港湾における底質ダイオキシン類分解無害化処理技術について

1.はじめに

 港湾等水域における底質土砂のダイオキシン類は、焼却灰又は工場排水等に起因するものが様々な流入経路を経て最終的に堆積したもので、比較的高濃度のダイオキシン類が検出されています。
 ダイオキシン類の分解無害化処理技術は国内・国外の企業等が技術開発を進めていますが、汚染底質に適用した事例はほとんど無く、わずかに室内試験レベルでの基本的な効果確認事例が数例見られるのが現状です。このことから一定規模での実証実験を行うことでその技術レベルを検証するとともに、底質のダイオキシン類分解無害化を実施する事業者が技術を選定するための基礎資料としてとりまとめることとしました。
 ダイオキシン類の底質汚染に関しては、環境基準が平成14年9月に施行されたことにより基準値を超える底質が確認された場合、その対策を講ずることが必要となりました。
 しかし、港湾に堆積した底質は、一般の土壌と比較して水分と細粒分が多く、また有機物や塩分を含むことから分解無害化の技術的難易度が上がる要因になっています。
 本調査の対象とする技術は、民間企業が開発した技術を公募により選定しました。応募39技術のうち評価項目(「信頼性」「安全性」「経済性」「現地条件への適用性」「実績」)により25技術を一定レベルにあると評価し、実験は21技術について実施しました。(残り4技術についてはスケジュールなどの理由により実験未実施)
図−1 ダイオキシン類影響経路模式図
図−1 ダイオキシン類影響経路模式図
2. 技術の検証

 底質のダイオキシン類含有量の環境基準値は150pg-TEQ/gです。ただし、最終処分方法によっては1,000pg-TEQ
/gと3,000pg-TEQ/gでの評価も有効であることから、この3つの指標で評価を行いました。実証実験を行った21技術の基準達成状況は表−1のとおりです。
 この他、処理過程において発生する排ガス・排水・ばいじん等についても採取し、ダイオキシン類の分析を行い、安全性を検証しています。
表−1 基準濃度達成状況
表−1 基準濃度達成状況
3. 「港湾における底質ダイオキシン類分解無害化処理技術データブック」の概要

 実験成果はデータブックとしてとりまとめており、5章立ての内容を以下に示します。
1)底質ダイオキシン類の分解無害化処理
 底質ダイオキシン類対策の基本的考え方、最終処分方法の選定フロー、環境基準値及び底質の特徴などを記述。
2)分解無害化処理技術の分類と概要
 公募・選定した25技術について、無害化の原理や特徴から「焼却(焼成)法」「溶融法」「低温還元熱分解法」「酸化雰囲気低温加熱法」「化学分解法」「溶媒抽出法」「バイオレメディエーション」の7つに分類し、それぞれの概要・特性を記述。
3)分解無害化処理技術の選定方法
 「信頼性」「安全性」「技術的な優位性」「現地条件への適合性」「経済性」を要件として、分解無害化処理技術の選定手順をフローにして記述。
4)分解無害化処理技術の検証
 実証実験を行った21技術の実験結果などについて、以下の項目・観点等でとりまとめを行いました。
(1) 各技術について、処理システムフローを示し、処理の流れがわかるように、また、処理底質・排水・排ガスなどの排出物の測定箇所を記述。
(2) 実証実験による処理結果
処理底質のダイオキシン類濃度、処理過程における排ガス・排水・ばいじんに含まれるダイオキシン類濃度、処理量などを記述。
(3) 実験条件・方法など
処理工程の加熱温度、滞留・運転時間などの実験条件、排水・排ガス・ばいじんの発生量、燃料消費量などを記述。
(4) 前処理方法
処理プラントへ投入する前段階で汚染土を乾燥・解砕など前処理をする場合はその方法と、その時に発生する乾燥排ガス・凝縮水量などを記述。
(5) 処理底質の性状
処理後の底質を有効利用する観点から、含水比などの物理的性状を記述。
(6) 異性体分布の変化に着目して、加熱処理方式及び溶媒抽出法における、ダイオキシン類の分解無害化のメカニズムについて記述。
図−2 処理システムフローの一例
図−2 処理システムフローの一例

5)実用化に向けて
 実証実験を実施したことによって判明した各技術における課題と、その改善案について記述。
 また、今回の実証実験は処理能力を概ね20kg/hrと規定して行いましたが、事業実施段階では処理能力が大きくなることが想定されることから、スケールアップに向けての課題についても記述しています。
 各技術の所要コスト(設備費、運転費、産業廃棄物処理費、経費)については条件を一定にして試算しましたが、システム規模・運転条件など、必ずしも同一とはなっていないことから、工費試算結果については『A:10万円/トン以下』『B:10万円/トン超』の2つのランクで記述しました。この結果、Aは17技術、Bは3技術となりました。(残り1技術については試算できていない)

4. おわりに

 平成15〜16年度における実証実験等の結果をデータブックとしてとりまとめ、平成17年3月31日に当事務所のホームページ上で公表しました。
http://www.pa.hrr.mlit.go.jp/gicho/)
 本調査は富山県富岩運河の底質を試料として実験データを整理したものですが、現地底質の特徴としては(1)ダイオキシン類濃度が高い(2)シルト分が多い(3)海水の影響がある(4)重金属濃度が高い、等があり、開発途上ともいえる「底質ダイオキシン類分解無害化処理技術」の中で貴重なデータを得ることができたと言えます。同時に、改めて「分解無害化技術の課題」が明らかとなりました。
 実験の実施並びに本成果をとりまとめるにあたっては「底質ダイオキシン類無害化処理技術調査委員会(委員長:清水誠東京大学名誉教授)」の委員から多大な御支援並びに御助言を戴いたことに対し深く感謝し、また、実証実験にあたり、対象とした21技術の応募者から多大な御協力を戴いたことに感謝する次第です。
写真−1 委員会開催の様子 写真−2 実験装置の一例
写真−1 委員会開催の様子 写真−2 実験装置の一例
 今回とりまとめたデータブックが活用されることで底質ダイオキシン類対策を行う事業者の一助となれば幸いです。


Back Contents next