地域主体で地域に責任を持つという観点から、鉄道事業を事業者といっしょに勉強する機会がありました。 一般的に民間企業も地方自治体も、最近は社会的責任という言葉をよく使うと思います。しかし、社会的責任は簡単に全うできるものではありません。この共同研究では、このBeyond compliance(要求を超えた)とは何かを明らかにしていきました。 共同研究のスタイルは、外部から見ないで、現場へ実際に足を運ぶ。そういう本来的な取り組みを共同で行い、その過程で環境報告書をつくるということ。従来、環境報告書をつくるというと、多くは机上で議論するタイプになりがちです。それではだめだと企業側から言ってくるわけです。 この研究は、企業から相談に来られた担当の方から提案されました。企業全体がそういう気持ちを持っていたわけではありません。狙いは職場が元気になる、創意工夫が活かせる組織・企業にしたいということでした。 そこで、まずマーケットや社会からの声と目を常に意識しようということから始めました。 それから、環境影響については気付きがたいリスクに目を向けないといけないということから、独自の環境管理システムつくりを行いました。 ISO14001認証は、車両工場で取得していました。しかし、全社一体で取る気持ちはないということでした。全社一体とすると管理部門が取得して、各部門ごとに事情が違うのに統一してしまう傾向が出てしまう。独自性を追求するには、組織分化で作業現場は違うため、いろいろな現場を見る必要があります。これを実行しました。 この作業を始めるときに、鉄道事業者の方にご理解いただくためにこんなことも言いました。グループ子会社にやっかいなことを押し付ける傾向を多くの組織が持っていますが、みなさんは違いますかと聞くと、みなさん嫌な顔をします。しかし、実際はその通りだということでした。ですから、事業者は自らどのような特性を持っているかを認識しているはずです。しかし、外から見た方が客観的に見えることもあるのです。 幅広い業務展開という点についても最初に申し上げました。おそらく、現場はそのごく一部しかやっていません。企業全体は本社が見ていますが、それを環境という側面で、現場の立場から見直そうということです。 例えば、鉄道は環境にやさしい、飛行機と違うといいますが、それだけをいつまで言ってもだめだということです。 大都市圏で電車に乗っている限り、環境に影響はないと思いがちですが実はそうではありません。車両に使用する塗料など車両を整備するために実にさまざまな資材を利用しています。そういうものも見据えて取り組んでいる企業だということを乗客に理解してもらわないといけないということからスタートしました。 「環境リスク」という言葉を掲げてみますと、最近はかなり計量可能となった「環境負荷」に取り組んでいるというだけではもうだめです。リスクという概念で見えないもの。将来、遭遇するかもしれない事柄を見据えていく必要があります。それに対応して企業内で環境リスクマネジメントをつくっていかないといけません。 そのときのグリーン調達は、生半可なグリーン調達ではありません。川上の取引先企業の存続に関わるところまで徹底して取り組まないといけません。現在の電気・電子機器関係の産業はその方向に向かっています。今後、建設業も他の業種も、当然この方向に向かっていくと思います。鉄道事業としてもやはり年次ごとに各段階で、それぞれに取り組みが進んできています。
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次に、これを水平展開していく。これは同業種のモデル事業の取り組みを参考にしなさいとよくいわれます。これは取り組みやすさはありますが、モデル事業所のマニュアルを参考にしすぎてしまい、地域性や事業所の特性を無視して転用し、サイト特有の環境側面の抽出を怠ってしまうことがあります。これは、共通モデルの弱点だと思います。ただし、これは底上げになることは間違いない。ですから、底上げ型で取り組む部分とそれぞれのサイトの環境側面の特異性を抽出していくことを常に考えなければいけない。 鉄道事業のEMSの取り組み例では、作業単位ごとの作業手順書を緊急事態の対応を含めてつくりました。安全管理が非常に重要な職場ですから、安全管理と環境品質管理を連結させて、各作業場で誰でもいつでもどこでもわかるようにしました。 それから、環境側面を抽出したサイト図をつくりました。これは作業現場のみなさんの手作りです。ここには手順書を逸脱した場合、どのような環境影響があるかということまで書いてあります。現場ごとに気をつけなければいけない部分も確認できます。これは現場の知恵だと思います。環境側面の抽出は文書で書くよりは図面に落とした方がいいということで始めた。こうしたことでどんどん鉄道独自のEMSが発展していくと思います。 もう一つ大事なことは、環境管理統括責任者を本社だけでなく、各現場ごとに事情を十分に理解した監査員的な人材を設けることです。問題はこの人に対して教育研修のみで対応は可能かということです。実例として、AさんとBさんの所見報告書の着眼点が違っていたことがありました。Aさんは緊急事態について関係会社対応を中心としたファクトファインディングと是正措置について指示があった。Bさんは整理整頓のレベルの指示がありました。これは、たぶんキャラクターや経験で変わってくる。この差をどのようにスタンダード化するか、それぞれの現場に即した形で運用できるようにするかが検討課題になります。 やはり、EMSを水平展開するためには、現場志向型で実態に即したやり方でいかないといけません。ただし、その場合に不足しているのは、アライアンスを組む上流下流の関連企業、そして最終的には地域社会との連携による環境パフォーマンスを上げていくための取り組みという点です。そこまで展開していくには、まだまだ努力が必要だということです。 |
私が、なぜ建設業界にマネジメントシステムという観点から、関心を持ちつづけているかというと、業務の構造が本社、支社、現場と階層的だということ。環境以前に業務管理が昔も今も重要だということです。この構造は、鉄道事業も全く同じです。もう一つは、事業所という単位ではマネジメントは完結しないということ。このような組織におけるEMSでは、次の点が重要になります。 環境に関わるコストや負荷について、現場のみならず、組織を越えて業務や工程の上流と下流で、連携・協力をしながら意識の共有が図られていること、これが非常に大事です。 次に、上記の共有を促すことができる情報共有の仕組みが作成されていること。これはEMSの立場からエクスパートとしてのエンジニアの役割が非常に大きいだろうと思います。 それから3番目はスピリットですが、基本的には組織の本業に関わる品質、作業効率と環境とを切り離して考えず、環境と併せて業務を評価するという方向に持っていってほしいということ。これはとりわけ大事なことです。取引先連携型でいえば、環境品質や環境障害という言葉で語られるバリューチェーン・マネジメントが今以上にまとまっていくのではないかと思っています。 |
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