ランダム・フォーカス
企業経営と情報化
利活用が不十分な電子政府

 電子自治体のモデルについて考えてみましょう。日本のGDPの4割が公共部門、行政部門ですから、行政府は民間にとって最大のマーケットということになります。その中で中央政府の予算と、都道府県、市町村の予算を含めた電子政府・自治体の予算は、狭い意味で6000億円くらい。広い意味で2兆円ぐらいが年間のマーケットだと考えていいでしょう。そこには、様々なモデルがあって、サービスも様々です。そうしたサービスのセグメンテーションを、今後CIOがどう全体最適に持っていくかが課題になると思います。
 神奈川県のある自治体のモデルを参照すると、CIOの仕事は幅広いものです。市民を相手にする場面、組織の中の場面、全体的な社会、様々なサービスの提供者、供給者というように。これだけのことを地方自治体のCIOはやらなければいけないわけです。
 ところが、地方自治体では、CIOが専任でいることはほとんどありません。だいたい副知事や市長などが務めている。名前だけの方もいるかもしれません。しかし、今後は、法律によってCIOあるいはCIO補佐官が、IT関係のみならず、こうした様々な場でも活動することになるはずです。
 電子政府・自治体研究所では、世界電子政府ランキングを発表しています。それによると日本は1回目の調査が7位で、先日の調査が4位でした。わずかな期間にかなり頑張ったといえるでしょう。ただし一抹の不安があります。日本の場合には普及率は高いけれど、利活用率が非常に低い。その悩みをどうするのかという課題があります。今年1月19日に発表された「IT新改革戦略」では、オンライン化の目標が50%になっていますが、現在は10%ですから、よほどのソリューションビジネスがないと実現は難しいかもしれません。
 現在、電子政府が抱えている問題点としては、システム化と業務改革の不統一、システムの初期目標の未活用、情報セキュリティ対策の甘さ、高度IT人材不足、組織文化の認識不足、ITガバナンスとCIO機能の弱さなどが挙げられると思います。
 特に、現在、行政で重要なのがIT調達問題です。何が問題かといえば、形式的な入札でまだ本当のITができていない。コスト増の原因となるような入札要件も問題です。使いもしないソフトがパソコンに入っているといった過剰な機能、ハードウェアの問題もあります。また、システム間の部分最適はできるけれど、全体でコストがいくらなのか、全体最適が軽視されているのも問題です。さらに、コストの妥当性の評価が十分にシステム化されていないため、正しい評価が困難だという問題もあります。
 こうした問題については、総務省や内閣府も真剣に取り組もうとしているので、今後は欧米並みの発想になることを期待します。
電子政府の成果とは

 電子政府・自治体のスケジュールとしては、昨年までにかなりの部分をオンライン化しています。ただし、婚姻届、離婚届、住民票など住民が頻繁に使うものではないだけに、思ったほど進展していません。もう少し国民にインセンティブを与えて、役所に行く必要がない環境を整備しないと、進展しないのかもしれません。
 電子政府構築計画の今までの成果としては、ポータルサイトが非常に良くなりました。手続きのオンライン化も進みました。ワンストップサービスも拡大しました。2003年4月には輸出入・港湾手続のシングルウィンドウ化の実現がありましたが、こうしたフロントオフィスでの効果はあったと思います。
 また、バックオフィスでは情報通信基盤が整備されました。これを活用した業務改革についても、各府省で、CIO補佐官を設置するなどしています。その他、最適化計画についても、現在77分野を設定してかなりのところまできていますから、今後の計画が順調に進めば、レガシーからオープンソースを使っていくような公共部門の仕組みができていくのではないかと思います。もちろん各府省で人事・給与等の最適化は当然進んでいますから、それはそれで成果が出ます。
 IT投資効果測定の問題点を見ると、ITケーバビリティによる情報最適化のモデルが、まだ十分にできていません。投資効果測定項目も、本当のベストソリューションなのかどうか、疑問な点があります。また、CIOが管理する「知識」「情報」は無形財産で数値化しにくい問題点があります。これをどうベンチマーク化するかも課題です。オーストラリア政府はIT投資効果を部分最適で測定して、議会に報告しています。タックスペイヤーである国民にどういう効果があったかを報告することによって、国民コンセンサスが得られるわけです。
 IT投資の目的が何かといえば、業務のスピードアップ、人件費の削減、営業販売力の促進化などが結果的に出ています。IT化の動きによって人員が削減どころか、人数が増えているところもありますが、一定の期間が過ぎればだいぶ変わってくるかと思います。


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