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海外の港湾管理者を対象にアンケートを実施し、港湾関係の公共事業の実施について基礎的な実態調査を行いましたので、その概要について紹介します。なお、今回は、「港湾工事の積算手法(施工単価方式を中心に)」及び「港湾施設の維持管理手法」について調査を行いました。
平成17年9月〜12月に、海外の港湾管理者を対象にアンケート調査を実施しました。7カ国22港湾の在日代表事務所に調査依頼文を送付し、3カ国8港湾から調査協力の回答を得ました。回答のあった各港湾の担当部署に調査アンケートを送付したところ、最終的に2カ国(米、仏)の3港湾から回答を得ることができました。
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| 今回の調査にあたり収集した規定、マニュアル類 |
(1)入札・契約方式
海外の港湾工事の積算手法の調査にあたり、前提条件となる入札・契約方式についても併せて質問しました。その結果を、日本の方式と併せて表−1に示します。各国の入札・契約方式について、例えば、同じ一般競争方式であっても、具体的な手続きは米国と仏国
ではそれぞれ異なります。また、米国内でも、連邦政府の公共調達については基本となる連邦調達規則(FAR)を定めていますが、各港湾は各州の法律に基づいて独自の入札・契約制度を定めています。しかし、ここでは便宜的に同じ書き方にしています。
| (1) |
発注方式は、米国の2港では一般競争入札を、仏国C港では一般競争入札と指名競争入札を採用しています。 |
| (2) |
落札方式は、米国の2港では最低価格落札方式を採用しており、A港においては総合評価落札方式も併せて採用しています。仏国C港では総合評価落札方式を採用していますが、特定のプロジェクト等では、交渉方式も採用しているとの回答がありました。 |
| (3) |
契約方式は、3港とも工事全体の工事価格(総価)と同時に個々の施工項目に対する単価(施工単価)についても契約対象とする総価契約単価合意方式を採用しています。米国A港、仏国C港では単価契約も併用しています。 |
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| 表−1 入札・契約方式の比較 |
(2)積算方法
積算目的や積算方法等に関するアンケート結果について、日本の内容と併せて表−2に示します。施工単価方式などの積算方法も、各国でまったく同じというわけではありません。また、米国や仏国にはいわゆる上限としての予定価格制度は存在しません。予算管理上の目安として予定価格を設定しています。このため、積算そのものの取り扱いに日本と大きな差があります。
@積算の目的は、必要な予算の確保であり、その目安としての予定価格を算出し、予算の管理、入札価格の評価等に使用しています。
| (1) |
3港とも施工単価方式(過去に行った同様な事業の入札単価を参考にする)を採用しています。米国A港では積上げ積算方式も併用しています。また、米国の2港では建設物価資料等(刊行物)の単価も利用しています。 |
| (2) |
間接経費は、3港とも、直接工事費に率を掛ける計上方法です。直接工事費と間接経費の具体的な仕分け方や、間接経費の詳細な算出方法については、今後追加で調査していきたい。米国B港では、間接経費は積算単価に含まれているとの回答が併せてありました。施工単価方式の場合、間接経費は各施工項目の施工単価にも含まれていると考えます。この内訳の詳細も、今後の調査で明らかにしていきたい。 |
| (3) |
積算者は、3港とも主に直営です。米国の2港ではコンサルタント等への外注を併用しています。 |
| (4) |
工事代金の支払は、3港とも部分払いを採用しています。支払頻度は月ごととしています。 |
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| 表−2 積算方法の比較 |
港湾施設の維持管理に関するアンケート結果を表−3に示します。維持管理手法についても、今回の検討対象は係留施設を想定しています。欧米では、防波堤や航路等の維持管理を国が直接行う場合が多いので、このような施設の維持管理は、今回の調査結果には含まれていないとみなしています。
| (1) |
施設の点検・診断については、3港とも定期的に実施しており、点検マニュアルも保有するとの回答を得ました。我が国の代表的なマニュアル対応するものとして、例えば、米国では、陸軍工兵隊が港湾施設を対象とした維持管理に関する基準を公表しています。その中で、点検の方法や頻度等を記述しています。米国の港湾管理者はこのような基準類を参考に維持管理マニュアルを策定していると推察できます。
A |
| (2) |
LCC分析の必要性を、米国の2港とも認識していますが、A港ではLCC分析に基づく評価はなされていません。仏国C港でもLCC評価を採用しています。調査に先立ち、収集した連邦道路庁発行の「アセットマネジメント概要書」や陸軍工兵隊の資料などでも、LCC評価の説明が記述されており、米国でのLCC評価の認識度は高いようです。 |
| (3) |
施設の劣化予測もなされています。我が国との自然条件等の違いについて配慮する必要がありますが、その技術的内容を詳細に調査する必要があります。 |
| (4) |
施設の補修等の優先順位は、1)アセットマネジメントに基づく判断と、2)悪くなった施設から優先するといった考え方が併用されているようです。 |
| (5) |
米国B港ではアセットマネジメントシステムを構築しているようであり、仏国C港では独自のシステムを検討中であるとの回答が得られました。 |
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| 表−3 港湾施設の維持管理の実態 |
調査の結果、海外では、港湾工事において施工単価方式の積算手法を導入している事例があるとの回答がありました。今回は、港湾管理者を対象としていますので、比較的小規模の工事を実施している場合が多いと考えます。特に、欧州では新規の港湾整備は限定されています。このような工事に、積み上げ積算方式を採用しない事例が多くあると推測します。
今後、これらの事例が、日本型のユニットプライス型積算方式の導入に向けて参考にできるように、各国の制度や対象工事の詳細について調査し、特徴を把握することが必要です。また、国による政策や取り組みについても、併せて調査する必要があります。
ただし、今回の調査にあたり、少数の港湾管理者からしか協力の回答が得られませんでした。これは、入札・契約に係る質問を文書で回答するように依頼したことに対して、相手側が抵抗感を感じていることが一因と推測されます。このため、今後、アンケート調査で得られる情報には限界があり、現地での聞き取り調査等が有効となるでしょう。
また、一部の港湾管理者では、港湾施設に対するLCC分析やアセットマネジメントシステムの構築が図られているとの回答がありました。港湾施設の維持管理手法については、実際の維持管理の現場を訪問して、施設管理者と利用者の関係構図、点検マニュアル、LCC分析およびアセットマネジメントシステム等の詳細な実態を把握していくことが必要です。
これらの海外調査結果を通じて、我が国における港湾関係の公共事業の実施に向けた検討に資することとしていきたい。
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