ワイワイネットワーク 本コーナーでは、情報化や新技術に関連したタイムリーな情報をピックアップしてわかりやすく紹介していきます。

災害にまつわる伝承をデータベース化

 総務省消防庁は来年度から、大地震や水害、噴火など過去の災害にまつわる言い伝えや体験談を収集・調査し、後世に伝えるため、「災害伝承情報データベース整備事業」に乗り出します。
 事業は3か年程度で、各都道府県や市町村、図書館への照会を通じて、文献や絵図、記録フィルムなどを収集するとともに、地元のお年寄りや民俗学者らの聞き取りを実施。大雨時の大蛇伝説や洪水に由来する地名の話などから、1944年の東南海地震や61年の36災害(豪雨)などを念頭に、「ガラス窓が壊れて降ってきた」「近隣の市町村から援助を受けて助かった」といった体験談まで幅広く集めます。
 データは地域別、災害別に整理してデータベース化し、ホームページで公開する方針。
 消防庁防災課は「地域住民が実際に体験した災害の悲惨さをわかりやすく伝えていくことが、防災意識の向上につながる。学校教育の場でも活用できるよう文部科学省とも話をしていきたい」としています。
(2003.8.13 読売新聞より)

富士山噴火 火山防災マップ案決定

 平成15年8月11日、内閣府と国土交通省などの富士山ハザードマップ検討委員会(委員長・荒牧重雄東大名誉教授)は、富士山が噴火した際に被害が及ぶ範囲や避難情報を盛り込んだ火山防災マップ案を決定しました。
 防災マップ案は、溶岩や火砕流が及ぶ範囲などを示した広域版と、地域ごとの避難情報を盛り込んだ地域版で構成。
 同月20日頃から市町村やインターネットを通じて公表し意見を聞いた上で今秋に決定します。今回は山梨県富士吉見町と静岡県御殿場市、神奈川県足柄上郡の3ヵ所を公表。最終的には同県小田原市と静岡県富士市の地域版も作成。このほか、観光客向けと防災業務用の防災マップもつくる予定です。
 防災マップには、富士吉田、御殿場両市は、噴火から1日程度で市街地に溶岩流が到達する可能性がある範囲や、冬季に泥流が発生する危険がある範囲と、その範囲にある避難施設、災害対策本部の位置などを明示。足柄上郡は大量の降灰があった場合に大雨による土石流の危険性がある個所を示しています。
 広域版では、火口ができる可能性がある範囲や、火砕流、噴石、溶岩が達する危険性がある範囲などを掲載。過去3200年間の溶岩や火砕流の実績も盛り込んでいます。

富士山火山防災マップ案
富士山火山防災マップ案(富士山の火山防災対策 http://www.bousai.go.jp/fujisan/)

(2003.8.12 産経新聞より)

次世代型津波計 十勝沖地震の津波を海岸到達前に観測

 平成15年9月26日に発生した十勝沖地震で、岩手県大船渡市沖で試験観測中の次世代型津波計が、沿岸に到達する前の津波の観測に成功していたことがわかりました。日本周辺の地震による津波を海上で観測できたのは初めてとのことです。
 現在の津波観測は岸壁の検潮所で行うため、津波予報が出ても、実際に起きているかどうかは、陸に来るまでわかりません。そのため、実際の津波を早くとらえるシステムの確立が急務になっています。
 日立造船技術研究所と東京大学が共同開発中の「GPS津波計」は、海上に浮かべたブイの上下動を人工衛星で測る仕組みで、2001年1月から試験観測機を大船渡市沖2kmに置いています。
 十勝沖地震では、地震発生50分後の午前5時40分、最大15cmの津波第1波を観測しました。岸壁の検潮所が第1波を観測したのはその4分後でした。
 同研究所等では、来春、南海地震の震源域である高知県室戸岬沖12kmに実証観測機を設置し、実用化に向けた研究開発を進めます。
(2003.10.3 読売新聞より)

