RANDOM FOCUS
非破壊検査によるコンクリート構造物の劣化診断
―港湾構造物の定量的な劣化診断技術の現場への適用について―

● 波形から数字を引きだす

 非破壊検査とは、物を壊さずに物体の内部の情報を得る方法です。ただし、それはあくまでも推定による方法であって、不確実さを含むことを認識しておかなければいけません。構造物の点検・調査に非破壊検査を用いるメリットは、構造物の損傷を伴わず、使用性能への影響を最小化できる点です。また、構造物の状態を定量的データで表せるので、劣化のグレーディングをしたり、劣化予測をする時のインプットデータとして用いるのに役立ちます。さらに、早期段階での変状を検出するために非破壊検査を用いれば、劣化予測の精度が向上し補修のコストも低減します。
 コンクリートの非破壊検査には様々なものがありますが、そのうちの弾性波法についてお話します。弾性波と振動との違いは何か。振動は、ある点が最初にあった位置から変位を起こして位置を変えていくものですが、弾性波は、その点の位置の変動が平面的あるいは三次元的につながって伝わっていくものです。時間とともにその状態が変わることで、一見波のように見えるわけです(図-1)。
 地中に埋まったヒューム管のある点に衝撃を与えると、どんな変異が起こっているか弾性波の波形を出すことができます。もしもヒューム管にひび割れが入っていたり、ヒューム管の厚さが何らかの腐食で薄くなっていたりすれば、この波形に反映されます。つまり、波形の情報から劣化の内容を数字で引き出せるのが弾性波法の特徴です。

衝撃によるコンクリート管の弾性波掌動
図−1

 弾性波法で、物体内部の情報を取り出してくる際にどういうルールを使うかというと、我々がよく使う評価のための指標としては、伝播速度、波形の振幅、周波数の特性等がありますが、最も基本的なものは伝播速度です(図-2)。例えばコンクリートの表面をハンマーで叩くと、少し時間が経つと縦波、横波、表面波が球面状に伝わってきます。その中で最も早く伝わるものが縦波です。縦波はコンクリートの弾性係数、密度、ポアソン比といったその物体固有の材料の乗数に応じた速度でしか伝わりません。つまり、コンクリートの材料の定数がわからない時に、とりあえず衝撃を与えて縦波の速度がどのぐらいかを計測すれば、コンクリートの中身がどうなっているのか推測できる可能性があるのです。

弾性波の特性(伝播速度)
図−2

 また、反射と透過という特性もあります(図-3)。弾性波は壁があると反射しますが、ただ反射するだけでなく、その強さがあるルールで決まっています。媒質Iと媒質IIがあって、平面波がその境界面に向かって伝わってきて突入すると、境界から先に透過していってしまう成分と反射をする成分があります。その反射の割合は媒質Iと媒質IIの音響インビーダンスの差によって決まります。音響インビーダンスの差が大きいほど反射が大きくなり、小さいほど反射は小さくなります。したがって、この特性を使えば、コンクリート内部の空隙が評価できることになります。

弾性波の特性(反射と透過)
図−3


● 推定値は一定範囲内で使う

 弾性波法には超音波法、衝撃弾性波法、打音法、およびAE法といった分類があります(図-4)。

弾性波法の分類(JCI:学会示方書に例示)
図−4

 まず最初に、超音波法の基礎と現場への適用についてお話します。超音波は圧電素子で作った超音波探触子を使って発振・受振を行います。超音波探触子の特徴は圧電効果を持っていることで、電気的エネルギーを機械的なエネルギーに変換することができます。その逆も可能です。また、探触子の配置法には、2探触子法と1探触子法があります。2個の探触子によって超音波の発振と受振を行うのが2探触子法、1個の探触子のみで発振と受振を兼ねるものを1探触子法といいます。
 コンクリートの圧縮強度と超音波伝播速度についてJonesの40年前のデータによれば、圧縮強度が高くなればなるほど伝播速度が大きくなる相関関係が見られます(図-5)。しかし、このデータはセメントの量や砂の量などの配合を限定した範囲内でのものです。つまり、限定された範囲内では確かに圧縮強度と伝播速度に相関があり、伝播速度を求めれば強度が推定できそうではあるものの、もしも日本全国の港湾施設からコンクリートのコアを集めて、圧縮試験をする前に超音波の伝播速度を測ったとしたら、おそらくあまり相関のない結果になるのではないかと私は思います。現場で超音波法を用いる際には、あくまでも一定の範囲内で推定値を使うことに意味があることを念頭に置いたほうが良いでしょう。

圧縮強度と超音波伝播速度
図−5



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