一見見えにくい金融の動き

 公共側からPFIにおける金融機関の役割が少しわかりにくいという声をきくことがあります。わかりにくいとすれば、その理由は2つあると思います。
 1つ目は、例えば石油化学プラント事業などの、公共が絡まない民間ベースの大型事業でプロジェクトファイナンスを採用していく場合で考えると、まず主体的にその事業を行いたいと考えている企業がプロジェクトファイナンスを専門に行っている金融機関に相談に来られます。そこで、事業をゼロから立ち上げていくために、どこに気をつけたらいいか、原材料の調達方法から製品の売り先や販売価格の決定メカニズムに至るまで、どのように手当てしていったらよいかなどについて、話を突き詰めて金融機関と民間が一緒に考えていきます。こうしたことがプロジェクトファイナンスの一番大きな特徴的な部分なのですが、このプロセスが外部からは見えにくい。
 PFIに目を転じると、事業発注者としての公共という新たなプレイヤーが登場しますが、公共の立場として調達は公明正大でなければなりませんから事業入札手続も一定の制約を受けることになります。その入札の参加資格要件を有しているのは事業を行う主体である民間事業法人であり、金融機関ではありません。もちろん民間企業は入札にあたって金融機関と事前に協議も行いますが、入札手続において、公共と相対して前面に立つのは民間企業であるため、公共からは金融機関の動きが見えにくいのだと思います。
 2つ目は、もう少し本質的なことですが、現状のPFIは「ハコ物」と呼ばれる施設整備型事業が非常に多いことです。運営の比重が少なく、どちらかというと建物整備と維持管理の比重が高い施設整備型事業のリスクは、ある程度パターン化されているので、民間企業も事業の前提条件がほぼ決まってから金融機関に相談するようになってきています。
 ですから、事業契約の内容をめぐって金融機関が民間企業や公共と協議/交渉するようなニーズはそれほど高くはありませんし、ファイナンスがつかないから大変だというケースもあまりありません。プロジェクトファイナンスは弁護士や事業コンサルタントといった外部専門家の力もお借りしながら進めていくため、どうしても費用が高くなる傾向があります。入札段階では価格面での競争が厳しくなることからファイナンスも安く調達しないといけない、時間も無いといったことから、プロジェクトファイナンスでなくコーポレートファイナンスで調達されるケースも散見されます。
 また、民間が請け負う業務領域に運営要素が少ないことからファイナンシャルアドバイザーを起用する動きもあまりありません。
 つまり、金融機関からの意見をあまり聞かずに民間は入札に臨まれて、実際に落札された段階で、融資主幹事と呼ばれるアレンジャーが起用されてはじめて金融機関が本格的な検証に入るケースが非常に多い。つまり金融機関は民間事業者が落札された段階ではじめて前面に出ていくことになるため、公共からは見えにくいのも一つの理由でしょう。
施設整備型から運営型へ

 現状では、施設整備型が多いため運営に関わるリスクは大きくないですから、金融機関の参画が遅れてもまだ大きな問題にはなりません。
 しかし、近い将来に運営型PFI事業がもっと主流になってきたときには、もっと手前の段階から金融機関に助言させて頂かないとリスクにきちんと対応した契約はできなくなると思います。
 とりわけ特殊な運営が絡むものなどは金融機関による経済性安定化メカニズムの導入が不可欠です。
 運営の色彩が強くなればなる程、早い段階から金融機関の関与が必要となりますし、金融機関にきっちりと話を聞かなければといった思いから、民間側のファイナンシャルアドバイザーの起用を促すことにも繋がっていくと思います。本来エンドユーザーである国民・住民の利益を考えれば、公共にとっても“質”の向上が重要なはずですし、単なる価格競争だけに止まらず一体何が本当に公共にとって必要なのか、その付加価値をどのように民間が創出し、公共がそれを活かしていくか、そうして描かれた民間の事業構想/計画に、金融としてどのようにベストマッチするファイナンスプランをつくっていくのかという本来のプロジェクトファイナンスを指向していく流れに変わっていくのではないか、と見ています。
エンドユーザー(国民)の利益

 金融機関としては、やはり、エンドユーザーである国民の利益になる本当に質の高い事業がよりPFIを利用する価値があると思いますので、そうした事業がもっと出現してほしい。それが、生活に密着した分野で出てくるとより国民にとってもわかりやすいと思います。
 具体的には病院・斎場・介護施設等の運営型事業や、空港、港湾などの大型インフラなどに期待しています。
 また、PFIは民間の商業施設ではなく、あくまで公共の社会資本ですので、事業を潰してはならない。公共サービスはユーザー、あるいは国民に不断に提供しなければならないものなので、運営が絡む事業ともなれば、どの程度のエンドユーザー、すなわち利用者からの収入が期待できるか、事業を頓挫させないためにそうした不確実性の高い収入に過度に依拠しないような事業計画をいかに策定するか、といったマーケットリスクの適切なコントロールが一層求められていくことになります。
 今後ともPFIに関する適切なリスクマネジメントの確立に期待していますが、金融機関としては途中で頓挫させないためのメカニズムをファイナンスプランの中で構築して参ります。こういうことをつぶさに一緒になって考えさせて頂く。事業を潰さないために、金融機関としてあらゆる知恵を使って公共に対しても民間に対しても助言していく。PFIとはそういうスキームです。金融機関は3大プレイヤーの一角としてエンドユーザーの利益のために、事業を潰さない工夫を凝らしていきます。
民間の運営ノウハウを公共事業に

 また、プロジェクトファイナンスを専門に行っている金融機関から見ますと、本来、PFIに期待するところは、公共では出来ない、民間の本当の運営ノウハウを公共側に是非上手に活用・利用して頂きたいということです。施設整備型では正直に言って、想定される業務も限定されていますから、予見されるリスクもわかりやすい。従って価格競争一辺倒になりがちで、全般的にかなりリターンは下がってきます。こうした事業にわざわざ外部専門家を起用し、費用をかけてまでプロジェクトファイナンスを採用することに本当に意味があるのかという思いも出てきます。
 そういう意味では、運営リスクを伴う運営型事業が主流になれば、本来の民間の運営ノウハウの導入とともに、民間資金の投入もより適切な形になると思います。
 これまで公共がご自身でサービスを提供されていた分野に、いろいろな形で民間の運営ノウハウをコストエフェクティブに使っていく。税金の有効活用になるわけですし、民間ならではの運営ノウハウの導入によって、仮に従来型の公共事業と同じ価格であっても、最終的なユーザーである国民に対するサービスの質が非常に高まるといったことがもっと増えていくことに期待しています。
 ただし、日本における公共事業の中には、正直に言って民間に運営ノウハウが歴史的に無い事業もずいぶんあると思います。PFIと言っても限界がありますから、民間で事業運営できないものも出てくると思いますが、そういった事業であれば、PFIをベースに、より踏み込んだ官民協働、いわゆるPPP(“Public & Private Partnerships”)を志向していけば、より質の高い公共サービスの形が見えてくると思います。


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