RANDOM FOCUS
木と人間をつなぐエクステリアウッドの可能性

● 木の特性を生かしたアメニティー向上

 エクステリアウッドとは、屋外や厳しい自然環境下で使用される木材、木製品ならびに住宅以外の構築物といった意味で捉えています。従来、木材が屋外で使われる例としては電柱や枕木などの低い加工程度で大量に使うものでした。そうした中で、次第に温かみがある、環境に馴染む、柔らかいといった木の持つ特性を生かして、アメニティーを向上させるために屋外で構築物をつくるというコンセプトのもとに、木材が使われ始めました。そこで使う木材はかつては広葉樹材が多かったのですが、日本では杉や檜といった針葉樹材の蓄積が多くなったために、それらを有効利用しなければいけない事情もあって、1980年代後半からエクステリアウッドが脚光を浴び始めたわけです。

 当時の海外の事例を調査してみると、すでにかなりの場所で木材が使われていました。特にウォーターフロントでは木を再利用して使うケースが多く見られました。つまり、このような場所には昔から木造の倉庫がたくさんあったために、それらを解体して出てくる古い木材を再利用して、デッキや浮き桟橋、ベンチ、その他様々な木製の構造物をつくることが多かったのです。それ以降90年代から現在に至るまで、屋外の様々な場所で木がたくさん使われています。

● エクステリアウッドの特性

(1)耐久性
 エクステリアウッドでまず問題になるのは耐久性です。耐久性の面では国産の針葉樹はやや劣る面があります。そのため外国の比重が高いもの、例えばボンゴシなどの広葉樹の重厚な材料が輸入されて使われています。これらは耐久処理をしなくても使えるという触れ込みで入ってきたもので、確かに耐久性には優れています。ただ現実には、木製の遊具、ベンチ、あずま屋などの公園施設に限って考えると、木があまり長く持っても飽きてしまう。ある程度のサイクルで新しいものを導入したほうがいい。

 そうした考えが主流のようです。したがって、公園施設では、エクステリアウッドの耐久性は10年を目標に考えられてきたのが現状です。もちろん橋などの土木重構造物は50年程度の耐久年限を要求されますし、木はメンテナンス次第でそこまで持たせることも可能です。

 エクステリアとして使う木材の防腐処理については、アメリカあたりでは基本的に屋外で使われるものは防腐処理をすることが多いようです。ただし、広葉樹で腐りにくい木があり、そうしたものは防腐処理をせずに使います。それに対して針葉樹材は防腐処理をした上で使うのが一般的です。

 防腐処理に関しては、かつてはCCAという銅、クロム、砒素が含まれている防腐剤が有効で、屋外で使われる木材に関しては世界中で使用されていました。しかし、最近の環境問題から、多少耐久性は落ちても環境に優しい防腐剤をということで、7〜8年ほど前から毒性が低い薬剤を使うようになっています。このように徹底的に防腐処理をしてある程度耐久年限を延ばすという方法に加え、物理的な設計段階で水がたまらない、あるいは水がかからない構造設計にする方法もあります。腐るのは仕方がないがすぐに腐っては困るので、ある程度の耐久年限を持たせるような設計をするわけです。

 木がなぜ腐るか。木材から水分が飛ぶと乾燥によって割れてきます。その割れ目に雨などの水が入ってきます。そのため木材の中の水分状態が高くなって、腐朽菌が繁殖しやすくなってしまう。そこを腐朽菌が侵食することで内部が空洞化していくというメカニズムです。したがって、腐れを防ぐには、まず水を排除して高い水分状態にならないようにしなければいけません。例えばカバーをかけるとか、キャップをかぶせるとか、そうした工夫によっても耐久年限は数年延びるのではないでしょうか。

 また、メンテナンスしやすい構造設計にしておくことも大切です。例えばウッドデッキをつくった場合に、1枚だけ割れてしまった時にすぐに取り替えられる構造にしておく設計上の配慮があれば、木製品の耐久性は延びていくと思います。

