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企業経営と情報化
CIOは変革の指導者

 CIOの定義は何かというと、「組織において情報管理・情報システムの管理・統括を含む戦略の執行を主たる任務とする役員であり変革の指導者」ということになります。変革の指導者というと、違和感を持たれるかもしれませんが、CIOが変革の指導者でなければ、組織において誰も変革を担う者がいなくなってしまうのではないでしょうか。
 CIOの中には情報システム担当など、コンピュータに関する仕事しかしてこなかった方もいるかもしれません。しかし、もう少し広い統括的な戦略の立案も行わなければ、組織においてそれを担う者は他にいません。この定義は、ヨーロッパやアメリカでも同様です。
 経営者であるCEOは別として、研究開発のCTO、危機管理のCRO、経理財務のCFO、セキュリティのCSO、ナレッジマネジメントのCKOは、すべてCIOの役割だと私は考えます。これからは、CIOがすべてを統括していく役割を持つでしょう。(図−1)

図―1
図―1
CIOの歴史は80年代から

 その歴史は、1960年代のコンピュータ導入とともに、CIOのような人材の必要性が高まったと見られています。80年代になって情報システムが各組織でかなり整い、情報システムを含めたIT活用の競争優位に主眼が置かれて、情報技術と管理が大きな組織上の鍵になりました。90年代はグローバル化の時代で、IT経営戦略が重要な組織のコアになってきて、競争力がキーワードになりました。また、2000年以降は、2000年問題で誰がその対応をするのか、世界中の組織が悩み、結局はCIOがその任にあたるべきだということになりました。このようなことを通して、アメリカやヨーロッパではCIOの役割が広がったといえます。
 2001年9月11日には、ニューヨークの世界貿易センタービルがテロによって破壊され、1000社以上の企業のITあるいは情報システムが壊滅的な影響を受けました。その時にCIOを置いていた企業が、比較的早期にリカバリーできたというアメリカの学者の研究成果もあります。アメリカではテロの結果として、各組織でCIOにしっかり仕事をしてもらおうということが、社会常識になりました。
 一方、日本では、最近、東京証券取引所、大阪証券取引所で株取引の発注誤作動が起きて、そうしたことが二度と起きないように、CIOを置くことになりました。ところが、なかなか人材が見つからない。結局、東京も大阪も外部に依頼して、人材を送ってもらいました。あれだけ大きなシステムを運営管理できる人材は、そう簡単に見つからないのが日本の現状です。
 CIOのキーワードとして、ナレッジマネジメント、リーダーシップ、コミュニケーションという3つが脚光を浴びています。日本でリーダーシップは、それほど重要なコンピタンスだと思われていませんが、アメリカではリーダーシップのない人材は組織で高い評価を受けません。コミュニケーションも同様です。日本人やアジア人は、欧米人に比べてこの点が苦手な人が多いようです。
広がるCIOの機能

 日本のCIOの機能と課題は何か。まず電子政府や企業の情報管理部門の統括管理者である。また、ITを通して調達ができなければいけないということで、例えば戦略調達の技術者なども、必要な人材の条件になってくると思います。また、現在はあまりいませんが、セキュリティの専門家であることも必要でしょう。情報化の予算の立案者としての機能もある。高度情報社会になれば、インターネットによる広報も重要ですから、CIOは広報、コミュニケーターの役割も果たさなければいけません。
 業務革新やソリューション、ITマネージメントの推進者、知的財産権の管理機能もCIOの仕事です。日本は知的財産そのものがまだ十分国民の間で理解されていないところもあって、企業の知的財産の統括責任者が誰なのか中途半端な感じですが、アメリカでは明確にCIOの役割です。また、コンプライアンスも、アメリカではCIOの役割になっています。
官房長官がCIO

 ある調査で、企業の中でCIOにはだいたいどのぐらいのランクの人がなるのか調べたところ、現在ではほとんどが役員ということになっています。企業によっては副社長が就いているところもあります。それだけCIOの機能は幅広く重要なもので、ウエイトがずっと経営に近づいてきたということです。

図―2
図―2

 行政はどうでしょうか。どこの省庁もCIOは官房長官で、経済産業省だけが事務次官となっています。情報システムのことを理解できると思えない官房長官が、CIOを務めるのはおかしいと思うかもしれませんが、官房長官なら組織のすべてを睨むことができるので最適です。より専門的なことについては、民間からプロをCIO補佐官として迎え入れて、補佐を受けることが一般的です。このように行政も企業も、CIOの機能と課題がどんどん変わってきています。(図−2)
 基本的に日本の場合には、アメリカやヨーロッパと比べてCIOの認知度が低いため、専任ではなく兼任者が多くなっています。アメリカの役所は全部専任です。また、CIOを置いた場合と置かなかった場合の結果分析をしてみると、CIOが絶対的なファクターであるとはまだいえないようです。しかし、CIOがいたほうがより効果的な面があるという例はいくつかあります。

様々な経験がCIO教育に必要

 グローバルカンパニーになると、パートナーであるアメリカやアジアの企業とのつきあいを円滑にするために、相手と同じ役職が必要になります。アメリカではほとんどの企業にCIOがいますから、日本の企業もCIOを置く必要が出てきます。相手が、「私はCIOだから、日本の会社のCIOを呼んでください」と言った時に、どこにいるのかわからないというのでは話になりません。
 日本の企業にも、CIOを養成してもらわなければいけません。CIOは、世界中の子会社や系列会社、パートナーとのネゴシエーションをするのが仕事になります。昔のようにIT部門の責任者=CIOという時代ではありません。ですから、今後は、様々なセクションを経験していくような教育訓練が若い時から必要になってくるのではないでしょうか。
 ただし、いくらCIOを置いても、CIOが機能しやすい組織の構築ができていないと意味はありません。経営の一端にCIOがいても誰もその声に耳を傾けないような組織だったら、うまく機能しません。独立採算の本部制を取っている企業で、各本部から1人ずつCIOオフィスに課長クラスの人材が入ってチームを組むといった工夫をして、CIOが機能する組織を構築しなければいけません。


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