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公共工事コスト構造改革について

1.公共工事コスト縮減対策に関するこれまでの取組み

 社会資本は、安全で豊かな国民生活の実現や活力ある経済発展に不可欠な基盤であり、今後ともその整備を計画的かつ着実に進めていくことが必要です。社会資本の整備にあたっては、社会経済情勢の動向や国民のニーズを的確に把握し、事業評価などによりその必要性や妥当性を明確にした上で、重点化を図りつつ実現することが重要でありそのためのシステムの整備・充実を図っているところです。

 そして、社会資本を整備する手段としての公共工事は、「より良いものをより安く」提供する、という観点から実施することが求められています。このため、「厳しい財政事情の下、限られた財源を有効に活用し、効率的な公共事業の執行を通じて、社会資本整備を着実に進め、本格的な高齢化社会到来に備えるには、早急に有効な諸施策を実施し、公共工事コストの一層の縮減を推進する必要がある」との認識の下、政府においては、平成9年1月に、全閣僚を構成員とする「公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議」を設置し、同年4月に「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針」(以下「旧行動指針」という。)を策定しました。

 公共工事コスト縮減対策については、平成9年に策定された「旧行動指針」に基づき対象期間である平成9年度から11年度までの3年間の取り組みにおいて、全省庁の連携や公共工事担当省庁等における各工事コストに関する施策の導入及び創意工夫により、公共工事執行システムの中で価格に影響を及ぼす様々な要因について改革が進み、平成11年度までのコスト縮減率は約10%となり、当初の数値目標をほぼ達成してきました。

 しかしながら、依然として厳しい財政事情の下で引き続き社会資本整備を着実に進めていくことが要請されていること、また、これまで実施してきたコスト縮減施策の定着を図ることや新たなコスト縮減施策を進めていくことが重要な課題となっていることから、平成12年9月に「公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議」において、「公共工事コスト縮減対策に関する新行動指針」(以下「新行動指針」という。)を策定しました。

 また、国土交通省においては、「新行動指針」を踏まえ、「公共工事コスト縮減対策に関する新行動計画」(以下「新行動計画」という。)を平成13年3月30日に策定し、工事コストの低減だけでなく、「工事の時間的コストの低減」、「施設の品質の向上によるライフサイクルコストの低減」、「工事における社会的コストの低減」、「工事の効率性向上による長期的コストの低減」を含めた総合的なコスト縮減に取り組んでいます。

2.公共工事コスト縮減の取組み成果

(1) コスト縮減実績のフォローアップ方法

  公共工事コスト縮減対策関係省庁連絡会議において、「新行動指針」に係るコスト縮減実績のフォローアップ方法を作成し、全府省を通じて共通的な考え方のもとで平成13年度より前年度実績のフォローアップを実施しています。

 国土交通省の新行動計画の実施状況については、具体的施策の着実な推進を図る観点から、国土交通省公共工事コスト縮減対策委員会(委員長:国土交通事務次官。以下「対策委員会」という。)を設置し、適切にフォローアップし、その結果を秋頃に公表しています。

【経緯】
平成9年1月17日 公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議設置
平成9年4月4日 関係閣僚会議において行動指針を決定
〜行動指針を踏まえ、公共工事担当省庁16省庁が行動計画策定
平成10年4月24日 平成9年度の成果を発表
平成11年4月27日 平成10年度の成果を発表
平成12年9月1日 平成9年度から11年度の取組みの成果を発表
関係閣僚会議において新行動指針を決定
〜新行動指針を踏まえ、公共工事担当省庁16省庁が新行動計画策定
平成13年3月30日 国土交通省における新行動計画を策定
平成13年8月21日 平成12年度の成果を発表
平成14年9月5日 平成13年度の成果を発表

(2) 工事コストの低減

 現行動計画の目標期間は、平成12年度から、取り組みの最終年度である平成20年度末としコスト縮減に取り組んでいます。

 平成13年度の工事コストの縮減率は平成8年度と比較して、港湾整備事業(直轄)で13.5%、空港整備事業(直轄)で12.4%、国土交通省・関係公団等合計で11.7%、政府全体(全府省・全公団)で11.2%となりました。

 平成14年度の縮減率については、現在とりまとめ中ですが、平成8年度と比較して、概ね港湾整備事業(直轄)で13.8%、空港整備事業(直轄)で13.6%となる見込みです。

 なお、これらの縮減額は、行動指針の本来の目的に準拠し、社会資本整備の推進に充当し、公共事業全体の進捗を図っています。(図−1)

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3.公共工事コスト構造改革への新たな取組み

 平成14年7月19日の閣僚懇談会にて内閣総理大臣より国土交通大臣に対し、「公共投資について、景気対策のための大幅な追加が行われていた以前の水準を目安とした重点化・効率化、長期計画の在り方の抜本的見直しなどを含め、1. 公共事業関係計画のあり方の見直し、2. 入札手続きの改善やコストの縮減、3. 大規模プロジェクトの見直し、4. 規制改革の観点の4点に制度・政策改革を論じていただきたい。」との指示があました。これにより、「コストの縮減」について、従来の工事コストの縮減による施策だけでは縮減率が頭打ちになってきている状況であるため、コストの観点から公共事業の抜本的改革を目指す「コスト構造改革」へと新たな取り組みがスタートしました。国土交通省としてもこれまでの「対策委員会」に替えて、「国土交通省公共事業コスト構造改革推進委員会」(委員長:国土交通事務次官。以下「推進委員会」という。)を平成14年9月30日に立ち上げるなど検討を進めているところです。これを受け、港湾局、航空局においても具体的な施策等の検討を行っています。

【経緯】
平成14年12月20日
 国土交通省公共事業コスト構造改革数値目標を公表
平成15年3月31日
 国土交通省公共事業コスト構造改革プログラムを公表

(1)国土交通省公共事業コスト構造改革プログラムの策定


 平成15年度からは、現行動計画だけでは限界があることから、現行動計画を継続実施することに加え、公共事業のすべてのプロセスをコストの観点から例外なく見直す「コスト構造改革」に取り組むこととしました。

 見直しのポイントしては、「事業のスピードアップ」、「計画・設計から管理までの各段階における最適化」、「調達の最適化」を掲げ、平成15年3月31日には、平成15年度から実施する「コスト構造改革」の施策プログラムとして、現行動計画に加え実施すべき施策をとりまとめた「国土交通省公共事業コスト構造改革プログラム」を策定しました。

 本プログラムは、直ちに実施できる施策のみではなく、検討、試行、関係省庁との調整を行った上で実施に移行する施策も含めた34施策について取り組むこととしています。


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