経産省が来年度から対サイバーテロ演習を実施

 経済産業省では、来年度から電力会社や交通機関など重要施設のネットワークを狙うサイバーテロに備えるため、不正侵入をもくろむハッカーやコンピュータウィルスなどからの様々な攻撃を想定した模擬演習を行うことを決定しました。各システムの安全性を検証し、緊急時の対応策をまとめるのが狙いです。
 まず、最も深刻な影響が予想される電力業界から始め、同様の模擬演習を政府が重要インフラに定めた情報通信、航空、鉄道、ガスなどでも実施する予定。さらに現在は重要インフラに入っていない水道、石油プラント、病院なども対象にしたい考えで、04年度の概算要求に3億円を盛り込みました。
 電力系のネットワークでは、発電所で実際に使用しているのと同様の演習用システムをつくり、最新のハッキングの手口を試行して弱点を点検します。また、インターネットを通じて外部から制御システムを乗っ取る。あるいは施設内に侵入して端末に不正アクセスするケースなどを想定して、システムの停止や暴走を防ぐための作業手順を事例ごとにまとめて訓練などを通じて周知徹底します。
 今年8月、世界各地に広がったコンピュータウィルス「MSブラスタ」では、アメリカの鉄道会社の信号システムやカナダの航空会社の搭乗手続きシステムが一時停止する被害を受けました。経産省情報セキュリティ政策室は、ブロードバンドの普及や危険性の高いコンピュータウィルスの登場など、ネットワーク環境は激しく変化している。危険性の高いハッキングに対処できる実践的な内容にしたい、としています。
(2003.9.22朝日新聞より)

デジタル情報の「のみの市」構想

 国総務省では、インターネット上で、映像や写真を売買できるデジタル情報の「のみの市」構築に乗り出しました。個人所有のコンテンツを有償で流通させて、ネット活用を促進することが狙いです。
 現在、ネットで画像や音楽データなどを交換するためには、情報を蓄積・配信するサーバーを経由して配信する方式が取られています。計画中の「デジタル情報のみの市」では、「草の根」の市場をつくるためにサーバーを介さずに、ファイル交換ソフトを組み込んだパソコン同士が直接データをやりとりする「P2P(ピアツーピア)」というシンプルな構造のネットワークを活用します。
 P2Pはシステム構築が安価で、参加が自由なのが特徴。例えば、作者が公開したいコンテンツは、パソコン上に公開許諾として記憶しておけば、それだけで流通網に乗せることができます。一方で、いつでも改定や公開中止もできます。
 総務省では(1)P2Pソフトの開発(2)著作権管理(3)課金システムなどを開発。P2Pが持つ違法コピーや有害コンテンツの流通の問題点は、コピーなどの二次利用ができるデータかどうかを識別する「データ保存方法の標準化」も行います。
 また、音声入り動画コンテンツなどは、知らないうちに著作権を侵害している場合もあるため、著作権管理を行うサーバーを設置。サーバーは交換用データを蓄積せずに著作権に抵触するか否かをフィルターにかけて判別します。
 来年度から2年かけて実証実験を行うための数億円の予算を要求し、3年後の商用サービスを目指します。

デジタル情報「のみの市」構想図
デジタル情報「のみの市」構想図
(2003.8.11 産経新聞より)

世界初 燃料電池の深海探査機

 平成15年8月11日、海洋科学技術センター(神奈川県横須賀市)は、次世代エネルギーの燃料電池を使って、無人の深海巡航探査機「うらしま」を動かす実証実験を公開しました。
 水中で燃料電池を使用するのは技術的に難しく、燃料電池で動く探査機の開発は世界初ということです。
 うらしまは昨年6月、リチウムイオン電池で駿河トラフを縦断する132.5kmの航行に成功。燃料電池を使うと、航続距離は300kmに伸びると期待されています。
 燃料電池は水素と酸素の化学反応がエネルギー源。大深度に耐えられるよう直径1mのチタン合金製の容器内に燃料電池を収めています。
 地球温暖化の影響を受けている北極の氷や、母船が近づけない海底火山の観測に威力を発揮。同センターでは2年後の実用化に向け技術を確立したいとしています。
(2003.8.12 産経新聞、共同通信より)


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