[SCOPE] 財団法人 港湾空港建設技術サービスセンター

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コラム

第19回 地震と空港   ~2007.11.1~

飛行場計画技術研究会 小坂英治

地震災害と空港の役割

今日、地方空港の概成が言われているとき何故か空港の耐震対策が叫ばれている。近年、日本のどこかで、忘れないうちにも起きてくる地震被害の深刻さから今では日本各地に配置された感のある空港を、どこに発生するか予想がつかない地震被害の救済に活用しない手はないと言うのが本意だろうか。

しかし、いざ空港周辺の町にかなりの地震被害が発生したとき、空港の存在にどんな意味があるだろうか。勿論、空港の地震対策として周辺の町に何ら被害が無く、空港内だけに被害が生ずるようでは日々航空交通を利用している日常の生活に不便をかけることとなり、このような空港の存在は地域のインフラの一つとして失格である。当然それなりの地震対策を施すことにより、空港の役割を発揮しなければならないが、どの程度の地震対策をすれば良いか決めようとすると正直容易ではない。

問題は、空港周辺が壊滅的であるのに空港が何とも無ないのは良いに決まっているが強固過ぎる必要は無く、空港に要求される周辺被災時の限定的目的に過不足無く対応出来るよう速やかに復旧再開し、その後の町の災害復旧のための人や物の移動、輸送に役立つことが出来れば良いのである。このような時に観光客の輸送にまで気にする必要はない。

自然災害の場合、破壊力の大きさを100パーセント予測することは不可能である。このような極限の外力に耐えようとするならば不経済この上ない。最近の河川護岸の設計思想も昔とことなり、一定の確率を超える雨量に対しては護岸の高さだけで対処することは出来ないとして別の対策を講じることで総合的に対応しようとしているようである。 構造物にしても限界を超えた外力に対しては壊れるのが当たり前として、基本は壊れないようにするのではなく、どのように壊れるか予測し決定的被害を回避しようとする思想が取り入れられつつあるように思う。人的被害を防ぐためにも重要な姿勢だろう。話題になっている液状化対策についても同様に考えたい。

ところで周辺都市が相当に被害を受けたとき、空港はどのような機能が要求されるのだろうか。

空港が離島や僻地にあり唯一の交通手段であれば、空港は地域の輸送需要全てを引き受けなければならないが、そうでなければ航空輸送は、本来高速少量輸送を受け持つもので、道路のような融通性はなく、鉄道のように大量輸送にも向かない。救急体制の整備や緊急輸送に対しては、空港であってもヘリコプターを自由に活動できるようにした方が効果的である。阪神淡路大震災のときの伊丹空港、関空、八尾空港の役割を省みるとこのように思う。 確かに、伊丹空港は関空に移ったための空きターミナル等スペースに余裕が有り支援部隊の基地として極めて役立ったが、常態の空港機能が際立って役立ったとは思えないし、関空は航空による支援物資の転送基地として有効であったが、ある意味で被災地の隣接空港の役割を発揮したに過ぎないように思う。地震被害はあくまで局所的であることから、隣接する被害を受けない空港群をどう使うかの問題であろう。この意味で空港がある程度被災を受けるのは止む無しとして、周辺の無傷の空港を支援のためにどのように使うか常時の設備の内容も見直すことが大事であろう。 その際、ヘリコプターや普段入らない小型機、軍用機の扱いが課題となる。地震ではないが、米国の2001年9月11日の事件では、FAAは飛行中の航空機全てを空中から排除したが、そのために  Halifax International Airportの一本の滑走路に40機あまりの航空機が整列させられている有名な写真を見るにつけ緊急時の空港の運営は予め予想しておかねばならないといつも感心させられるのである。設備の強度だけの問題ではない。

空港は要請の変化に対応することこそ本命

構造物である限り少々の外力によって壊れないのが良いに決まっている。ただし、空港施設はのべつ新しい要請によって改造されるのが常であり、金をかけてわざわざ改造し難くすることはある意味で具合が悪い。我が国では、滑走路の舗装でさえアスファルト舗装が主流であり、フレキシブル舗装を採用している。10 年15年経ったらオーバーレイを行うことを前提としている。また、航空機の特性として天候の影響を受けやすい。エアラインによってはストライキでさえ行う。このため風の影響等自然条件による就効率の影響を5パーセント以内にしているのが一般基準であり、100パーセントはもともと諦めている。 我が国のように全国的に配置が進んだ空港の存在を前提とする地震対策は、例えば海上空港の護岸や高盛土壁のように壊れると少々の手直しでは復旧できない施設は耐震性を配慮するにしても、滑走路や誘導路についてはやり過ぎてはならない。周辺の町が壊滅しても空港だけが頑健に残ることを期待してはならない。空港の地震対策はあくまで地域の特性に合せ、必要とされるであろう緊急対策に対処出来れば良いのであって、地域全体の緊急時対策については周辺の空港群でどう支援できるか回答を得ることが中心でなければならない。

ただ、羽田空港だけは別物としなければならないかも知れない。羽田が駄目になると日本が駄目になる。だからこそ、国費で言えば滑走路一本の増設にさえ、地方空港が10ヶ所以上も建設できるようなコストの投下が認められるのである。これは経済の問題ではなく我が国の防衛問題のひとつになっている。羽田空港の究極の地震対策は東京の一極主義をやめることであり、関東大地震の前に道州制等東京の役割を少しでも分散することである。一空港計画者の及ぶところではない。詰まるところ空港の地震対策は、羽田空港は例外としてそれ以外の空港を地域特性に合わせて考えることである。

実物大実験

この記事がコラムに載る頃、国土技術政策総合研究所が北海道の石狩新港の埋立地内での「実物大の空港施設を用いた液状化実験」が終わっているだろう。

今まで、空港内の土木施設の液状化対策についてやや否定的な述べ方をしてきたが実験の取り組みに異議を唱えるつもりは毛頭ない。むしろこのような大規模な実験によって液状化の発生状況や土木施設の破壊状況を知ることは極めて重要だと考える。実際の地震波に近い状況がどう再現できるか技術的問題が残されているとは思うが、この種の金のかかる実験を実現までこぎつけた関係者のご努力を高く評価したい。ただ筆者の期待するところは、液状化させない対策の開発ではなく、液状化後の施設の破壊状況の把握と復旧対策の考え方である。空港の整備費の中で、滑走路や誘導路等の土木施設費はもともとそう大きなものではない。 勿論液状化しない工法が安価に開発されるならばそれに勝るものは無いが、既に述べたように、液状化を絶対起さない条件をコストを考えずに予め用意するのは空港施設の本来柔軟性を要求される特性に合わないことを主張しているのである。実験の成果がどう現れるか分らないが、このような主旨で引き続き研究を進めて頂きたいものと心底思っている。

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