RANDOM FOCUS
非破壊検査によるコンクリート構造物の劣化診断
―港湾構造物の定量的な劣化診断技術の現場への適用について―

● 伝播速度や反射波振幅を利用する

 ある高架橋のPC桁のフランジ部分で、コンクリートの超音波伝播速度を測ってみました。A橋はフランジの幅が50cm、B橋はフランジの幅が80cm。桁の軸方向に対して50cm間隔でデータを採っていきました(図-6)。その結果、同じ1本の桁でも数値にバラツキが出ました。それぞれのポイントでコンクリートの品質に関する指標が、これほど明確に数字で表わされるのは、目視検査ではマネのできないテクニックです。

超音波測定の状況
図−6

 そのうちの数点を取って、実際にコアを抜き出して圧縮強度と伝播速度の関係を調べました。そうするとその範囲では良い相関になっていました。こうして超音波伝播速度を測定し、そのうちの何点かのコアを抜き取って圧縮強度との相関関係が調べられれば、それ以外の点についても相関関係に基づいてコンクリートの品質が判断できることになります。
 強度だけではなく、塩化物イオンが入りやすいかどうかという塩害に抵抗するポテンシャルを測るような場合にも、超音波伝播速度は指標になりうるだろうと思います。また、凍結融解作用やアルカリ骨材反応といった外的な劣化作用によってコンクリートの中に微細なクラックが生じたり、あるいは空隙の構造が粗大化していったような場合にも、伝播速度の変化から材料内部の変状が評価できるはずです。
 また、超音波法は、伝播速度以外にも役に立つ特性を有しています。探触子を使って、超音波が最初に入射した時の入射波と、底面で跳ね返ってきて届いた底面反射波の間の時間を測ることで、打継部の欠陥がどのあたりにあるかがわかります。同時に、反射波の波の高さを見ることによって、欠陥の規模が大きいかどうかもわかります(図-7)。

超音波振幅による打継部の欠陥検出
図−7


● グラウトの充填度を推定する

 次に衝撃弾性波法についてお話します。これは鉄の球をぶつけたり、ハンマーで叩いたりしてコンクリート表面との間に機械的に衝撃力を与え、弾性波を入力する方法です。超音波と比べてエネルギーが大きく、低周波領域の弾性波になります。また、弾性波がコンクリート中で弱まることがなく、長い距離伝播することができます。衝撃弾性波法における弾性波入力方法と周波数の関係を見ると、衝撃弾性波法の周波数分布は、超音波の場合の周波数分布とはかなり違うことがわかります(図-8)。

衝撃弾性波法における弾性波入力方法と周波数の関係
図−8

 衝撃弾性波法の実際の適用について考えてみましょう。ポストテンション方式のPC部材におけるPC鋼材の周囲のグラウトは、これが詰まっていないと鋼材が錆びるという問題があります。そこで、グラウト充填率が0%のPC部材と100%の部材について、それぞれの弾性波の伝播挙動を解析してみました。すると0%のものでは波は鋼材だけを伝播するものとコンクリート部分を伝わるものとに分離しました。一方、100%のものでは、同じように鋼材の先端から打撃を行っても、鋼材部分とコンクリート部分とが一体となって動いてしまい、鋼材部分だけを抜け出していくことはできません。それに伴って伝播速度も遅くなってしまいました。
 実際の構造物で弾性波の伝播速度を測る時は、PC桁の受振側に振動センサをつけて反対側にもセンサをつけます。そして、鋼球棒で打撃を与え入力側と受振側のセンサで受振された波形を記録し、その時間差を読み取ることで速度を設定します。
 続いて、スラブ供試体でグラウト充填度と伝播速度の関係について実験をしました。供試体では、グラウト充填度は、0、25、50、75および100%としました。そして供試体における鋼棒端部にインパクトを与えて伝播速度を測った結果、充填度が0%の時は速度はかなり速くなりました。これに対して100%の時は伝播速度は遅くなりますが、面白いことにグラウトの充填側を打撃しても未充填側を打撃しても、同じグラウト充填度の場合での実験結果はほとんど同じになりました。このように充填度が0%の時に伝播速度がどのぐらいで、100%の時にどのぐらいかをきちんと把握していれば、任意の場合のグラウト充填度を推定することができる可能性があります。そのあたりはさらにデータを集積して、今後検討することが必要でしょう。



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