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羽田空港の再拡張事業について

1.経 緯

 羽田空港は、国内航空旅客の約60%が利用する国内航空輸送ネットワークの要ですが、既にその能力の限界に達しております。今後とも増大する航空需要に的確に対応し、利用者利便に応えるためには、羽田空港のさらなる容量拡大が喫緊の課題となっております。(図−1)
 羽田空港の再拡張事業については、平成12年9月に、航空局において設置された首都圏第3空港調査検討会(座長:中村英夫 武蔵工業大学教授)での議論にまで遡ります。ここでは、羽田空港再拡張案と公募により提案された他の候補地に新たに空港を建設するという案について種々の検討を行いました。その結果、平成13年7月の第6回調査検討会において、羽田空港再拡張案が、他の候補地と比較して、既存ストックの有効活用、アクセス等の旅客利便等の観点から大きな優位性があるため、これを優先して推進することとされました。

 同事業は、平成13年8月、都市再生本部による都市再生プロジェクト(第二次決定)に選定され、「国際化を視野に入れつつ東京国際空港(羽田空港)の再拡張に早急に着手し4本目の滑走路を整備する」とされました。
 同年12月には、国土交通省として「羽田空港の再拡張に関する基本的考え方」を決定し、新たな滑走路は、空港の南側海上に現B滑走路と平行に設けることを確定いたしました。
 さらに平成14年6月25日には、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」において、「財源について関係府省で見通しをつけた上で、国土交通省は、羽田空港を再拡張し、2000年代後半までに国際定期便の就航を図る。」と閣議決定も行われております。

羽田空港の発着回数
図−1 羽田空港の発着回数


2.事業の概要

  本事業は、新たに4本目の滑走路等を整備し、計画では年間の発着能力を現在の28.5万回から40.7万回に増強し、発着容量の制約の解消、多様な路線網の形成、多頻度化による利用者利便の向上を図るとともに、その発着余裕枠を活用して国際定期便の受入を可能とするものです。
 事業スキームについては、1)滑走路整備事業、2)ターミナル、エプロン等整備事業、3)その他工事に区分し、地方自治体の協力とともに、民間活力を活用して事業の促進を図るべく調整を行っているところです。(図−2)
 また、8月末に行った平成16年度予算の概算要求では、同年度からの再拡張の事業化を目指して必要な予算を計上したところです。

事業スキーム
図−2 事業スキーム


3.新滑走路の建設工法

 新滑走路の建設工法については、評価選定作業を客観的、中立的、かつ透明性をもって行うために、平成14年3月に、羽田空港再拡張事業工法評価選定会議(座長:椎名武雄 日本アイ・ビー・エム(株)最高顧問)を設置し、検討を行いました。同会議においては、空港整備におけるこれまでの施工実績や技術開発動向等から、「桟橋工法」、「埋立・桟橋組合せ工法」、「浮体工法」を基本的な検討対象として、空港として長期・安定的に機能するか、確実に実現できる工費や工期であるか等の論点に基づき検討を行いました。その結果、平成14年10月の第6回会議において、以下の結論を得ました。

(1)1)三工法とも「空港として長期・安定的に機能すること」、「安全・確実な施工」、「環境への影響」等の観点から致命的な問題点がないこと、2)工費・工期については、検討の結果、大きな差が認められないとの見極めがついたことから、いずれの工法も、本会議で指摘された留意点を踏まえ、適切な設計を行うことにより建設が可能である。

(2)今後の具体的な契約発注手続きにおいては、本会議において議論された三工法及びその検討結果から安全性に問題がないと類推される工法に限定する必要がある。なお、本会議において指摘した留意点については、基本的に今後の契約発注手続きの中で、その解決を求めることとすることが適当である。

(3)本会議は、工費(維持管理費を含む)・工期の確実性を担保するための契約方式として、設計段階における工費・工期を施工段階及び維持管理段階においても保証させることのできるよう、設計と施工を一体的に発注することを基本とする契約方式の採用を提案する。

以上の結論を受け、国土交通省においては、現在、設計と施工を一体的に発注することを基本とする方式の契約手続きに向けて、鋭意検討を行っております。

桟橋工法
埋立・桟橋組み合わせ工法
浮体工法
図−3 新滑走路の建設工法


4.おわりに

  平成15年1月に、再拡張事業の円滑な推進を図ることを目的として、「羽田空港再拡張事業に関する協議会」(構成員:国土交通大臣と首都圏8都県市≪埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市≫の知事及び市長)を設置し、飛行ルート、騒音問題等様々な課題について協議を進めているところです。
 今後とも関係者間で十分な意見交換・調整を行いながら、再拡張事業の早期着工・早期完成に向けて最大限の努力を行っていきたいと考えております。



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