナンスを行うのに現在耐力はどのくらいあるのか、表面の劣化はどうなっているのかを、データベース化しています。
小林 カリフォルニア大学バークレー校では、複数ある滑走路が同時に傷んでくるのを防ぐために、離着陸の飛行機の割当を考えながら、補修のタイミングをできるだけ分散するようなマネジメント技術に関しても研究をしています。
データベースに関しては、日進月歩の状況ですか、データを使って劣化予測する技術や、ライフサイクル費用を評価する技術も相当程度発展してきました。ところが、途中で補修した時期のデータがきちんと入っていないとか、必要な情報が少しでも欠けているとデータベースの価値は落ちてしまいます。
特に補修費用のデータベース化は難しい。現行の財務会計の下では、予算の体系とインフラの体系がリンクしていないため、費用に関するデータベースか進展しない。会計技術の革新が必要です。例えば、同じ港湾施設を管理する上でも、いろいろな費目で費用か発生します。予算の執行結果は、費日ごとに集計され、インフラごとに集計されるわけではない。予算体系とインフラの体系とをリンクさせるには、インフラのコード化をする必要があります。例えば、港湾施設が一番上のコード、その次に埠頭と順に数字をつけていき、コード番号を見れば、予算かどの施設で執行されたかか判明するような費用管理システムが必要となります。このような施設コードかなければ、費用のデータは蓄積されません。
広瀬 港湾の場合は古い施設が多いですから、施設台帳は整備されていても過去の必要なデータか残っていない場合も多いように感じています。
小林 それでも港湾は台帳が一番整備されている分野のひとつだと思います。10年、20年、30年と、徐々にデータが整備されてくればいい。それくらいのスタンスで、台帳システムを整備していけばいいわけですが、日本人は真面目ですから、いきなり完璧なものをつくろうとします。
留学していたときの話ですが、図書館に蔵書目録の電子化システムを導入しようとしましたが、人件費が全くないわけです。膨大な図書を登録する方法として、借りに来た人に登録させたわけです。20年で5〜6割は登録できます。そのようなスタンスで、整備していけばいいと思います。ただし、システムづくりと同時に、それをどう動かすかという仕掛けは、はじめの段階できちっとつくっておかなければならない。
先ほどのコモンローの国々では、管理上発生した問題に対して、過失責任の有無が必ず問われます。このような過失責任に関する技術的な判断の結果として、管理上の技術基準が蓄積されていきます。日本では、管理瑕疵に関する無過失責任体系の中で、どのようにガバナンスのあるリスクマネジメントシステムを構築するか、技術基準を構築していくかが求められています。さらに、このような管理過程の中で、技術者をいかに位置づけていくかということが大きな課題だと思います。 |