[SCOPE] 財団法人 港湾空港建設技術サービスセンター

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コラム

第6回 横風    ~2007.4.16~

飛行場計画技術研究会 小坂英治

模型飛行機

最近のTV画面は、自然災害でさえ物語性がある映像となって、映画の一場面と思ってしまうようなものがしばしばある。ましてや、先日の高知空港のボンバルディア式DHC-8-400型機の胴体着陸はあろうことかその瞬間まで充分な準備時間を持って撮影されたもので、実録とはわかっていても考えさせるものがあった。ついでに言えば、架空として作られる映像はわざとらしさがもっと有るべきではないかと思ってしまう。
胴体着陸を見ながら、子供の時に作った模型飛行機について思い出した。竹ヒゴをろうそくの炎であぶりながら、図面の曲線どおり曲げて、障子紙を張るようにして組み立てたグライダーやゴム巻き飛行機の思い出は、我々の世代はだれでも持っているはずだ。 プロペラ機は主翼の下に車の付いた針金製の脚があって、バランス良くできていれば、脚をつかったランディングでさえ可能であり、グライダーは、足は無くとも頭部は木製のしっかりした板で固まっており、重りも兼ねて、すべるように胴体着陸をした記憶がある。ただし、どちらも上手に飛ばすには、数向きのとり方が重要で、横風が発生しないよう風の方向に正対させて飛ばすことが約束事であった。 高知空港の胴体着陸の成功はパイロットの沈着な技量に拠るところが大きかったのだろうが、模型飛行機の経験によると、さほど横風が無かったのが幸いだったのではないかと考えた。

航空機の技術進歩は華々しく、現在、飛行場計画に関係する者が参考にする教科書が扱う航空機は、発達の歴史を解説するページでも、1930代のDC-3以降であり、滑走路上の走行速度をコントロールできる前輪式航空機が対象であって、小型機時代の尾翼の下に車輪を持つ尾輪式飛行機は話題さえならない。
尾輪式飛行機の場合は、離着陸ともに横風に対し無防備で、必ず風に正対して飛ばなくてはならない。以前、まだ空港の知識がほとんど無い時代にイギリスのガドウィック空港を見学する機会に恵まれ、滑走路の数がどう変化してきたか質問したら、昔は、円形の広場で滑走路はありませんと言われ、キョトンとした記憶がある。 確かに横風に対応するためには、必要な滑走路距離を直径とする円形の広場が飛行場として理想であり、海外には現実にそのような施設を用意していたということに驚いた。空港適地に恵まれない日本では、理想がそうであっても、パイロットの技術力を期待して、円形広場は作らなかったのではないかと想像している。

2月の北東風の強い日に、千葉県の館山湾を城山の高台から眺めていたら、沢山の舟がものの見事に風向きに向かって並んでいた。航空機も船舶も風には抵抗しないのが良いと変に感心した。とすれば、空母が静止している時よりも、高速で一方向に進んでいるほうが、艦載機の着艦が楽なのだろうか。

横風用滑走路

我が国の空港で、横風用滑走路を整備しているのは羽田空港のみである。横風用どころか複数滑走路さえ持っていない。主滑走路と交差する滑走路がある仙台空港や新潟空港はもともと戦前の軍用空港を民間空港に転換し、滑走路長が足りず新滑走路を追加したもので、昔の滑走路は小型機用として残してはいるが、大型機の横風代替には延長が短く役に立たない。 戦前軍用であった飛行場を現在そのまま滑走路を延長して利用している滑走路一本の空港も多いが、概して言えるのは、軍用時代に設定された滑走路の方向は戦後になって作り直された新滑走路に比較して、気象的に優れたものが多いと言われている。とは言え、我が国の空港は何故横風用滑走路が無くて済んでいるのだろうか。

理由として幾つか挙げられる。

1.就航率が悪いまま利用している。
2.ジェット化、大型化が進み、横風に強い航空機が増えた。
3.視程等横風以外の悪条件に紛れている。
4.パイロットの技量が高い。

成田、関空は本来計画では、横風用滑走路を予定しているが、用地取得、投資効率の面で先送りする一方、特に成田にあっては、一時期B-747ばかりが飛ぶ時代が長く、横風の影響よりも視程による欠航対策が重視された。
横風が強いとき、航空機は滑走路の中心線に対し、風速の横風成分Vy,、航空機の飛行速度Vとして、機首をSINα=Vy/Vとなる角度αだけ傾けてランディングし、着地と同時に滑走路中心を走行しなければならないことになる。安全上、αをあまり大きくは採れない理屈である。概して小型機ほどVは小さいから、羽田の滑走路容量の拡大を期待して我が国の空港を利用する航空機材に小型化傾向が進むとしたら、横風の発生度の高い空港は要注意である。 また、海岸から離れ、陸上地形の影響を受ける内陸空港は良くも悪くも風向きに地形の整流作用を受け、風向きが一定化する傾向があると思われるが、海上に位置する空港は自然のままの風向になり易いので、航空機の小型化は空港一般に新たな課題を生むかもしれない。

航空機の小型化が進むとして、空港の横風に対し払うべき配慮事項として、着地点に近い進入区域周辺の大型構造物の建設には注意が必要となる傾向がある。進入機材が最も弱点を晒すことになる地点の風は、横風であれ安定した流れであって欲しい。羽田空港は新たなDランの追加によって複雑な地形になるが、風に対しては、かなり気になる要素を含んでいる。
空港適地が得られず、無理やり建設した離島や僻地の就航率の悪い空港の改善要望は昔からあるが結構難しい問題である。就航率が悪くともそれなりに存在価値が認められていた空港が、エアラインの採算性重視から、定期路線の継続が話題になる時代になった今、空港の計画技術は改めて厳しくチェックされなくてはならない。

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