SRの国内外の動向及び今後の展望について
CSR調達

 企業のCSR活動を第三者が客観的に評価する。例えば、公共事業において建設業者の入札参加資格を見直す際に、経営力の評価や技術力の評価以外にCSR活動を評価基準としたときにどのような尺度で評価できるものなのか。一つの尺度としてCSR調達の基準を持っているかを評価する方法があると思います。
 これは、品質マネジメントや環境マネジメントのような特別な評価基準を求めていることではありません。
 例えば、ヒューレット・パッカードが始めて、去年からDELLやIBMなども賛同して共通のプラットフォームとして取り組んでいるものに、エレクトロニクス・インダストリー・コード・オブ・コンダクトというものがあります。これは、世界中のサプライヤーと協力してCSRを達成しようという試みで、(1)労働対策、(2)従業員の健康・安全対策、(3)環境対策、(4)マネジメント・システムの確立、(5)倫理の5つの項目をサプライヤーに求めるものです。このような形でCSR調達基準をつくる企業が増えはじめています。
 自社の管理だけではなく、サプライヤーの管理もできなければだめだということです。トータルに考えなければいけませんから、サプライヤーとの契約を打ち切ることではなく自分たちの問題として取り組むということです。

CSRには市場の成熟が必要

 CSRに取り組めば収益があがるのか、逆にマイナスにならないか、という問いがあります。これは非常に難しい問題です。結論をいえば市場がどこまで成熟しているかということです。つまり、CSRに関することを市場が一切評価しないとすれば、余裕のある企業でなければCSRを達成することはできません。アメリカやイギリスもまだSRIは市場の中心ではありません。しかし、だんだんそういったことが求められています。
 日本のSRIファンドは現状ではほとんど市場にインパクトを与えていません。全部を合わせても約1400億円。投信全体の0.4%程度です。これでは市場に影響を与えない。現状では、ファンドに組み込まれた、インデックスに組み込まれた、ということが企業のレピュテーション(評価)につながるという判断です。まだ、SRIも市場が広がっているとはいえません。日本の企業を厳しくチェックするほどNPO/NGOが育っているわけでもない。また消費者の目もそれだけ成熟していない。だから非常にいびつな状況です。グローバルには求められていますが、国内はそのような状況でアンバランス感があります。ただし、日本の企業は取り組み出せば早い対応を見せます。
リレーション全体の統括が評価に結びつく

 CSRに取り組む上で、特に建設業界に期待することは、まず、最低限のコンプライアンスを守ることです。また、どうしても自然環境に対して何らかの力を加えたり、あるいは、産廃もたくさん出てしまったりもする。公共事業は人間が社会の中で生きていく上で必要なことです。しかし、例えば産廃一つをとっても業者がきちんと処理しているかをフォローし切れていたか。スポットごとの問題を個別に対処していたのではないか。やはり全体の中で持続可能な日本の経済社会をつくる礎になるような視点が必要なのではないでしょうか。
 CSRは、最終的には、企業のレピュテーションの問題に行き当たると思います。これは株主からのレピュテーションだけではありません。いろいろなステークホルダーがいます。投資家や株主以外にも企業には従業員、取引先、また地域社会の関係もあります。これら全体をトータルに高めることが求められています。このステークホルダー・リレーションズ全体を統括していくことが、企業の評価に結びつく時代になり始めていると思います。
 各企業が自分たちの問題として取り組まざるを得ない状況が広がりつつあると思います。これがグローバルな流れだとすれば後戻りできない動きではないかと思います。


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