環境側面の相関図が必要

 日本のISO14001認証取得数は世界でもトップの水準です。しかし、認証取得後のPDCA(Plan−Do−Check−Action)サイクルにおいて何が成果として得られたかという点では、廃棄物の減量化、省エネ、オフィス用紙の使用削減などが前進し意識も変わったものの、本来業務の部分での環境側面の抽出及び目標の設定と達成度の評価が不十分ではないかといわれています。
 これは、企業の持続可能性の3つの側面−トリプルボトムライン−の社会面、経済面、環境面にも実は障壁があることになります。(図−1)

図−1

 企業が、社会貢献活動を行うとき、環境への取り組みが経営的にマイナスになってはいけませんから、当然、投入したコストがいかにビジネスチャンスを生むかを明確に捉える必要があります。ですから、環境ビジネスと呼ばれる新しい分野が、従来の経済的側面の新たなファイナンスとしても効果が表れるようにしなければなりません。
 また、企業を取り巻く社会面でいうと社会関連会計等の中で、環境に対する公的・先行的な負担があって初めて企業は生きてきます。こういう枠組みの中で、個々の企業の行動を捉える必要があると思います。
 パフォーマンスを上げていこうとすると、当然、全ての活動を自社内で行う企業はありません。必ず、上流から資源・部品を調達・購入して、下流で製造・販売して、最終的に消費者に渡していく流れがあります。この一連のバリューチェーンの中で、環境に対する配慮を貫いていくことがなされているはずです。これはアッセンブリー産業としての建設産業についても当てはまるはずです。
 やはり、グローバルな競争に晒されている民間企業、特に製造業ではプロダクトチェーンやバリューチェーンの中に環境価値を反映したマネジメントを的確に行っています。これは、一つの不都合が一事業所にとどまらず企業本体のブランド価値を転落させてしまう重要な支障になるからです。こういう点から見ると、取引先に環境管理的に単に良いもの納めてくれと言うだけではいけません。必ず管理のレベルを上げていかないといけない。
 建設業関係でも環境配慮の相関図を書かないといけないと思いますが、まだ書き切れていません。これには、例えばエコセメントなどの環境配慮資材だけではなく、いずれは各種部品や施工機械などへの環境品質にも拡大していくと思います。
グリーン調達推進の障壁

 一般的にグリーン調達という場合、かなり川下の概念が含まれています。しかし、公共セクターとの関係の強い民間事業者にとっては、むしろ公共セクターが購入する部分の役割が非常に大きいと思います。そこで、まず実態を把握するため、ビジネス分野を対象としたアンケートを実施し、それをもとに港湾関係に限定して、マリコン大手10社を含む港湾土木関係の建設業、地方自治体については港湾部局にお願いしてアンケート調査を実施しました。
 EMS(環境マネジメントシステム)の取り組みの有無については、ISO14001以外の自主的な取り組みもありますが、主流はISO14001です。
 EMSの展開の範囲については、組織全体が多いのですが、地方自治体の場合は、むしろ本庁、支庁などの管理部門のみとする回答が半数ぐらいを占めています。
 EMSがどの段階にあるかについては、マリコン・自治体とも紙・ゴミ・電気等以外にも広く環境実績の目標や進捗の管理を行っている段階とする回答が多数です。ここが非常に進んでいれば問題はないと思います。
 環境への取り組みの運営については、ISO14001もトップのイニシアチブを重視していますから、環境担当役員を設置するなど経営層(意思決定者)が環境への対応の体制を作っている、とする回答が多数です。
 取り組んだ成果が、最終的に技術的側面で施工法や技術選択に活かせるか、あるいは業務の手順の改善につながっているか、については、業務の手順の改善につながるという意見が非常に強い。しかし、行政も民間も工程変更はなかなか難しいことから工程変更に活用した、とする回答は多くはありませんでした。
 取引先から提供してもらう資材や建設工機の環境に関わる情報の交換や意見交換をしているか、については必要に応じて個別に行っている、部分的ではあるが情報を流す仕組みがある、全面的に行っている、といった回答に分かれています。今後、全面的に行う方向に移行していく必要があると思います。
 グリーン調達の取り組みについては、オフィス用品だけではなく、取り組みの実績評価を行っている、グリーン調達の基準を持っている、進めていきたいという回答が多くありました。
 今後のグリーン調達の取り組みについては、取引先の環境配慮を盛り込んで調達を選別して取り組みたいという回答が多いものの、環境配慮の実績を調達の選別に加えるという回答は、民間も行政も少数派です。
 グリーン調達の推進の障害と考えられる点に関する自由回答では、グリーン調達はいいことだけれどもコストが上がる、が全体の過半を占めています。それから、グリーン製品に関する情報不足、土木業界が全体として実績重視の体質である等の指摘。これは安全という側面が非常に強い土木分野の性格が反映していると思います。そういうこともあって品質を満たすグリーン製品が少ない点を挙げる指摘。これは、十分な事業を行うにふさわしい製品のバラエティがないということかと思います。
 回答の中には、当該の企業だけの自己負担にするのでなく、社会的な負担との仕分けをしていく必要があるという意見。グリーン製品の評価をするための第三者機関をつくった方がいいという意見。受注産業という性格から発注者の要求もあり現場により取り扱いに差が生じる問題があるという意見。あるいは、特記仕様書への展開など行政と歩調を合わせた拡大が必要であるという意見。また、取り組みを広げた場合に実績評価が求められることになるが、その作業が負担になるとの意見が報告されています。これらの点は、その通りだと思いますので、さらに具体的なソリューションを出す必要があると思います。


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