[SCOPE] 一般財団法人 港湾空港総合技術センター

  • Googleロゴ

    

コラム

第17回 空港と都市   ~2007.10.1~

飛行場計画技術研究会 小坂英治

みなと町

かって空港入り口の道路を渡った角に、空港の番小屋のように在った大阪航空局に勤務し、初めて阪急線の蛍池の駅から空港に向かって歩き出したが、駅前から空港までの町並みに、この先に空港があると思わせるものが一切無いのにあきれた記憶がある。周辺の空気の中にさえ、空港のにおいは感じられなかった。 わずかにパチンコ店の看板が飛行機であったので、間違った駅に降りたのではないと安心したほどである。城下町、門前町、港町と、町を形成するにはそれぞれある種の雰囲気をかもし出す何ものかがあるのが普通と思っていたが、大阪国際空港ほどの大空港の玄関口でさえ、空港の存在は街のイメージに何ら影響を与えていないのである。空港と周辺のかかわりとは何だろうと考えた。

大阪国際空港は、戦前の昭和11年に民間飛行場として、大和川川尻の飛行場計画に代って、兵庫県の猪名川の川べりに建設着工された大阪第2飛行場が最初であり、昭和14年には開港したが、その後、民間飛行場として拡張される中、太平洋戦争の影響もあり軍用に転化され、さらには戦後、米軍の接収をうけるなどして、昭和31年の空港整備法の施行、昭和33年の米軍からの全面返還の後、翌年羽田空港に遅れて我が国二つ目の第一種空港の指定を受けた。 昭和39年のジェット機乗り入れ以降の空港反対に対する地元の激しい反対運動の動きは周知のとおりであるが、空港の利用が活発化するなかで、開港以来、空港周辺の土地開発、住宅の建設の状況の歴史を辿ってみると、空港を起点とする周辺への広がりは見られず、殆ど全てが、大阪市街地側からの鉄道や道路の延伸に伴って空港側へ向かって伸びるものばかりであった。この事実から見ても、空港そのものが、空港直近部を自然開発する能力は無いと考えるべきなのであろう。

所詮、空港利用者は空港周辺から徒歩でやってくることは無く、徒歩の距離の近さに何ら価値が認められないことに起因するのではなかろうか。反対に空港近くは、航空機の騒音のマイナスだけあって、都市形成の上では魅力が無いのであろう。この点では、コンテナー化が進んだ商業港も同様で、海の港の場合は、親水公園のようなものが上手に配置されれば、水面自体が持つ魅力で、街の格をあげることがあるが、空の港には航空機マニア以外魅力がないようだ。経済効果だけでなく、空港そのものの存在が街の風格をつくっているような街は世界のどこかにないものだろうか。

空港の周辺開発効果

空港が本来持っている周辺地域に対する真の効果は、形にならないものが重要であり、さらに成長する時間が必要であると主張したい。魅力ある安定した都市と言うものは本来年月を経て出来上がるものである。

新産工特開発の名残か、或いはダラスフォートワース空港へのあこがれか、関西空港の計画づくりが盛んな頃、恐らくはヨーロッパの港湾諸都市の影響とは思うが、ウォーターフロントならぬエアフロントと言う言葉が流行したことがある。我が国では、企業活動の上で海上交通の輸送コストの有利さは何にも代えられぬメリットがあり、立派な港湾施設の周りには自然に企業が立地すると信じられてきた気配がある。確かに戦後日本の経済復興を支えた重工長大企業の生産工場は労働力供給地帯から外れたところであっても大水深港湾の整備によって成立した例は多い。そしてその背後にはそれなりの都市を発生させている。 生産施設ではないが、国際空港も同じく空港周辺に何らかの都市機能を呼集する筈だと考えたのであろう。このため、成田空港でも、関西空港でも、中部空港でも地元自治体は空港周辺に開港に合せて大規模な産業用地の造成に熱心であった。しかし結果は周知の如く、空港周辺の土地需要は開港当初は殆ど無く、広大な土地が遊休化することの繰り返しであった。空港に関連する事業は、空港内にあってこそ機能するのが普通であり、一歩空港から離れてしまえば母都市の都市集積が有利に働くのが普通である。

