[SCOPE] 財団法人 港湾空港建設技術サービスセンター

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コラム

第4回 海上空港と全体構想     ~2007.3.15~

飛行場計画技術研究会 小坂英治

公有水面埋立法

我が国も遅ればせながらユネスコの世界遺産条約を批准し、観光ブームにのって日本各地の自然や歴史的建造物が登録され、近頃は目立って世界各地の遺産の映像がTVで放映されるようになった。その中で、特にヨーロッパ諸国に見られる歴史的都市景観の美しさには真実圧倒される思いがする。翻って、我が国の雑然とした都市のあり様には正直絶望するばかりである。 何ら自主規制の働かない日本の乱雑な土地制度のなれの果てであろう。恐らくこの都市のかたちの見苦しさは民族固有の自己主張から来るもので、未来永劫変らないのではなかろうか。なぜなら、都市の秩序はある種の規制の結果であり、日本人の徹底的した平等意識、公平感にはそぐわないものである。

昭和40年代末から50年代初めにかけて、高度経済成長と一体となった土地利用の無秩序と国中の土地への執着心は、進歩した浚渫埋立技術による全国各地の内湾埋立と大規模な土地が容易に大企業の資産となっていくさま、時には小規模であれ、無免許のままの埋立事業が放任されていることの情報、さらには、海洋汚染が進む中で都市周辺の海岸線が次第に遠のいていく状況等により、国民の不満を次第に膨らませ、声高な警告もあって、海面埋立の全面的禁止運動にまで発展した。 世論を巻き込む行政は、常に振り子を大きく振らすもので、国会での厳しい追及の中で、政府の必至の抵抗により、公有水面埋立制度はかろうじて生き残ることができたものの、厳しい規制が加えられることとなった。首都圏への産業及び人口の過度の集中を防止することを目的として制定された「工業等制限法」も今思えば、昭和34年に制定され、その行き過ぎた規制力と運用のために、平成10年の完全廃止まで後々多くの問題を発生させることとなった。 道をはずれた状態を正しい道筋に戻そうとする法律は、思想は正しくとも、常にアフター措置のための賞味期限が必要で、冷静さが回復した状態で再度見直す仕掛けが予め用意されていなければならないように思う。まじめな役人ほど規則を厳守するし、行き過ぎも起こる。また、法の制定で勝ち名乗りを上げている世論はさらに頑張ろうとする性癖を持つ。これは好い悪いの問題ではなく日本人の持つある意味での潔癖な本性であろう。

法律はいつの世でも、言葉が意味を持つ。そして、言葉は生き物で、時代と共に変化するのは周知である。規則の運用次第、行政の姿勢で結果は大きく異なる。前回触れた会計法体系(明治22年法律33号)のごとく、法律の運用の仕方によっては、物の実質価値を第一に考える民間では絶対に考えることのない一般競争制度を公的調達のみにあくまで強制することにもなる。個人が己の家を建てるのに一般競争で大工さんを探す人がいれば教えて欲しい。 公有水面埋立法も施行当初、現実離れした法令順守により、海面埋立が絡む工事が多い港湾整備事業は、施行当初の会計年度で、工種により、ほぼ3割がたが年度内執行が不能に陥った記憶がある。
改正の主たるところは、手続きの厳密さと利用目的の明確でない埋立の排除であり、当然、無免許埋立は無くなるが、申請時に目的が確定し難い部分を含む工期の長い埋立工事は規制されるようになった。
従来は、無目的は論外として、大きな埋立であれば、ある程度の利用目的の変更はあるべしとし、変更の手続きは比較的容易であり、なにはともあれ、安全な国土の形成のため災害の起こらない堅牢な護岸作りを重視し、無責任な設計施工を排除することに重点を置かれていたように思う。 しかしながら、新法では厳密な手続きが主眼となったため、安全な護岸構造築造の思想よりも、提出資料どおりの実施が強要されることになり、現場の現状に対応した変更工事が実質不可能となることへの戸惑いであったように思う。すなわち、申請資料の記述のうち、何を拘束され、何が参考部分か区分できず、結果、すべてが運用の解釈に委ねられることになったのである。おかげで、提出資料の書き過ぎが当初足かせとなったりした。 筆者が今でも問題だと思うのは、長期の埋立を実質認めなくなったことであった。
最近、ある雑誌で岩手県大船渡港の津波防波堤工事が完成したとあった。今時30年もの長年月をかけて関係者はよくこれまで仕上げたと感心している。海の工事は場合によってはこれくらいの長期規模で考えなくてはならないこともあるのである。

全体構想

関西国際空港の二本目の滑走路が漸く完成し、この8月には供用開始される。実質24時間空港の開設を目指してきた関係者のご努力を多としたい。
この2本目の滑走路の必要性について、需要との関連がしばしば新聞の話題に載ることがあった。このことは次回に触れるとして、陸上の空港であれば、必要になったときに拡張しようとする部分の用地を取得し、必要となる工事を行い、所要の施設を整備して利用に供していけば良い。実に単純である。滑走路の追加でも同じことだ。また、海上を埋め立てる海上空港であっても、水深が浅く、基礎地盤が安定し、さらには大きな波浪が無いところであれば、陸上の空港と同じ発想で良い。 しかし、最近の海上工事のように金さえ出せばどこでも埋め立ててしまうほどの技術進歩が前提となると、工事の難しさが歯止めとなるかっての自動調整機能は期待できなくなり、全体の埋立構想をどのように分割施行するか、余程神経をとがらせ検討しなければならない。なぜなら、このような場所での用地造成工事では、コストの大半は埋立のための土を入れる容器すなわち外周護岸を作るための費用となるからである。 埋立地を饅頭に例えれば中身を包む皮の部分にやたらと費用がかかるようなもので、皮が少ないほど良い道理である。第一期から第二期へあまり間をおかずに拡張するような場合であれば、最初の埋立地は、決して独立させてはならない。饅頭の中身を食べようとして皮ばかり用意することになる。平面で外周部が一番小さい円を想定しても、一つの円と同じ面積となる二つの円を作ろうとすると、小さい円の周の長さの合計は大きい円の1.4倍にもなる理屈である。 ましてや、空港の形状は、外周部の長い矩形である。関西国際空港は、当初の予算をけちって、全体計画を無視したため、結果として随分高いものについた。当初の計画に関与した者として真実、慙愧に耐えない。仮定として、過去に遡って計画をやり直すことができたとしたら、一体どうすれば正解だっただろうか。これには、埋立形状の問題と時間軸、さらには、建設途上の安全を考えなくてはならないのは勿論であるが、工期の長い埋立について、現在、公有水面埋立法の運用の考え方は変わっているのだろうか。

予想されたことではあるが、中部国際空港もどうやら本格的24時間空港化を期待するようになったようである。

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