以下、金融機関の役割等についてもう少しご理解頂くために、融資契約ができていくまでのプロセスを具体的にご説明します。 PFI事業の入札プロセスに沿って、融資契約が調印に至るまでの過程を示したものがファイナンスの組成プロセスです。(図−3)
まず、公共が実施方針の公表により、PFIを導入して事業を行う旨のアナウンスメントを行います。入札の手続き、資格要件などを規定したものが募集要項で、これが公表されて民間の募集手続きに入ります。 先ほどお話ししたコンソーシアムがいくつも組成されて、ここで競争入札となります。最終的にどのグループが公共の求めているサービスに一番近いか、また一番コストパフォーマンスがいいかなどについて審査を行い落札者が決定されます。その落札したコンソーシアム(以下、選定事業者)が公共との優先交渉権を獲得し、公共と事業契約の協議/交渉に移っていきます。 事業契約とは、事業を一括で請け負う当該選定事業者が設立するSPCと発注する公共とが、どういった具体的な業務をSPCに委ねるのか、また公共から受注した業務をSPCが履行していくにあたって、公共はどのような対価をどのような方法でSPCに支払うのか、問題が起きたら公共・民間のいずれが対処するのか、その費用分担はどうするのかといったことを規定するものです。 そこで金融機関は、事業契約のうえで官・民それぞれのリスク負担がどちらか一方に偏在していないかといった検証を行います。例えば、地震や天変地異が起きたときに、その負担は全部民間ですと言われると民間としても困るわけです。先ほどもお話ししましたが、金融機関が第三者の眼で事業契約の内容を検証して、適正なリスク分担に寄与します。 事業契約はPFI事業の心臓部に当たる一番大事な契約です。そこで、SPCが一括で請け負う業務を具体的にどのように進めるかが問題になります。すなわち設計、建設、維持・管理を誰が担当するのか。独立採算事業のような運営業務があれば誰が担当するのか。それぞれ業務を分割して、今度はSPCから再委託します。餅は餅屋にお願いする。その餅屋に当たる方々は、SPCの株主であったり、株主として出資はしないまでも協力企業という位置付けで参画される企業であったりします。 金融の目線というのは事業契約の締結後、SPCから再委託をする各契約の内容が、事業契約上、SPCが請け負っている履行義務がつつがなく履行し切れるかどうか、要は穴が無いかを検証します。SPCが公共から一括で請け負った業務を細分化して複数の企業に再委託する際に、委託し切れていない部分があれば、そうした業務の一部やリスクは全てSPCが負担せざるを得なくなります。SPCは、生まれたての赤ん坊と一緒で、過去にまったく業績を持たない新規に設立される会社ですから、実質そうしたリスクは負担できません。したがって、金融機関としては、そうしたリスクがSPCに残らないよう、SPCからの再委託の方法や契約内容にまで立ち入って、SPCが公共から請け負った業務が隙間なく完遂できることを確認してはじめてSPCに対する融資条件が整うことになります。これが実はプロジェクトファイナンスのエッセンスです。こういうことを積み重ねて、ようやく融資契約の調印に至ります。 従来の例えば企業の信用力を評価して融資するコーポレートファイナンス手法とは違い、事業性に着目して融資する仕組みがプロジェクトファイナンスの本質であり、公共の意図する事業継続性にベストマッチするファイナンス手法と言えるわけです。 これまでお話ししてきたリスクという言葉を役割という言葉に置き換えて頂ければわかりやすいと思いますが、公共も含めて、誰がどういう役割を負うかを事前にきちんと取り決めておく。もし、問題が生じたときに誰がそれに手をさしのべるのか、といったことをきちんと契約の中に落としていくことが肝要なのです。ここでご理解頂きたいのは、融資契約調印は、「おしまい」ではなく「始まり」であるということ。先ほどもお話ししましたが、金融機関は契約が終わるまできちんと事業をモニタリングしていきます。事業を始める前に、いろいろと取り決めてきたことが本当に履行されなければ事業の成功は期待できないからなのです。 |
プロジェクトファイナンスは、手づくりのファイナンスと申しました。したがって、公共や民間の関係者が協議を積み重ねていく過程で、話が違うとか、こういうリスクは受けられないという話は、紆余曲折、いろいろな場面で出てきます。そういうものを金融技術も駆使しながらどうやって乗り越えていくかを一緒に考えていくのが金融機関の役割になります。 ですから、事業契約を核にして、SPCが行う業務の実現可能性を高めるための契約上の手当てを金融の観点から助言させて頂く。これが金融の一つの大きな役割です。きちんと手当てをしながら、民間と公共の両者の意向を踏まえてバランスさせていくことが重要ですから、金融はあくまでもニュートラルな立場です。ニュートラルな立場で全体がパッケージとして業務が経済的に立ち行くように金融としてしっかり手当てを行いながら、最終的に融資契約を策定していきます。 仮に全く同じ事業を想定した場合でも、人は一人ひとり顔が違うように、事業に携わる公共・民間それぞれの方々の考え方も千差万別です。こうした関係当事者の意向を汲み上げながら、全体をパッケージとして機能させるために、一件一件手作りで仕上げていくファイナンス、それがプロジェクトファイナンスなのです。 |
プロジェクトファイナンスを組成する上で大事なことは金融機関の早期参画です。できるだけ早い段階で金融機関の意見を聞いて頂くことは極めて重要です。いろいろな段階で金融の目線で行き過ぎを是正したり、リスク分担の在り方についてアドバイスをしたり、公共と民間の協議の中では仲裁役となって問題をうまく乗り越えていったりと、様々なお手伝いをさせて頂く。ですから、先に物事を全部決められてしまった後で、これでご融資していただけますかと言われても、いろいろな問題が後から生じてきて最終的には融資の条件が厳しくならざるを得ないこともあり得るわけです。 本来、PFIであるからには、金融機関も3大プレイヤーの一角として、民間事業者はもとより、公共にも金融機関の助言などを聞いて頂きたいし、公共のお考えを金融機関としてきちんと理解するためにも、事業者選定プロセスの中で協議の場を設けて頂きたいと思っています。 |
![]() |
![]() |
![]() |