しかしながら開港後30年になる成田空港を見ると、取り扱い貨物の増大に伴う空港の拡張が計画通り進まないことが主因と思われるが、一方通関システムの変化もあって、ここ10年、空港外の周辺にはフォワーダー上屋が多数建設され、都市計画的に見ればやや乱立の体をなしているほどである。空港活動が確実に活発化するに従い、空港内が需要に対し所要の施設を吸収できなくなると、自ずから空港外にはみ出ざるを得ないことになるのである。これらの空港周辺の立地企業による経済効果として周辺都市への税収や雇用機会の増大は魅力的には違いないが、都市計画的街づくりの見地からは問題無しとは言えない。 近隣諸都市は、空港需要の成長に合せた各種インフラの整備を進めるなど、安定した街づくりの重責を負わされているのである。

空港の立地都市に対する最大の効果は、雇用機会の増大ではないかと考えている。成田空港は、未だに反対運動ばかりが喧伝されるが、開港後30年の年月は、 2005年の統計によると空港内従業員のうち14,366人(全従業員数の30.3%)が成田市内に居住するとされている。成田市の昨年の世帯数数は 51.126とあるから、数字から見れば立派な空港城下町のひとつである。本来ならば、空港の発展がそのまま周辺都市の活性源として地元からも受け入れられているはずであるが、信じられないことに未だ1500人もの警察の保護下にある。一時も早くこの過去のくびきから脱出し世界に冠たる空港都市を築いて貰いたいものである。

一方、関西空港や中部空港は空港内の拡張が困難な海上埋立であり、順調に需要が拡大できれば、10~20年後には周辺への土地需要圧力が発生するはずで、ここでも関連する自治体は息の長い街づくりに今から努めてもらいたいものである。

なお、この点で、最近期待され過ぎの感がある羽田空港の国際化には周辺の都市域の現状からも自ずから限界があると言わざるを得ない。空港内が狭過ぎる上に周辺部は既に成熟しているのである。

空港の果実はあまねく平等に

かって、新産工特時代、各自治体は地域の経済発展のため企業誘致活動に今よりも熱心で、各種条例を設け企業の誘致に努力していたように思う。空港の場合、今後新規立地はないにしても、空港から直接地元自治体に入る収入としては、国が所管する空港の場合、国からの国有資産所在市町村交付金と航空事業者からの航空機燃料譲与税がある。前者は固定資産税相当額であり、空港内立地企業と同じく存在する市町村が納入対象であり、航空機騒音を受ける地域も共通に得られる収入ではなく、旅客ターミナル等生産価値の高い施設が存在する市町村に集中する。 従って多くの場合、航空機が出入りする滑走路の延長上が優遇されることはない。すなわち、複数の周辺自治体が空港から得る利益は、プラスとマイナスが相殺していないのである。鉄道や電力と同じく、マイナスの部分をもつインフラの固定資産税のあり様については本質的に再考すべきところがあるような気がしてならない。マイナスもあればプラスもあると言うのが極自然の姿であろう。

一方、需要が絶対的に少ない地方空港は空港の存在そのものが自治体にとってマイナスの要素になりかねない。空港は道路等のインフラ施設が完備されていることから、空港は空港利用のためのみであってはならないと思う。近年各地で、道の駅が夫々魅力を持ってきたように思う。空港空間の活用ももっと多元的であるべきだろう。空港建設時の情熱を持って、多くの方々がいろいろ工夫を進めて欲しいものである。平成16年までの国有財産の他目的利用の禁止は一種、二種空港の利用の多様化を束縛してきたが、今からは智恵の出し放題であろう。空港ターミナルビルが便数が少ないからと言って閑散とした状態にあるのは許されないのではなかろうか。この意味でも空港管理者の責任は大きいように思う。

ページの先頭へ戻る

ページTOPへ