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ガバナンスを効かせて 行政の情報化を

●誰のためのIT戦略か?
川島  先日(2006年8月28日)はSCOPE講演会で「建設業におけるIT戦略」を講演していただきありがとうございました。SCOPE NETとあわせて講演録をお送りいたしますので、読者の方にはぜひご覧いただきたいと存じます。
   大成建設で取り組まれたIT戦略では、情報コストをそれまでの30%コストダウンしたわけですが、この戦略における社内の役割分担はどのように決定したのでしょうか。

木内  IT戦略を進める上で、一番重要なことは誰がシステムをつくるのかというところです。従来は、大型の汎用コンピュータをベースにシステム部門が業務の設計をしていました。しかし、実際には業務や事業内容をよく理解している人が設計しなければ良いものはできません。それは誰か。実際にシステムを使うユーザー側の人たちです。しかし、ユーザーはシステムの設計はできませんから、ユーザーが業務設計の主体となりシステム部門はあくまで手助けをする形でシステムづくりを進める役割分担が重要になります。
   私どものIT戦略におけるシステムの再構築では、結果的に大型コンピュータを捨てて、一から全てシステムをつくることになりました。そのため、全体像を描くことによって社内の仕組みがわかりましたし、それをどのようにした方がよいのかがよくわかりました。

川島  港湾の入出港手続の電子化が動き出したきっかけは、当時の担当大臣や経済界からの強い要請があったからと聞いています。6省庁にまたがる計画でしたが、強い要請を追い風にして足並み揃えて動きました。大成建設のIT戦略では、そのような主導権の役割はトップが行ったのでしょうか。

木内  はい。やはり基本的にはトップがどのような意識を持つかで、その後の動きは大きく変わると思います。
   大成建設の場合、まず情報コストがかかりすぎるという問題の指摘が経営層からあり、そこから見直しが始まり、結果的に社内システム全体を見直していく動きになりました。その時にシステムだけではなく仕事のやり方が変わらなければ何も変わらないということから、IT戦略と業務改革活動の2つのプロジェクトを動かしたわけです。
   業務改革は、社長室にそれを推進する10人くらいの選任チームをつくり、間接管理部門を中心に改革に取り組みました。IT戦略は、発生時点処理をコンセプトにシステム総ぐるみの再構築を行いました。

川島  そのメンバーには、各部署の実務経験者は入っているんですか。

木内  システム部門出身が多いのが実態ですが、それではやはり不都合が生じますので、管理本部から1名、建築・土木から各1名、部長、次長クラスの方に加わってもらいました。特に大きなプロジェクトを進める上では、このような人たちがいないと社内外での調整−いわゆる根回しができません。トップダウンで動くとそのような人材も出してくれます。最初11人だったプロジェクトチームは、全体のシステム改造の軌道が見えてきて、最終的には33人くらいまで増やしました。人員削減が叫ばれる中でしたが、3倍の人を集めることには全然反対されませんでした。

川島  IT化を進めていく上で、念頭に置いておく一番重要なこととはなんでしょうか。

木内  利活用することです。業務をどうするかというデザインが決定した後、実際には、ここでもう一繋ぎあります。それは業務デザインを情報システム化するという作業です。これはシステム部門の役割です。つまり業務デザインをシステムとして最適化するわけです。実際のプログラミングはベンダーに発注するわけですが、できあがったものをユーザーも立ち会いの上で一つ一つチェックして展開していくわけです。

川島  ユーザー側から見れば、自分で入力するといったワンクッションが加わるわけですか。

木内  そうですね。特に今回のシステムの再構築では発生時点処理をコンセプトにしました。全社員が各自でデータを入力する仕組みにしたわけです。個人から見ると負担が増えます。しかし、プロセスを見直しトータルでは少ない人数でも動けるようになります。このようなことの積み重ねがコストのかからない経営の仕組みづくりに反映してくるわけです。
   また、工事契約の決裁は全て電子決裁に変え、いままでの持ち回り決裁から、電子的な処理による同時並行決裁という仕組みにしました。決裁は通常3人の承認が必要なのですが、順序は問わない、3つ揃えば決裁済み、揃わなければ決裁中という情報が見える状況にしたわけです。今では大半は3日以内と短期間で決裁が済むようになりました。この決裁方法を採用した理由は単純です。社内の決裁過程を振り返れば、実際は事前にミーティングをしていてシステムに上がった時点で決裁の意思決定はもう済んでいるはずなのです。要するに画面を見て意思決定をしているわけではなく、確認をしている。そのため、同時並行決裁でも問題はなかった。

川島  決裁はもう済んでいるという考え方は面白いですね。IT戦略を実施した結果、社内ではどのような評価なのでしょうか。

木内  やはりやって良かったという声が多いですね。いままでの業務処理の多くがシステム処理できるようになり、決算の早期化や作業所の決算業務などもずいぶん負担が軽減できました。そういう意味ではもう以前の環境には戻れないと感じていると思います。



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