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成田空港の民営化に向けて〜その軌跡と抱負

1.経 緯

 2003年5月、成田空港は25周年の節目を迎えましたが、成田空港を管理・運営する新東京国際空港公団(NAA)もまた、民営化という大きな転換期を迎えようとしています。
 2003年7月11日、第156回通常国会にて「成田国際空港株式会社法」が成立し、これにより新東京国際空港公団(NAA)は04年4月1日に全額政府出資の株式会社に移行、早期に株式上場を目指すこととなりました。四半世紀の歴史を刻み、「日本の表玄関」として発展してきた成田空港は、新しい組織の下でさらなる飛躍を目指すこととなります。
 成田空港はもともと、新東京国際空港公団が整備、管理、運営を一体となって行う「公団方式」で建設されましたが、その空港公団の民営化案は、特殊法人改革の一環として浮上しました。

 2000年12月1日、「行政改革大綱」が閣議決定され、すべての特殊法人等の個別事業・組織形態を見直し、抜本的な改革に取り組むとの方針が示されました。これを受けて、01年6月22日には「特殊法人等改革基本法」が施行され、12月18日には「特殊法人等整理合理化計画」の策定、翌19日「国際ハブ3空港(成田、関西、中部)の経営のあり方については、従来の航空行政を厳密に検討したうえ、上下分離方式を含め民営化に向け02年中に政府において結論を得る」との閣議決定がなされました。

 そして、02年8月23日の国土交通省交通政策審議会第2回航空分科会では、「国際拠点空港の経営形態について、空港の整備と管理運営を行う主体を分け、管理運営主体の民営化を図る上下分離方式が現実的で適切だが、3空港の下物法人の統合、用地造成費等の負担の平準化措置の必要性等については意見があるので最終答申に向け引き続き検討する」との「中間とりまとめ」が示されました。
 しかし、この中間とりまとめに示された「上下分離案」に対して、運営主体や関係自治体、航空会社などから多くの異論が出されたことから、「当該案で年末までに関係者の合意を得ることは困難である」として、事実上白紙に戻されました。その後、空港整備部会で改めて代替案についての審議が行われ、12月6日の第3回航空分科会で、「経営責任の明確化と経営の効率性の観点から各空港毎に一体として民営化を進めることを基本方針」とし、「成田、関西、中部の3国際拠点空港をそれぞれ単独で民営化する」という「単独民営化」が最終答申されるという経緯を経て、現在の流れにつながっています。

 最終答申の中で、成田空港については、(1)2004年度に上下一体で特殊会社化し、早期に株式上場する、(2)本来の平行滑走路(2500m)を早期に整備するとともに空港アクセスの利便性向上を図る。さらに、地元と十分な対話を重ね、空港容量の一層の増加や滑走路などの施設拡充を検討する。(2)環境対策、共生対策を確実に実施する−ことが適切である。とされました。
 特に、環境対策・共生策については、「内陸空港であることに起因する騒音問題等の環境問題の大きさにも配慮し、地域と空港の共生を実現するために行われてきた、様々な努力が引き続き確実に実施されるよう、環境対策・共生策の適切かつ確実な実施を担保することが必要である」とされていますが、これについては、国土交通省から「法規制等を措置することにより担保する」という方針が示されました。

 その後、国土交通省では、NAAを民営化するための特殊会社法案づくりが進められ、03年3月11日に「成田国際空港株式会社法案」が閣議決定され、第156回通常国会で審議される運びとなりました。
 NAAの黒野総裁も衆議院および参議院の両委員会でそれぞれ参考人として招致され、質疑が行われました。その中で黒野総裁は、平行滑走路の2500m化、民間企業としての黒字経営、新規事業への参入による非航空系収入の拡大、業務の効率化とコスト削減、そして着陸料の値下げなどについての決意を表明いたしました。
 2003年7月11日に同法が成立したことにより、NAA内部では現在、特殊会社への移行に向けた作業を本格化しています。

成田空港全景
成田空港全景


 2002年3月、社内横断的に設置した「民営化準備委員会」が中心となって、職員の意識改革、事業展開、事業の効率化、組織のあり方など多岐にわたる課題に取り組んでいます。諸課題の検討にあたっては、専門家の助言も必要なことから、野村証券・野村総合研究所の野村グループと、モルガン・スタンレー証券の2社をアドバイザーに選定しました。野村グループには早期上場を前提とした事業戦略および財務戦略分野について総合的なアドバイスをいただき、モルガン・スタンレー証券からは早期上場を達成するうえで、キャッシュフロー戦略、資金調達戦略など財務戦略分野に特化したアドバイスをいただきます。

 そうした中で、まずは新会社の目的や方向性を内外に明確にする必要性があることや、民営化に向けた全社の意識を統一する必要があることなどから、03年7月に経営理念・経営ビジョンを策定し、公表しています。
 さらに、その経営理念・経営ビジョンを実現するため、04年度から06年度までの経営の基本方針や具体的施策などを盛り込んだ「中期総合経営計画(草案)」を策定し、民営化後の進む方向を明確にしました。

 新会社は、2004年4月1日に発足することになりますが、組織についてはそれを待たず、準備の整った組織から段階的に移行させます。第一段階として03年10月に空港事業本部および空港運用本部の両本部並びにCS推進室およびIT推進室の両室を発足しました。
 また、これらの組織については、組織のフラット化による意志決定の迅速化を目的として、課および係を廃止し、グループ制を導入しました。

 その後も第二段、第三段の組織改編を行い、徐々に4月1日に向けた体制を築いています。
 NAAは最終的には「完全民営化」を目標としていますが、そこに到達するまでのステップを、大きく3つに分けて体制を整備していくことを計画しています。フェーズTは、前述のような特殊会社設立までの準備期間とし、特殊会社設立から上場までをフェーズU、上場から完全民営化までをフェーズVと位置づけています。フェーズTおよびフェーズUでは、懸案となっている平行滑走路の2500m化を推進するとともに、上場の1年前までに会社の経営体制を充実して実績を積み重ね、上場申請に向けた準備を進めます。

 フェーズVでは、完全民営化に向けて会社のさらなる法改正が行われ、最終的には政府保有株がすべて放出されます。一般の投資家が株主になり、民営化の目的である完全民営化が実現します。これによって会社は国の手から離れることになるため、民間企業と同様にお客様や投資家、地域の期待に応えた経営を行うことがさらに重要になります。
 そして、民営化に向けたこれらのステップを着実に踏んでいくためには、NAA職員ひとりひとりの意識改革、いわゆる「心の民営化」こそが大切であると認識しています。

 これまでの様々な検討や議論、膨大な作業を経て、いよいよ4月から「成田国際空港株式会社」がスタートします。民営化により、お客様へのさらなるサービスの向上と着陸料金の値下げ、愛される空港づくりを目指し、NAAは、より一層の努力をしてまいります。

成田空港第一ターミナル
成田空港第一ターミナル


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