ランダム・フォーカス
CALS/ECから見た今後の「モノづくり」

CALS/ECを支える技術

 建設におけるCALSでは、図面などを扱う必要があり、データは、大きくなりがちである。このため、コンピュータの能力も高いものが要求される。現場レベルで完全には導入されていないという指摘は、これが原因していることも考えられる。CPUのクロックが100MHzを超えたのが94年頃で、GUI1)の本格的なOSであるWindows2000やXPが使われるようになったのが、00年以降である。これをアクションプログラムの工程と比較すると、建設CALS/ECで要求している作業は、各時点で最新に近いマシンを使わないと、スムーズな運用が困難である可能性がある。
 CALS/ECを実現するために必要なもう1つの要素である高速な通信ネットワークについては、相当大規模な現場以外は、各工事現場などに専用線を引くのは困難であり、広く一般に提供されている回線を利用することになる。商用で利用できる高速回線としては、ISDNが最初のもので、88年に64kbpsの通信速度で商用利用が始まった。その後、ADSLは00年くらいから普及し始め、通信速度は下りで1Mbps、上りで12kbps程度であった。01年以降は、FTTH2)が使われるようになったが、この通信速度は100Mbpsくらいである。これらの数字は理論値で、実際は50%程度まで下がる可能性がある。ちなみに、1MBのファイルを送る時間を概算すると、ISDNで2分、ADSLで上り11分、下り8秒、FTTHで0.1秒以下となる。光ファイバー以外では、通常業務としてCADによる図面などを送るには、快適な通信は困難であると思われる。
 現在は、CD−ROMで成果品が納入されている。記録媒体の容量の変遷は、表−3に示すとおりであり、電子納品が始まったころは、CD−ROMが主体で、DVDはまだあまり普及していなかった。現在、電子納品する場合に、CD−ROMで数枚になることもあり、利便性に欠ける面があるのは否めない。

表−3 記録媒体の変遷
表−3 記録媒体の変遷

1)
GUI:Graphical User Interface 画面上に表示された絵や画像をマウスで操作することでコンピュータに指示を与える操作手段。視認性、操作性に優れ直感的な操作が可能となるため広く使われている。CUI(:Character User Interface 文字、記号でコンピュータに指示を与える)と対比される。
2) FTTH:Fiber To The Home 光ケーブルを一般家庭へ直接光通信のネット構成方式。「ブロードバンド」が可能となり、高速・定額のインターネット常時接続を実現した。
CALS/ECの現状

 ここでは、主として電子納品について、現状を検討する。
 日本土木工業協会の06年のアンケートによれば、全般的にCALS/ECの導入は進んでいるが、いくつかの問題点も指摘されている。その主なものは、CAD図面に関するもので、図面の受領、納品にあたって、CAD製図基準に準拠していないものが約半数ある点である。また、検査も紙で行われているものが半数である。事前協議の実施、捺印の省略、情報共有サーバの利用などについては、まだ、件数は多くはないが、増加している。また、データのバックアップを行っているところは、75%程度になっている。全般的に、CALS/ECに対する理解は進んでいるが、まだ、改善の必要があると考えられる。特に、CAD図面について検討する必要がある。
 また、CALS/ECを効果的に進めるためには、中央省庁だけではなく、地方自治体の事業についても、導入することが不可欠である。地方自治体でのCALS/ECの普及状況を見ると、導入予定が10都道府県、実証実験・試行中が4、導入済み・運用中が33である。一方、各県が作成している、CALS/ECの導入計画を見ると、06年現在での計画では、実験段階が3、普及段階が23、実施段階が16となっている(各県のホームページによるが、必ずしも同じ用語を使っていないので、筆者が判断した)。これを、比べると、少し計画よりも遅れ気味ではあるが、進展していると見られる。
 総じていえば、国も地方もおおむね着実に普及しつつあるが、CAD、情報共有などについては、今後、一層の努力が必要であると考えられる。



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