 木の構造物を導入するのは役所などの公共機関が多く、従来はイニシャルコストのみを考えて、その後のメンテナンスに関しては、発注者側は全然予算を付けていませんでした。そのため、業者がメンテナンスも含めてカバーしなければいけなかったのですが、メンテナンスにもお金をもらえるような形ができれば、木の良さが長く持続すると考えられます。そのあたりも今後の課題だと思います。
実験棟にて

(2)色彩
 木材は屋外に置かれた場合に、設置から年を経ると色彩が変わってきます。木材の色の多くはイエロー・レッド系の色彩ですが、紫外線の作用によってだんだん灰色っぽくなっていきます。ですから、設置される周囲の景観とのバランスを考えて、そうしたカラーコーディネーションを設計段階で知っておく必要があると思います。また色の退色を防ぐ表面処理や塗装技術も開発されています。

 また、色に関しては鉄汚染も問題です。木材を接合するには釘やボルトといった金属が使われますが、木は特に鉄に反応して黒っぽい色を出します。これが汚く見える場合があるので、ステンレス製のものを使うといった配慮が必要になることがあります。

(3)強度
 木材の強度については、実は伐採後100年、200年後に最も強い強度を発生するという研究報告もあります。しかし、風雨が当たっている状況での木材の強度の変化を考えると、時間とともに強度は落ちていくというのが一般的な考え方だと思います。実験によると、ウッドデッキなどを10年間曝露した前後の曲げ強さを測定した場合、1割から2割程度の低下が見られたようです。この理由は様々あると思いますが、基本的には木材の重量は腐朽によって減少していきますから、もしも腐朽していれば密度自体も低くなっていく。つまり、強さは密度に比例するので、密度が低くなれば強度も落ちることが考えられます。

(4)イメージと歩行性
 マリーナの浮き桟橋のデッキ材として木を使うプロジェクトがあって、使用する人に浮き桟橋の歩行面として木が良いのか、グラスファイバーやFRPといった他の材料が良いのかを聞いてみました。すると、やはり木が良いというのです。マリーナやヨットハーバーは元々リゾート地に多く、木はそうした場所にマッチしているというイメージ的な評価を受けたと考えられます。

 次に、マリーナの浮き桟橋の上は歩行面ですから歩行性が問題になります。人間が歩きにくい材料では困るし、浮き桟橋の場合は波によっての揺れや傾斜があり、波をかぶることもありますから、その時に滑ってしまうような歩行面では良くありません。そこで、様々な材料を使って、実際の人の歩行を再現する機械によって滑り摩擦性能を測定し、それに関連する感覚的な滑りやすさも測定する実験を行いました。そうすると、木が水に濡れても極端に滑りやすくなるという結果は得られませんでした。また、あまり滑らなくてもつまずいてしまいますが、木はその点でも問題はなく、濡れても歩行に危険な状態にはならなかったという実験結果が出ています。

(5)リサイクル
 木材はリユースやリサイクルにも向いていると思います。リユースでは、例えば木でできた港湾の倉庫を壊すと木材が出ます。室内ならそれほど強度劣化もないでしょうから、それはそのまま同じような梁材として使えるはずです。したがって、解体して建てる間にほとんどエネルギーはいりません。木材の再利用に関わるエネルギーは、材料全体の中でも低いほうでしょう。

 木材のリサイクルは、チップにして再生紙にする場合もあるし、ボードにして建築材料に使うこともあります。その後はゴミにして捨てる。あるいはまた砕いて紙をつくるところまでいきます。したがってリサイクルにも適していると考えられます。

 ただし、建築廃材の出し方の問題があります。学問的には、大きな木材がだんだん小さくなって、紙やボードになって、最後は焼却するという多段階のリサイクルシステムが確立されていますが、実態としてはなかなか難しいと思います。住宅を解体した時に、例えば石膏ボードと木を分別する解体システムをつくろうとしていますが、現実にはまだ機械でまとめて壊してしまうケースが多い。そうするとリサイクルどころではなくなってしまいます。今後はきちんと分別解体する方向に持っていくべきです。木材のセールスポイントはリサイクル可能で、その時に投入するエネルギーが少ないこと。ライフサイクル・アセスメントを考えると他の材料に比べて有利であり、そのメリットを生かすためにも、きちんとしたリサイクルシステムを確立していく必要があると思います。


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