研究第一部 |
平成7年に発生した阪神・淡路大震災では、港湾施設の被災状況に対する情報収集が困難を極め、緊急輸送ルートの確保といった初動体制に大幅な遅れが生じました。このような大地震などの自然災害発生時には災害に対する迅速な状況判断と、それに基づく適切な対策が求められています。 港湾の危機管理情報システムは阪神・淡路大震災等の大地震の教訓を活かして、全国の主要な港湾119港を対象に、被災状況の迅速な把握と復旧対策へスムーズに移行するための情報分析による技術支援を実施するために構築されたものであり、国土交通省からの受託により、システムの開発を担当しました。 |
| 2. システムの特徴 | ||||||||
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| 3. システムの概要 | ||||||||||
3−1 システムの基本画面 本システムは情報の登録、計算結果の表示など主要な操作を行うための操作画面として、高解像度衛星画像(イコノス衛星画像)と地理情報システム(GIS)を連動した基本画面を装備しており、これにより利用者の利便性を向上させています。 基本画面はイコノス衛星画像、港湾計画図、施設情報図、GPS測量ポイント、土質調査ポイント、被災事例ポイント等のレイヤー構造となっており、必要に応じて表示図面を切り替えることにより詳細なデータを参照できます。また、画面の拡大、縮小、移動等の基本的な操作についても容易に行うことができます。 3−2 システムの利用環境 本システムは国総研、各地方整備局、工事事務所のそれぞれに設置されたWEBサーバーをネットワーク(港湾WAN)で接続しています(図3−1参照)。 これらのWEBサーバーは国総研のサーバーを頂点とする階層構造になっており、上位サーバーになるほど広範囲の港湾に関する情報が収納されています。具体的には国総研サーバーには対象119港湾のデータ、各地方整備局、工事事務所には管轄港湾のデータが収納されています。 これは異なる3カ所に設置されているサーバーに同じデータが存在することを意味し、被災時におけるサーバーの損傷、ネットワークの不通等の事態に配慮したデータの多重化です。 利用者はネットワークを介して所定のWEBサーバーにアクセスすることでシステムを容易に利用できます。
3−3 サブシステムの構成 本システムは図3−2に示す各種のサブシステムで構成されており、被災時には順次、必要に応じてサブシステムを利用することとなります。また、被災時だけではなく平常時においてもシステムを有益に利用するための機能、データを装備しています。 各サブシステムの目的を表3−1に示します。 なお、これらのサブシステムの内、使用可否判定サブシステムと被災額算定サブシステムについては、被災後直ちに利用する必要があることから、ネットワーク不通やサーバー障害等が長引いた場合を配慮して、ネットワークから独立した形態で稼働するよう開発されています。具体的にはワープロや表計算ソフトと同様に、各利用者の端末に予めシステムをインストールすることとなります。
3−4 平常時のシステム利用 本システムは図3−3に示すように、標準断面図を主としたCADデータ(ベクターDB)と広く図面、図書を対象としたイメージデータ(ラスターDB)をデータベースとして整備しています。これらのデータは高解像度衛星画像を元としたGIS画面や港湾構造物集覧、港湾施設台帳等の既存データベースと有機的に連携しています。また、標準断面図に対して設計条件等の数値データ、GIS画面に対して測量基準点、土質試験、深浅測量等のポイントデータ等についてもデータを保有しています。 本システムはこれら一連のデータベース群を効果的に活用するために、GIS画面を有効に利用した検索、表示機能を装備しています。これにより、被災時に限らず設計、施工管理等の平常時の業務を支援することが可能となっています。
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4−1 被災情報伝達サブシステム
4−2 使用可否判定サブシステム 使用可否判定サブシステムは被災を受けた係留施設を対象として、余震時にも安全に荷役等の作業を行えるかを即座に判定するものです。対象とする施設は耐震強化岸壁としています。 また、緊急避難物資の輸送という観点から、係留施設から主要交通地点までに至る臨港道路、橋梁、沈埋トンネル等の交通路にまでを判定対象としており、輸送ルートの選定、確保においても有効に利用することができます。 係留施設を構造的に判定するためには構造諸元、潮位等の設計条件等のデータを必要としますが、本システムにおいては施設の設計条件を使って予め計算を実施して、判定用チャートを作成しています。よって、被災程度(0〜IV)、本体工の傾斜角、残留変形量等の現地調査により得られるデータと地震情報である震度階(震度6弱等)もしくは加速度(GAL)を入力するだけで判定を行うことができます。なお、現地調査データについては被災情報伝達サブシステムの入力値を再利用します。 これにより、判定者は設計計算書などの書類、図面を探し出す手間がなく、緊急時に迅速に判断を行うことが可能となります。 本システムによる計算結果の一例を図4―2に示します。この図は重力式岸壁の滑動に対する判定用チャートの一例です。本体工の傾斜角(°)と余震震度(kh)をパラメータとして滑動安全率を読みとることができます。例えば、本震での傾きが3°、余震震度を0.17とすると、図中の黒丸位置に対応することから、滑動安全率=1.29となり、岸壁の滑動安全性には全く問題ないことが分かります。なお、余震震度は本震震度の約6割としています。 このようにして計算された使用可否判定結果を、図4−3に示すように基本画面上に色分けして表示することにより、視覚的に輸送ルートの選定、確保作業を実施することが可能となります。
4−3 被災額算定サブシステム 被災額算定サブシステムは地震発生後、港全体の概算の被災額を算定するものです。算定には表4−1に示す4種類の地震情報を入力します。これは地震情報が明らかになるまでの所要時間と算定精度に考慮したものであり、1から4の順番にデータを入手するための時間を要しますが、逆に算定精度は向上することとなります。
被災額算定の基本式は次の通りです。 被災額=1m当たりの予想最大被災額×延長×被災額率×デフレータ×被災延長率 1m当たりの予想最大被災額とは過去の事業費やモデル断面を用いて予め算定した確定値であり、被災額算定の基礎となるデータです。 被災額率は予想最大被災額に対する被災額の割合であり、過去の地震被害例を参考に定められており、地震情報を元に算定の都度算出されます。なお、この値については被災程度(0〜IV)、被災延長、液状化の有無等の現地調査により得られるデータを用いて、より精度を向上させることも可能です。 デフレータは貨幣価値に関する換算係数、被災延長率は地震が直下型か非直下型かに応じて設定される係数値です。 本システムによる算定結果の例を表4−2に示します。
4−4 応急工事、復旧工事支援サブシステム 両サブシステムは応急、復旧工事に関連する施設情報を登録、検索するとともに、登録された情報をGIS上に表示することで危険回避の判断の支援をしたり、各港湾事務所や外部機関からの使用可能施設の問い合わせ対応に利用するものです。 両サブシステムで登録、表示可能な情報ならびに機能を表4−3に示します。
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今後、システムを利用する方々への周知活動や大規模震災を想定した各種の防災訓練での利用支援等を通じて、システムの利便性について確認していく予定です。また、データベースとして収納している図面、図書等については常時、最新の状態を保つ必要があることから、電子納品、電子調達等のデータを効率的に追加する方法を検討していく予定です。 平成13年度の情報化月間において、「港湾の危機管理情報システム」は、情報化の促進に貢献したシステムであるとして「優秀情報処理システム賞」を受賞しています。 |
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