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企業経営と情報化
「IT新改革戦略」でITツールを活用

 「u−Japan」政策は、2010年までの雄大な計画です。利用環境、産業活性化、ネットワーク高度化という中で、従来のインフラからユーザーに向けたユーザーオリエンテッドなサービスにウエイトが置かれるようになり、産業構造あるいはライフスタイルそのものも変わっていくと思います。その中で、官民の連携強化やIT人材育成も今後大きな課題になることでしょう。
 日本のユビキタス情報政策によってどのぐらいの効果があるのかというと、2010年に関連市場が87兆6000億円に、経済効果、波及効果まで入れると120兆円程度に達する見込みです。今後は特にコンテンツが重要になってくると思います。

 我が国のIT戦略の歩みを振り返ると、2001年の「e−Japan戦略」があって、その後に「e−Japan戦略U」があって、2003年7月に完成しました。これによってインフラはできたので、これからは利活用のソフトやサービスが課題だということで、本年1月19日に「IT新改革戦略」が発表されました。これは今後5年間にすべきことを提示したもので、社会的制約を排除してITツールを活用していくということで、構造改革、利用者・生活者重視、国際貢献・国際競争力という3つの柱を立てています。(図−3、4)

図―3
図―3
図―4
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CIOのコア・コンピタンス

 すべての官庁にはCIO連絡会議があり、その下にCIO補佐官の連絡会議があります。地方自治体との連絡会議もあるというように、各省ごとに様々なネットワークの仕組みができていますが、基本的に各省が独立しており、連絡協議会はあくまでも意見交換の場になってしまっている。そこが今後の課題かと思います。
 行政CIOの任務を整理すると、現在は最適化計画EAを推進するということで、そのために役所全体を動かしていくということになっています。特にレガシーシステムの見直しが課題になっています。
 今後の行政CIOの任務としては、個別の最適化計画ではなく省全体の最適化計画の推進をする。そのための要員を育成するのが行政CIOの大きな任務だと思います。アメリカではCIO大学の認定を政府から受けて、その大学のCIOコースを卒業すると免状がもらえるというシステムになっています。日本はまだそこまでいっていません。
 アメリカの場合はCIO Council(連邦CIO協議会)が1996年にできて、2002年の電子政府法で明確になりました。Councilには28省庁が全部入っていて、大統領府がその中心になっています。中小の役所はSACC(中小連邦官庁CIO協議会)を設けています。また、各州のCIOの団体NASCIO(全米州CIO協会)もあります。
 CIOのコア・コンピタンスは何でしょうか。アメリカでは、だいたい70項目のコア・コンピタンスをしっかりとマスターしている人をCIOと呼びます。政策と組織、リーダーシップと管理能力から資本計画と投資評価、パソコン上のツールなど実に幅広いものです。日本でも、将来的に、こうして試験に合格した人材がCIO免許のようなものを所得するシステムを検討してもいいかもしれません。

CIOのグローバルスタンダードモデルを追求

 CIOを学問的に考えようということで、「CIO学」というものを構想しました。高度IT人材が400万人程度不足しているとされる中、そうした人材を育成する効果、そして民間と行政間のCIOの人事交流を可能にする効果が期待されています。
 行政CIOと民間CIOの関係については、アメリカでは融合が進んでいます。例えば、マイクロソフトのCIOが翌年は商務省のCIOになる。逆に国務省のCIOが民間会社のCIOになる。そうしたことが当たり前になっています。要するに官と民がプロフェッショナルとしてどこでも使えますというのがアメリカで、日本でもその流れがどこまで進むのか注視したいと思います。
 今年1月19日に設立された「国際CIO学会」でも、アメリカ型CIOと日本型CIOについて研究するつもりです。アメリカは官と民が一緒になっている。日本の場合は官と民にまだハードルがある。そうした状況の中で、どういうモデルが良いのかを皆さんと研究しようと考えています。高度情報社会はグローバルですから、おそらく日本的モデルとか、アメリカ的モデルとかいう区別はなくていいのではないでしょうか。学会の会長は私が務めていますが、各方面の協力をいただいて、CIOのグローバルスタンダードモデル(図−5)をつくっていこうと思っています。国連でもCIOについて取り上げてもらっていますので、アメリカ、ヨーロッパ、日本、アジアで、高度情報化社会、ユビキタス社会の推進者であるCIOに、いかにして適正な役割を持たせるか議論をしていくつもりです。

図―5
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まとめ

 最後に、今日お話したことをまとめてみましょう。1つはCIOの役割がセキュリティや知的財産など広範な領域に広がったということです。また、CIOは電子政府・自治体の推進役であり、法的に電子自治体も、いわゆる公共事業体もCIOを置かなければいけなくなっています。
 CIOを国際比較してみると、日本のCIOには3つの特徴があります。1つ目は兼任が多い。2つ目は情報システム出身者が多い。3つ目は官と民のハードルがあるという特徴です。さらに、電子自治体の行政CIOの人材はまだまだ不足しています。また、アメリカのCIOの官民融合の教訓は、日本も見習うべきかもしれません。
 現在は、IT投資効果へのSCMやER、業務最適化構築モデルなど様々なビジネスモデルをつくらなければいけません。こうしたことはアメリカやヨーロッパの企業は、熱心に取り組んでいます。日本もそうした構築モデルを考えなければいけません。
 また、高度IT人材育成のためのCIO大学の拡充が必要です。その中でも特に今後は技術革新が進んで、10年前、20年前に大学で研究したことが使えなくなりますから、再教育のための受け皿が必要だと思います。新たに「国際CIO学会」を設立しましたから、様々な点について学問的にバックアップしたいと考えているところです。



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